今回はリップクリームケースのご依頼がありましたので、ヌメ革で作っていきます。リップクリームって小さいのですぐ無くすんですよね。ポケットに入ったまま洗濯したり、ジャケットに入れたままクローゼットの中に収納して次のシーズンまで行方不明になったり…これはリップクリームケースを収納する場所が決まっていないからなんですよね。場所を決めてあげれば行方不明になることはないハズです。
今回使用する無染色のヌメ革です↓
サイズ的にはA5くらいのサイズがあれば、余裕でつくることができます。長いパーツがありますが、革の量は少なくても大丈夫です。染色する前に型紙を使って革にケガキ線を入れておきます。
お客さんの希望色が焦げ茶よりのキャメルだったので、金茶+焦げ茶の2種類の染料をブレンドして染めました。1日経って染料が乾いたら、革をニーフットオイルでオイルアップして油分を足してあげます。
油分を足して半日経つと油が全体に馴染んで落ち着いてくるので、色止め剤(ここではレザーフィックス)を塗って乾かします。色止め剤を塗らないと染料が色移りする可能性があるので、絶対塗ります。しかし、色止め剤を塗ったからといって絶対色移りしないかというと、そういうわけでもなくて水濡れしたまま放置したりすると色移りします。ただ、何もコーティングしないより100%マシです。
コーティングするとこんな感じでツヤツヤになります。ツヤが出にくいコーティング剤もありますが、多少なりともツヤ感が出て質感も変わります。このまま使ってもいいですが、このヌメ革は厚さ1㎜なので少しフニャフニャ感があって安っぽく感じるので裏に豚革を貼って全体にハリを出していきます。
裏面(トコ面)に接着剤でアメ豚を貼りました。普通の白ボンド(木工用)でも十分にくっつきます。裏張りをすることで革に適度なハリが出て、質感もアップします。別に貼らなくてもいいですが、やったほうが高級感が出ます。
パーツをケガキ線通りに裁断して、下準備は終わりです。ホックボタンを付ける位置をポンチで穴あけしてから、軽く完成形をイメージします。このとき両面テープやクリップをつかってマチ部分を組み立てて、ホックボタンのオスとメスの穴の位置を決定させます。
穴位置が決まったら、バネホックを取り付けます。ハンドプレスがあれば使ったほうが確実ですが、普通に打ち具とハンマーでもホックボタンは取り付けできます。
ボタンの取り付けが終わったら、余分な豚革をカットします。そのままでもいいですが、組み立てた際に層が厚くなるので、必要最小限で切り取りました。
次にD環を取り付けます。D環パーツを組み立ててボンドで仮止めして、クリップで1時間ほど押さえます。ボンドが乾いたら縫い線を引いていきます。
この段階でディバイダーなどで縫い線を引きます。今回は端から3㎜で縫い線を引いています。
最初にD環部分を縫っていきます。もちろん、菱目打ちで縫い穴の当たりをつけて菱ギリで穴を開けた状態で縫っています。
続いて本体を組み立てます。ボンドで1面づつ仮止めして乾くまでクリップで固定していきます。乾いたら次の面も同じように固定していきます。
全ての面が仮止めできたら、菱目打ちで穴の当たりをつけて、菱ギリで縫い穴を開けていきます。
縫い穴がすべて開いたら、糸を蠟引きして縫っていきます。
縫ったらこんな感じになりました。ほぼ完成ですが、革の端面(コバ)がボソボソしており見た目が悪いです。次はコバを整えていきます。
セリアで売っている研磨キューブが便利です。荒い面で大まかに段差を整えてから、仕上げ面で表面を綺麗にします。コバが整ったら、ヘリ落としで側面を整えて、コバ処理剤で磨きます。
こんな感じでコバが滑らかになりました。もっともっと時間を掛ければツヤツヤになりますが実用的にはこの程度で大丈夫です。
というわけで完成です↓
どうでしょうか、鞄などに付けたりすればリップクリームが行方不明にならずに済むでしょう。
ヌメ革で作っているので使い込むと艶やかな飴色にエイジングしていきます。今回の設計の難点は、側面のマチ部分にも豚革を使っているところです。実用を考えれば別に側面は要らなかったな…とも思いますが、別にあっても問題ないと思います。
制作した革製品はホームページで販売しています。気になった方は覗いてみてください。オーダーメイドもできます。
https://studiotomy.handcrafted.jp/
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