俺がこないだ安チェーンの中華屋で昼メシを食っていたら、店の奥のテーブルで4人の男達がタバコを吸い、ビールを飲みながら大声で話をしているのが聞こえてきました。
4人ともかなりくたびれた格好で足下に大きなバッグを置いていて、酒盛りというよりは何かけだるそうな雰囲気でした。
かなりの大声で話していたので聞くとはなしに話の内容が筒抜けだったので分かったんですが、彼らのしゃべっている内容から、契約を打ち切られた、いわゆる派遣切りに遭った元派遣社員の人たちのようでした。
私は普段はよそのテーブルの会話なんぞに聞き耳を立てたりはしませんが、あまりにも彼らの話し声がでかかったので、もしかしたら彼らは「他人に聞かせたくて」大声で話していたのかも知れません。
なにもここで、仕事を「クビになった」にもかかわらず昼間からビールを飲んでいたのがけしからんとか、ビール飲んでるヒマがあるならハロワ行け、なんて下品なことを言いたいんじゃありません。
気になったのは彼らの愚痴と怒りの向かっていた先です。
彼らが怒りをぶつけていたのは、不況でもアメリカでもサブプライムでもハゲタカファンドでも経営者でも政治家でも役人でも自分自身でもなく、「正社員」に対してだったのです。
元派遣先企業の正社員と派遣会社の正社員(コーディネーター)の悪口を延々と言っておりました。
契約解除を決定した企業や経営者、あるいは規制緩和で派遣隆盛の流れを作った今の与党などではなく、もっぱらその怒りが「正社員」(派遣先の正社員と派遣会社の正社員)にのみ向けられていたことがとても印象的でした。
どうも彼らの話の内容によると、派遣先企業や派遣会社には、彼らに仕事を紹介し、また仕事内容を伝達するだけで自分は何もしない(と彼らは見ている)、いわゆる”メッセンジャー”的な正社員というのが居るようです。
そもそも派遣会社で登録者に仕事を紹介するのは「コーディネーター」といって各業界の職業内容や登録者の所持している資格などについて知識を持っているヒトの役目のはずですが、やっぱり今や規制緩和と過当競争で派遣会社の営業ノルマ(どれだけ労働者を派遣先に押し込んだか)を達成するために、派遣労働者を右から左へというように適当なことをやる人間が居るということのようです。
また、その4人は人件費コストという概念を知っているらしく、「あんな何もしない奴(正社員)を一人雇う人件費で俺たち二人は雇えるのに」ということを幾度か口にしていました。
じゃあ、なんで「がんばって努力していて技術もある」はずの彼らが契約打ち切りになって、一方彼ら二人分以上の人件費がかかっている「なにもしないメッセンジャー正社員」が(いまのところ)クビ切りにならないのかといえば、もう既にあちこちで言われているように、
「非正規雇用者のほうが辞めさせやすい(切りやすい)から。」
です。
他にはなんにもない。
能力とか努力とかあんまり関係ない。いや、一切関係ないと言ってもそんなに間違ってはいない。
たとえ「無遅刻無欠勤」だろうが「勤務態度は真面目」だろうが、不況という大波の前では切られるときはみんな一斉だったじゃないか。
で、近ごろ先回りして彼らの怒りを吸収して利用しようとするかのように、
「ロクに仕事もしないで高給をせしめている正社員(中高年のいわゆるノンワーキング・リッチ)が諸悪の根源だ。だから正社員を解雇しやすくするのが唯一の改革の道!反対するヤツはダメ正社員や!」
みたいな言論とレッテル貼りが流行りつつありますよね。
あと、「労働市場の流動化を!」なんてのも。
週3日出勤とかで、会社に来ても仕事しないでPCでソリティアかエロサイトか新聞読んでるような天下り団塊ジジイが本当にクビになるか分相応の給料にまで下がるというのなら、それはそれで結構な話かも知れませんが、彼らの振る旗に従って「解雇規制の解除」によって「流動化」を目指したところで、彼らが自分自身をクビにするわけないだろうがやき。
