基礎工事の時には、アパートでも建つんだろうと思っていた。
其れ程の広さだった。
工事の看板と云うか、標識をよく見ると、「〇〇様宅新築工事」と明記されてあった。
道路を挟んで、真正面に在る、アパート(8部屋)よりもデカいのである。
日が経つにつれ、窓が嵌められていき、部屋数も見えつつある。
周辺にも分譲住宅が乱立しているが、其れ等が安っぽい張りぼて住宅に見えて来た。
もう少し悪意を込めて云うならば、橋の下や空き地に棲息するルンペン(乞食)の段ボール小屋の様に見えてしまう程である。
庭に当たる敷地は、普通のアパートの駐車場より広い。
「此れが個人宅なのか?」
余りにもデカい、デカ過ぎる。
一体、何処の成金か金持ちなのだろうか?
カネは在る処には在り、無い処には一銭も無い。
カネは天下を回らない。
カネと云うものは、一定の限られた場所にしか寄って来ないし、留まらない。
人がカネを遣っている様に錯覚しているが、
カネが人を使うのであり、カネが人を選ぶのである。
吾はカネに選ばれなかった。
カネに好かれる人間になれなかった。
貯金等、夢のまた夢である。