参議院特別委員会採決に抗議する
2023年6月1日
大阪府保険医協会 理事長 宇都宮健弘
健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一本化することを含んだ「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(マイナンバー法等一部「改正」法案)」が、5月31日、参議院の特別委員会において採決された。
同法案審議は4月18日に衆議院で始まったが、国民皆保険の基盤を揺るがし、国民の命と健康に関わる重要法案にも関わらず、18日、19日、20日と僅か3日間の委員会審議で、早々に25日の委員会で採決された。
参議院での審議は実質ゴールデンウイーク明けからとなり、当初は5月19日採決という日程だった。こうした国会情勢のなかで、4月以降にオンライン資格システムのトラブル事例が大阪府保険医協会に寄せられていることから、ゴールデンウイーク最中ではあったが、5月2日にマイナ保険証やオンライン資格システムのトラブルに関わる緊急アンケートを実施し、5月9日までに205件の回答を得た。結果はオンライン資格システムを導入している医療機関の半数以上でトラブルがあり、7割超える医療機関が「健康保険証廃止に反対」と回答し、5月13日に大阪弁護士会館で発表。マイナ保険証に強引に移行することで大きな問題を抱えている実態を告発した。この調査結果は大きな反響を呼び、全国の保険医協会でも同様の調査が緊急に行われ、マイナ保険証のトラブルが国民の大きな関心事になり、参議院での審議に大きな影響を与え、19日の採決を断念させた。
参議院の審議では私たちの調査結果も出され、健康保険証廃止によって無保険者が発生してしまうこと、医療や介護の現場での混乱など、多くの問題点が指摘されたが、こうした懸念の声に正面から答えず、なぜ健康保険証を無くさなければならないのかという疑問に対してまともな回答はなかった。このようにマイナンバーカードやマイナ保険証をめぐる問題が次々と出て、政府も現状を調査せざるを得ない状況にも関わらず、問題の根本解決も実態把握もされないなかで5月31日、特別委員会で採決された。
国民の疑問や不安、そして多くの問題が何ら解決されないまま採決に至ったことは、議会制民主主義を蔑ろにするものであり、こうした委員会運営に強く抗議する。
今回の法案は、保険者がすべての被保険者に被保険者証(健康保険証)を発行・交付する「義務」から「申請」主義に転換するもので、国民に大きな不利益をもたらし、世界に誇れる国民皆保険制度を崩壊に導くものと言っても過言でない。
われわれは、国民のいのちや健康にかかわる重要法案の委員会での拙速な採決に抗議するとともに、健康保険証廃止を実施させない取り組みを今後取り組んでいく決意である。
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