単に「解雇規制を撤廃する」という方法では、そんなことしたって、そもそもその「解雇規制を撤廃する」理由のハズだった中高年ノンワーキング・リッチは全く手つかずのまま、結局は若手の下流正社員がつまはじきにされ、下流非正規社員とが同士討ちになるだけでしょう。
それに、”上のほう”は人材流動化なんかしないでしょう。
どんなことが起こるかは、FA制導入後のプロ野球界がヒントになる。
一部の選手の年俸は吊り上がり、一方入ったばかりの若手でも結果が出なければ簡単にクビになるようになった。
また、「他社で活躍されると困るから」という理由で”優秀な人材”を集めまくって飼い殺しにする企業も現われるかも知れませんし、また”優秀な人材”自身もステップアップより安定を求めて飼い殺しに甘んじてしまうかも知れません。だってそういう球団が既に実在してるでしょ。
あるいは有力者の子弟を”実力”に関係なく法外な条件で迎え入れるなんてことも起こるでしょう。中堅のレギュラー選手でもケガがちになったりピークを過ぎて成績が落ちるとすぐにクビになったり引退を迫られ、場合によっては自費で中南米や台湾に渡ってプレー続行の道を模索しなければならなくなる一方で、カ○シゲやカ○ノリ(つまり有力者の子弟)に年俸ウン億+終身契約なんてなことが普通に起こるだろうということです。
こういうことは成績が可視化できる実力の世界ではある程度やむを得ないかも知れませんし、この私とて、これからの未来は雇用にしろ、社会にしろ、コミュニティにしろ、「流動化」ってのはもはや”歴史の流れ”であって止められないとは思いますし悪いことばっかりじゃない。が、普通の労働者に一括導入できるような性質のものではありませんし、老人主導によるものではロクなものにならないし悲劇的な事態を迎えるだろう。
だいたい、「解雇規制撤廃」を主張しているヒトでさえ、(最大のガンである中高年の)「ノンワーキングリッチをクビにするなんて不可能」と言っちゃってますしね。ズコー。
今後はいちおう「セーフティネットとセットで導入」だのいう議論も形だけ出て来るでしょうが、歴史的経緯からの推論として、そっちのほうはウヤムヤにされるでしょう。
つまり、またまたまたまた毎度お馴染みの
ロスジェネにツケ回し
で、しかも今度は正規v.s.非正規で同士討ち開始~\(^o^)/ってわけですね。分かりやすい。
それに、「雇用を維持するために正社員のクビを切りやすくすることが必要」と言ったって、既に派遣切りという形で雇用が失われてしまっているのですから、全然説得力ありません。
これで今後、経営者や一部の「経済学者」の狙い通りに、ただでさえ少ない正社員の保護規定が無くなったら、より多くの人が路頭に迷うだけでしょうし、そのうち”元正社員村”なんてのも出て来るかも知れません。
そうなったらやっぱ一部の人々は自分はコタツでぬくぬくしながら、「選り好みするな」「介護やモン○ローザは募集してるぞ!」とか罵声を浴びせるんですかね。
どうも年末年始に罵声を浴びせていた人の少なからぬ部分が、今度は自分が罵声を浴びる側に回りそうな気もしますが。
あ、経営者は気づいてるのか知りませんが、近い将来の保障すら無い社会になれば、誰もモノを買わなくなるので消費はますます落ち込み、ましてや大きな買い物なんか出来なくなります。
とくにクルマなんか絶対買わねえな。
まあ、いきなり「正社員クビ切りを」では反発が大きすぎるでしょうから、”おとしどころ”として「ワークシェアリング」導入から狙ってくるでしょう。
ワークシェアってのは賃下げ+雇用増(維持)+労働時間短縮+社会保障拡充で成り立つんですが、日本でやる場合は残業代カットとか各種手当てカットとか普通に賃下げだけで終了します。つまりはこないだ話題になったホワイトカラーエグゼンプション(WE)と同じ事ですね。
派遣叩いて、正社員叩いて、お次は何ですかね。
結局ものごとを自分で考えないで、誰かの言ったことをコピペして影響されちゃう人たちって、自分でも気が付かないうちに力のある他の誰かに利用されて終わるんだな。自戒も込めて。
