溶接ってどんな印象がありますか?
妻から「溶接したところって、なんかボコボコしてるじゃん。」という一言を聞いたとき、私はハッとしました。一般的な溶接のイメージってそうなのか!と。
一般的な溶接跡〈溶接ビード〉のイメージってこんな感じじゃないですか?
いや、これネットから拾ってきた画像で比較的上手いやつなんですが、まぁどこを溶接したのか分かるよねっていうことです。考えてみればそのへんの橋の溶接部とかビルの鉄骨部分だったりも同じで、溶接ビードはわかります。
でもそれは意味のあることで、溶接部分の強度を増してるんですよ。溶接は金属同士を完全に溶け込ませているので強度的には十分なのですが、往々にして溶接するような場所というのは伸ばしたり力のかかる部分なことが多いです。その上を更に溶接金属で覆って強度アップを図っています。まぁ、純粋に削るのがひと手間かかるのでやらないのですが…
ほんで今回はボコボコしない溶接の仕上げ方について解説します。溶接した場所を削り取ってあげれば溶接跡は気になりませんし、塗装やサンドブラスト加工をすればどこが溶接部なのかわからなくなります。
↑これはステンレスですが、45度の角度で削ったパーツです。この削った部分を開先(かいさき)といいますが、簡単に言うとこの開先の空間を溶接金属で満たして繋いであげるのです。
↑またネットから拾ってきた画像ですが…わかりやすいでしょ。
ズームして見るとこんな感じで、溝になっているのが分かると思います。この溝を溶接で埋めて、表面を削り取って綺麗に見せるわけです。
半自動溶接機で溶接をしました。表面の黒いカスはスラグと呼ばれるもので、不純物です。パリパリと取れますので気にしないでください。
ズームして見るとこんな感じ。
ほんでカスを取るとこんな感じで溶接金属が現れます。
よく見ると盛り上がっているのが分かると思いますが、この盛り上がりのことを余盛(よもり)といいます。今回は開先をとっているので、この余盛は必要ありません。むしろこのパーツは平面が出ていないと駄目なパーツなので余盛をサンダーで削り取っていきます。
サンダーとかグラインダーとかいろんな名称がありますが、まぁ高速回転する砥石で金属を削る道具です。溶接機が鉛筆ならばサンダーは消しゴムで、溶接工には必須アイテムなのです。
アップで見るとちゃんとフラットになっているのがわかると思います。隅っこが欠けているのはわざとなので気にしないでください。後の工程で完全に埋めるので大丈夫です。
こんな感じで全体をフラットに削ったら見た目も機能も問題ないのです。この後の工程として、削ったのが丸わかりなのでサンドブラスト加工で全体の表面粗さを均一にします。サンドブラストは高速で砂(ガラスビーズ)を吹き付ける加工で、この加工をやると見た目にはどこを溶接したのか分からなくなります。
・・・肝心のブラスト加工後の写真を撮り忘れたので無いんだけども、心の目で見てください
今回はステンレスですが、普通の鉄というか軟鋼の場合はグラインダーで削った上から塗装をして錆を防止します。こうなると何処が溶接部位なのか完全にわかりません。よく街で見かける構造材の溶接ビードが目立つ理由は、強度とコストの複合理由でビードを残しているからです。手間をかければどこが溶接されているのかわからないものは作れます。が、とても手間がかかるのでやらないだけです。
余談ですが、開先を設けずに溶接して余盛を削ると強度はほとんどないです。あと薄っすらと溶接の境目みたいなものが出てくるので強度的にも外観的にもNGです。溶接部の溶け込みって意外と薄くて、開先を作って表面積を増やしてあげないと強度がゴミなんですよ。
というわけで、今回は溶接外観の話でした!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます