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11月24日の記事で旧杉田劇場の隣にある「吐月館」というビルを取りあげましたが、この不思議な名称に関して少しだけ謎が解け始めてきたので、今日はそのことを書いておきたいと思います。
このビルのオーナーにぜひともお聞きしたいと思っているのですが、なかなか連絡が取れずとりあえず文献などで調べ始めました。いや、「調べ始めた」なんていうのは言い過ぎかな。偶然、命名の根拠となるのではないかと思う史料にぶつかったのです。
それは中原の熊野神社で保管されている『杉田十境眺望図』という浮世絵。
右下に作者の名前が書かれており、一恵齊芳幾と読めます。Wikipediaで調べると、姓は落合、名は幾次郎、画姓は歌川、画号は一恵斎とあり、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師だそうです。
ここには杉田を中心とする風景が、かなりデフォルメされて描かれています。これを眺めているとき、不思議な名称を見つけたのです。左端の下方に島のようなもの、もしかしたら陸続きの小山なのかもしれませんが、こんなものが書かれていることに気づきました。
その部分を拡大してみました。「吐月峯」と書いてありますね。
この絵には根岸湾周囲の有名なところが載っています。本牧岬、泉蔵院(熊野神社の境内にある)、 琵琶池と虎渓橋(東漸寺の境内にある)などですが、本当に実在したのかどうか不明なものも描かれており、その一つが吐月峯です。
吐月峯……って、何なんでしょうかね。
ネットで検索すると「タバコ盆に用いる竹製の灰吹き」、「静岡市にある山の名」なんていうのが出てきますが、いまいちピンときません。
ここでもう一度、全体図を眺めてみましょう。
どことなく中国っぽい雰囲気ではないでしょうか。そう考えると「吐月峯」の意味がなんとなく分かってきました。
月を吐く。見えないところから月が出てくる、そんな風景が想像できます。山の陰から月が出る、あるいは山の陰から出る月を愛でる、そんな漢詩のような世界を感じ取ることができそうです。
この位置から見える山とは……
現在の国道16号線を挟んで向こうに見えるのは、杉田八幡裏の妙観寺山と妙法寺裏の山です。妙法寺裏山、昔は今よりもっと高かったそうです。しかし、戦前に高射砲陣地をつくるため上部をカットして平坦にしたと言われています。
ということで、たぶん現在の「吐月館」の建っている場所から妙法寺・杉田八幡方面を眺めると、山の陰から月が昇ってくるのがみえたのではないでしょうか。いや、今もそういう風に見えるのかもしれません。
真相はまだ不明ですが、そのように想像してみたわけです。
by うめちゃん
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