スポイチ編集長日誌

最近はGTAオンラインの攻略ばっかりです。
日付そのままで修正・追記したりします。

人事も鳴かずば撃たれまい

2014年05月13日 | 社会
毎年就活のシーズンになったり、あるいは「圧迫面接」などが話題になると、企業の立場から若者や転職志望者に向かって説教をする経営者や人材コンサルタントだけでなく、何かを勘違いした企業内「人事担当者」が、その勘違い全開の全能感に基づいて、「今どきの若者」や「世の中」について偉そうに語りだして失笑を買ったり派手に炎上する……というのはもはや風物詩になった観があります。


上から目線で炎上続く「全能感全開系」人事担当者
人事担当者は、その企業の内でのことだけとはいえ、応募者や社員に対する生殺与奪の権を握っていると言えますし、長く続いた不況のおかげで多くの応募者から好きに採用相手を選べるため、根拠の無い全能感・万能感を持ってしまうのは仕方がないとも言えます。

大抵の「よく燃えた」人事の人間によるエントリーは、「22で大学を出て新卒で就職して、30前半までに結婚して子供造って家買って、40までには何らかのマネジメント職を経験して……」という、「旧来の日本社会の多数派の間で当たり前とされる人生ルートを通って来なかった人間には、変なヤツが多いから採用時に回避するのは当然だ」みたいな、いかにも日本企業の人事が本音として考えていそうなことを、あけすけにテキスト化して語ってしまったような内容のものが多いものだから、そりゃあまあよく燃えるだろうなってことです。


人事は楽。実際。
何度でも言いますが、人事は楽です。
と言われたら、「人事だって大変なんだ!」って人事の人間は発狂しながら反論するでしょうが、人事は楽です。
人事の仕事ていどで「大変だ大変だぁあああ忙しいあううう~」、とか言ってる人事もいますが、あの人達の言う「忙しい」のレベルってのは、せいぜい「応募者にお祈り返信するのに忙しい」とか「お祈り返信を1枚発送するためにわざわざ外出して疲れた」とか「面接にお相伴するのに忙しい」とか「社員に書かせた自己申告書の採点に忙しい」とか、せいぜいそんなレベルです。
実際に「今までの人事の仕事で一番大変だったこと」をインタビュー(拷問ではない)してみたところ、
「台風の時に全従業員を帰宅させるか決めるのが大変だった」
とか、
「労組対策で公安関係者(!)を接待するのに大変だった」
とかせいぜいそんなんだったりします。

今の時代、激務過労で肉体メンタルぶっ壊して入院・休職なんて珍しいことではありませんが、人事担当者が仕事上のストレスで体を壊して入院した例は、私は一人しか知りません。それも会社の命で辞めさせようとした相手から軽く逆襲されてしまい、形勢不利と見た会社からもトカゲのしっぽ切りで手のひらを返されたというパターンです。
もしもその辺の「人事しかやったことない」人を、生産部門に放り込んだら、3ヶ月くらいで入院するか、あまりに仕事できなさすぎてまた人事に逆戻りじゃないですかね。


くだらない仕事を増やして生産部門に負担を強いるのも人事のお仕事
社員に書かせるくだらないチェックシートやら書類やらを増やして自分たちの存在意義を示すためだけの無駄な仕事を作り出し、生産部門の時間を奪って邪魔をするのも、人事が自分たちの存在を誇示し、自分たちの雇用を維持するための重要な仕事です。
これは、官僚機構が肥大化して増税を余儀なくされたり、OSが激重化してメモリ容量を圧迫するのと似ています。
かつての旧ソ連や東独等の末路と同じです。

あと、知恵袋とかによくある、「会社で人事をやっている者です。会社の命で社員のトイレ回数をチェックしていますが…」って、あれ、ネタじゃないからな。

有給回数や遅刻回数は言わずもがな、社員のトイレ回数をチェックするのも人事の大切なお仕事です。憐れだな。
ちなみにD(略)N企業だとタバコ回数はスルーされたりします(人事も含めて経営陣も全員喫煙者だったりするため)。


「無能だから人事やってるんだろ」とは口に出して言わないだけ
「人事の人間は、生産部門としては使えない人間だから人事をやっている」というのも日本企業の一面の現実なわけです。
特にネット等で自分の身元を明らかにして活動している人にとっては、現在の勤め先の人事部や、または転職時に関わることになる応募先の人事の人に対して失礼ですので、普通はそういうことをおおっぴらに主張したりはしません。
生徒が教師のことを内心ではこいつアホだなあと思っていても、「内申点に響く」とか「就職に響く」ことをはばかって面と向かっては言わずに本音を隠すのと似たようなものです。
それ以前に日本企業では公然の秘密だからわざわざ言うまでもないってのもありますが。