4人ともかなりくたびれた格好で足下に大きなバッグを置いていて、酒盛りというよりは何かけだるそうな雰囲気でした。
かなりの大声で話していたので聞くとはなしに話の内容が筒抜けだったので分かったんですが、彼らのしゃべっている内容から、契約を打ち切られた、いわゆる派遣切りに遭った元派遣社員の人たちのようでした。
私は普段はよそのテーブルの会話なんぞに聞き耳を立てたりはしませんが、あまりにも彼らの話し声がでかかったので、もしかしたら彼らは「他人に聞かせたくて」大声で話していたのかも知れません。
なにもここで、仕事を「クビになった」にもかかわらず昼間からビールを飲んでいたのがけしからんとか、ビール飲んでるヒマがあるならハロワ行け、なんて下品なことを言いたいんじゃありません。
気になったのは彼らの愚痴と怒りの向かっていた先です。
彼らが怒りをぶつけていたのは、不況でもアメリカでもサブプライムでもハゲタカファンドでも経営者でも政治家でも役人でも自分自身でもなく、「正社員」に対してだったのです。
元派遣先企業の正社員と派遣会社の正社員(コーディネーター)の悪口を延々と言っておりました。
契約解除を決定した企業や経営者、あるいは規制緩和で派遣隆盛の流れを作った今の与党などではなく、もっぱらその怒りが「正社員」(派遣先の正社員と派遣会社の正社員)にのみ向けられていたことがとても印象的でした。
どうも彼らの話の内容によると、派遣先企業や派遣会社には、彼らに仕事を紹介し、また仕事内容を伝達するだけで自分は何もしない(と彼らは見ている)、いわゆる”メッセンジャー”的な正社員というのが居るようです。
そもそも派遣会社で登録者に仕事を紹介するのは「コーディネーター」といって各業界の職業内容や登録者の所持している資格などについて知識を持っているヒトの役目のはずですが、やっぱり今や規制緩和と過当競争で派遣会社の営業ノルマ(どれだけ労働者を派遣先に押し込んだか)を達成するために、派遣労働者を右から左へというように適当なことをやる人間が居るということのようです。
また、その4人は人件費コストという概念を知っているらしく、「あんな何もしない奴(正社員)を一人雇う人件費で俺たち二人は雇えるのに」ということを幾度か口にしていました。
じゃあ、なんで「がんばって努力していて技術もある」はずの彼らが契約打ち切りになって、一方彼ら二人分以上の人件費がかかっている「なにもしないメッセンジャー正社員」が(いまのところ)クビ切りにならないのかといえば、もう既にあちこちで言われているように、
「非正規雇用者のほうが辞めさせやすい(切りやすい)から。」
です。
他にはなんにもない。
能力とか努力とかあんまり関係ない。いや、一切関係ないと言ってもそんなに間違ってはいない。
たとえ「無遅刻無欠勤」だろうが「勤務態度は真面目」だろうが、不況という大波の前では切られるときはみんな一斉だったじゃないか。
で、近ごろ先回りして彼らの怒りを吸収して利用しようとするかのように、
「ロクに仕事もしないで高給をせしめている正社員(中高年のいわゆるノンワーキング・リッチ)が諸悪の根源だ。だから正社員を解雇しやすくするのが唯一の改革の道!反対するヤツはダメ正社員や!」
みたいな言論とレッテル貼りが流行りつつありますよね。
あと、「労働市場の流動化を!」なんてのも。
週3日出勤とかで、会社に来ても仕事しないでPCでソリティアかエロサイトか新聞読んでるような天下り団塊ジジイが本当にクビになるか分相応の給料にまで下がるというのなら、それはそれで結構な話かも知れませんが、彼らの振る旗に従って「解雇規制の解除」によって「流動化」を目指したところで、彼らが自分自身をクビにするわけないだろうがやき。
単に「解雇規制を撤廃する」という方法では、そんなことしたって、そもそもその「解雇規制を撤廃する」理由のハズだった中高年ノンワーキング・リッチは全く手つかずのまま、結局は若手の下流正社員がつまはじきにされ、下流非正規社員とが同士討ちになるだけでしょう。
それに、”上のほう”は人材流動化なんかしないでしょう。
どんなことが起こるかは、FA制導入後のプロ野球界がヒントになる。
一部の選手の年俸は吊り上がり、一方入ったばかりの若手でも結果が出なければ簡単にクビになるようになった。
また、「他社で活躍されると困るから」という理由で”優秀な人材”を集めまくって飼い殺しにする企業も現われるかも知れませんし、また”優秀な人材”自身もステップアップより安定を求めて飼い殺しに甘んじてしまうかも知れません。だってそういう球団が既に実在してるでしょ。
あるいは有力者の子弟を”実力”に関係なく法外な条件で迎え入れるなんてことも起こるでしょう。中堅のレギュラー選手でもケガがちになったりピークを過ぎて成績が落ちるとすぐにクビになったり引退を迫られ、場合によっては自費で中南米や台湾に渡ってプレー続行の道を模索しなければならなくなる一方で、カ○シゲやカ○ノリ(つまり有力者の子弟)に年俸ウン億+終身契約なんてなことが普通に起こるだろうということです。
こういうことは成績が可視化できる実力の世界ではある程度やむを得ないかも知れませんし、この私とて、これからの未来は雇用にしろ、社会にしろ、コミュニティにしろ、「流動化」ってのはもはや”歴史の流れ”であって止められないとは思いますし悪いことばっかりじゃない。が、普通の労働者に一括導入できるような性質のものではありませんし、老人主導によるものではロクなものにならないし悲劇的な事態を迎えるだろう。
だいたい、「解雇規制撤廃」を主張しているヒトでさえ、(最大のガンである中高年の)「ノンワーキングリッチをクビにするなんて不可能」と言っちゃってますしね。ズコー。
今後はいちおう「セーフティネットとセットで導入」だのいう議論も形だけ出て来るでしょうが、歴史的経緯からの推論として、そっちのほうはウヤムヤにされるでしょう。
つまり、またまたまたまた毎度お馴染みの
ロスジェネにツケ回し
で、しかも今度は正規v.s.非正規で同士討ち開始~\(^o^)/ってわけですね。分かりやすい。
それに、「雇用を維持するために正社員のクビを切りやすくすることが必要」と言ったって、既に派遣切りという形で雇用が失われてしまっているのですから、全然説得力ありません。
これで今後、経営者や一部の「経済学者」の狙い通りに、ただでさえ少ない正社員の保護規定が無くなったら、より多くの人が路頭に迷うだけでしょうし、そのうち”元正社員村”なんてのも出て来るかも知れません。
そうなったらやっぱ一部の人々は自分はコタツでぬくぬくしながら、「選り好みするな」「介護やモン○ローザは募集してるぞ!」とか罵声を浴びせるんですかね。
どうも年末年始に罵声を浴びせていた人の少なからぬ部分が、今度は自分が罵声を浴びる側に回りそうな気もしますが。
あ、経営者は気づいてるのか知りませんが、近い将来の保障すら無い社会になれば、誰もモノを買わなくなるので消費はますます落ち込み、ましてや大きな買い物なんか出来なくなります。
とくにクルマなんか絶対買わねえな。
まあ、いきなり「正社員クビ切りを」では反発が大きすぎるでしょうから、”おとしどころ”として「ワークシェアリング」導入から狙ってくるでしょう。
ワークシェアってのは賃下げ+雇用増(維持)+労働時間短縮+社会保障拡充で成り立つんですが、日本でやる場合は残業代カットとか各種手当てカットとか普通に賃下げだけで終了します。つまりはこないだ話題になったホワイトカラーエグゼンプション(WE)と同じ事ですね。
派遣叩いて、正社員叩いて、お次は何ですかね。
結局ものごとを自分で考えないで、誰かの言ったことをコピペして影響されちゃう人たちって、自分でも気が付かないうちに力のある他の誰かに利用されて終わるんだな。自戒も込めて。