私が見ている、セカイのこと。

日常に素敵な物語を。

鈍感な人

2020-06-18 23:00:00 | 日記
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世界が映像になって、数年が経った。

目まぐるしい日常から解放された私は
よく、地球が丸い理由について
考えるようになった。

不規則な揺れ方をする、この乗り物が嫌い。
だって、移り変わりゆくこの景色さえも
私から逃げているような気がしたから。

私と初めて会った人は
みんな慌てたように鞄をあさる。
その度に、胸が少しキュッとなる。

でも、彼だけは違った。

初めて会った時からずっと、
彼は私に音をくれた。

笑いながら、彼の口が動く。

やっぱり分かんないや。

でも、私もつられて笑顔になる。

彼の瞳は、いつも澄んだ空のように
きれいだった。
それでも時々、驟雨が彼を襲うこともあった。

でも彼は鈍感だから
もちろん理由なんて分かっていない。

彼は、私の許可無く、いつも勝手に手を握る。
そして決まって私を屋上に連れて来る。

あいにく今日は朝から曇りっぱなし…
目が合うと同時に、大粒の雨が降り出した。
きれいな雨を私は拭う。
彼は私が濡れないように、
大きな傘で包み込む。

心臓の音(が)感じる。

彼の胸ポケットの膨らみが
私の目に熱いものを送る。

最初から、こうするつもりだったのなら
せめて隠しといて欲しかった。

でも本当は、ずっと前から気づいていた。

仕方ないでしょ?

だって私は、彼と違って敏感だから。


あなたは、やっぱり鈍感な人。

でも…とっても優しい人。

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自分にないものを持っている人に
出会ったとき、つい丁寧に接してしまいます。
しかしそれは時に
相手を傷つけてしまうこともあります。

この世に特別な人なんて存在しない。

みんな同じ人間であり、
唯一無二の個性を持っています。



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