それに、普通の人なら、会社や組織の中で人事の仕事をやっているという友人知人が何人か周囲にいるでしょうから、「人事は使えない奴が行くところだ」なんて、頭で思ってはいても表立っては口にしないのが社会的な礼儀ってもんです。そりゃそうだ。

社会そのものが器質的な問題を抱えているこの時代、「はっきりと言葉に出されなければ察することすらできない」というヒトが激増していますから、そうした自覚もなしに人事担当者が調子に乗って、アホな説教をたれていれば、よく燃えるに決まっているでしょう。

なんのことはない、彼らが応募者に求める「人間力」とか「コミュ力」が最も不足しているのは、上から目線で的はずれなことを言ったり書いたりして炎上する人事担当者でした、というオチだったわけだ。


人事担当者の処遇からブラックを見抜く
使い道のなさそうな人事担当者でも、「ブラック企業を見抜くための指標」としては使える場合があります。

普通の会社では、人事ってなかなか辞めないんですよ。だって、楽だから。

まともな会社の人事はそう簡単に辞めたりはしません。辞めないから人が入れ替わらないし、結果として人事の募集も少ない。
また、人事はその会社の採用基準やノウハウ、また会社の機密にも触れている。こういう性格上、人事部とか総務部には必然的にコネ(血縁コネ)採用も多くなります。他の部署ではどうしようもない(使いようがない)ので、仕方がないから人事か総務にでも置いてあげるか、ってパターンです。
よって、ますます辞める人間は少なくなります。
実際に転職市場では、「営業」「事務」の募集はあっても、「人事」の募集が行われることはほとんどない。そういうことです。

ブラック企業と言うと「大量採用・大量離職」のイメージですけど、実際に営業などの生産部門の人員は入れ替わりが激しくても、一方で経営陣と人事の人員は、事実上のアンタッチャブルと化していて、抜群の定着率……という企業は決して珍しくありません。
にもかかわらず、「人事担当者、それも人事部の役職者クラスが頻繁に入れ替わる」という会社は、何か問題を抱えている可能性が高いと言えます。
例えば、あなたを面接して採用した人事担当者が、入社の時には既に辞めてしまっていた……なんて事態になっていた場合、その会社は相当にヤバイ状態であると言えます。
ひどい会社だと、ワンマン経営者が採用時のトラブル――たいていは、社員が入社後に問題を起こしたとか、どうしようもない新人(と言っても客観的に見ればその会社のレベルにふさわしい社員)ばかり採ってくる――の責任を、採用担当者だけに負わせて、経営者が採用担当者の首を次々とすげ替えているから人事が定着しない、というパターンもあります。
いずれにせよ、楽なはずの「人事が頻繁に入れ替わる」「人事すら定着しない」というのは、問題のある会社の指標として使えます。


頭を上げたら、撃たれる
自分がアホなのを棚に上げてすべてを会社のせいにして吹き上がっている学生や転職志望者を見て、全能感に囚われた人事担当者がついつい一言言いたくなるのもわかりますが、立場の弱い一学生や一会社員と比べて、人事は圧倒的な権力を持っている分、圧倒的に嫌われています。

そんな人事の人間が「上から目線」で首を突っ込むのは、ガソリン抱えて火事場見物に行くようなものです。

いくら採用側の本音が、「採用の基準は一緒に働きたい人か、そうでないか」であったとして、それが真理だったとしても、人事をやっている人間がそれを口にしたところで反感しか買いません。

それまでは「問題のある転職志望者」「世間知らずの学生」叩きに夢中になっていた人々も、ウエメセ人事様のご登場と見るや、今度は一斉に人事様に襲いかかることでしょう。

にもかかわらず、他者の「言葉には出さない本音」に気づけない人事担当者は、今日もネットでご高説を垂れ流して盛大に炎上するか、失笑を買っているというわけです。


匿名というギリースーツに身を包み、サーチエンジンというスコープ、SNSというライフルを装備したネットスナイパー達が跋扈するこの時代、迂闊に神輿の上に登ったお調子者達は、片っ端から彼らに狙撃され撃ち倒されていく……。これは、どの分野においても言えることです。

地べたに這いつくばって、自分の仕事についてもおおっぴらには言わない方がいい。

調子に乗って頭を上げると、その瞬間に額に穴が空くことになる。



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