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SS、読み切り2話目。
日をまたいで15日になってしまったので、UP日時を14日にしました。…スミマセン(汗)
if…もしも、のお話。
オスカル Ver.です。
アンドレとオスカルは既に両想いの設定で、原作とアニメの設定等々いろいろ混ざってマス。
if…もしも。1789年のお話。
〜こんなお話でスミマセン;^_^A
アンドレ Ver.のほうがシックに纏まっているような気もしますが…
お楽しみいただけると嬉しいです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
1789年6月。
ここ最近、咳き込むことが多く、咳をすると血が混じることもあるとオスカルはラソンヌ医師に伝えた。
ずっと続いている微熱と止まらぬ咳。
ただの風邪ではないだろうと…胸を病んでいるかも、という自覚はあった。
胸を病んでいるのならば…余命を聞きたかった。
アンドレには知られたくなくて、彼が夜勤日の勤務帰りに立ち寄ったパリのラソンヌ宅。
ラソンヌ医師はオスカルを診て言った。
「オスカルさま…もしも胸を病んでいるのならば半年…」
「…半年…?」
「…と、いうところでしょうが…」
「………?」
「オスカルさま…最近強いお酒を飲んでいませんか?先日ジャルジェ家にお伺いした時にマロンさんが心配しておりました。強いお酒を控えてください。体調不良の時はあらゆる病を引きつけます」
「…ラソンヌ先生…?」
長年ジャルジェ家の主治医を務めているラソンヌは特異な生い立ちであるオスカルの主治医でもあった。
近衛時代も衛兵隊でもオスカルが軍医に診てもらうことは殆ど無く、急な体調不良…足の捻挫や発熱等があってもアンドレが軍医に病状を伝えて薬をもらい応急手当てをして早退し、状況判断でパリのラソンヌ宅に寄るか、屋敷でラソンヌに往診してもらうという形が多かった。
ラソンヌ医師は言う。
「オスカルさま。風邪気味の時は免疫力も落ちると昔から申し上げておりますが…軍務がお忙しいのは分かります。あまり無理をなさいませんよう」
「…はい…」
小さく返事をするオスカルにラソンヌは頷いてみるも、ジャルジェ家の次期当主であるこの方が幼い頃から努力をおしまず、責任感があるのも判っている。
女性でありながら男社会に身を置いているのだ。
普段は丈夫とはいえ男女の体力の差はある。
近衛隊から衛兵隊に移ったと聞き、環境が悪くなるであろうことに心配はしていた。
「数ヶ月前、幼くしてルイ・ジョセフ殿下がお亡くなりになりました。病名は脊椎カリエスと伺っておりますが…これは結核の一種ではないかと言われているのです」
「ルイ・ジョセフ殿下の脊椎カリエスが…ですか?」
「はい。結核菌は主に肺を蝕みますが…結核菌が胸や腰辺りの骨を蝕むと脊椎カリエスではないかと一部医学では言われ始めております。背骨が痛んだらカリエスと診断されることが多いのです。
オスカルさまはルイ・ジョセフ殿下のお見舞いに数回伺っておりますね。以前の近衛隊と違い、衛兵隊の環境が良いとは言えないでしょう。健康体であれば問題ない接触であっても体調不良で免疫力が弱まっている時はリスクを伴います」
「………」
この数ヶ月、いろいろな事があり過ぎて、オスカルも強い酒に逃げていた自覚はある。
フランスの現状と婚約騒動、アンドレの告白、襲われた馬車…アンドレとも見えな壁ができていた。
〜でも。
ジェローデルとの婚約話も彼が身を引き、馬車が襲われた時もフェルゼンに助けられ、自分の発した言葉と彼らの言葉で漸く気づく事が出来たアンドレへの愛。
ジェローデルとフェルゼンはわたしの心の奥を見抜いていたという訳だ。
馬車が暴徒に襲われ、わたしを庇ったアンドレは怪我が酷く、数日ベッドの上だった。
もしもアンドレを失ったら…という恐怖。
アンドレと共に軍務復帰する前日、わたしの想いを告げた。
アンドレと想いが通じ、最近は一晩にボトルを空にすることは無くなった。
顔色が悪いとアンドレに心配され、彼がアルコールの量を制御するようになったのだ。
ショコラやカフェオレ、ワイン一杯でも眠れるようになった。
アンドレがいると心身も落ち着き、睡眠も取れるようになったからだ。
ラソンヌ医師は言った。
「オスカルさまが現時点で肺結核であるとは言い切れません。今は風邪の延長で身体が弱っている可能性が多いです。
もしも肺を病んでいれば、今の環境のままでは半年から数年かもしれません。
それでも初期の段階ならば地方の空気がきれいな場所で療養すれば治る見込みも多いでしょう。
今のオスカルさまは無理をなさって体力も落ちています。病を取り込み易いのです。
幼い頃から何度も申し上げておりますが…」
ラソンヌ医師の言葉にオスカルは苦笑いをしながら答えた。
「…風邪を拗らせると喉をやられる。酷く扁桃腺が腫れるので注意するように…とは幼い頃から先生に言われ続けてきました」
「はい。幼児期ですと風邪気味で喉が痛んでも大人に訴えるのは難しい。ですが成長するにつれ、喉の痛みの前兆に気付くようになる。扁桃腺が腫れる前兆に気付けるようになれば自ら予防線をはります」
「うがい、喉を負担を和らげる飴、喉を潤す果実のシロップ、痛み止めや熱さましの薬…ですね」
「はい。当の本人が痛みの辛さを判っているわけですから。放っておけば扁桃腺は酷く腫れしまい、熱も上がり、風邪で咳き込み続けるうちに喉は枯れて喉から出血した血が唾液に混じることもあるでしょう」
「そうなのです。大丈夫だろうと放っておくと腫れが酷くなり、鼻もつまりだすと口呼吸になるので大変です。息を飲む度に血の味がするのですから」
風邪をひいて扁桃腺が腫れた時の事を思い出し、オスカルも顔を顰めながら笑った。
「オスカルさま。確か20代前半の頃だったか…近衛の勤務が休めないからと風邪気味なのを無理されていた時に扁桃腺が腫れて高熱を出して倒れるように寝込んだ事もございましたね」
幼い頃から言われ続け、自覚もあるオスカルは苦笑いで頷くしかない。
…胸の病では無いかもしれない。
…この数ヶ月の激務で無理が過ぎて風邪を拗らせたものが長引いている可能性が高いとのラソンヌ医師の判断だ。
後者を信じて日々を過ごそうと思う。
ラソンヌ医師に礼を言い、帰ろうとするオスカルに思い出したように彼は言った。
「あぁ…オスカルさま。アンドレの目の具合はいかがでしょう?最近、点眼薬を受け取りに来ていません」
……え?
オスカル自身も気になっていたアンドレの視力…。
「…アンドレに伝えておきます」
オスカルは咄嗟にそう答える事しか出来なった。
七月…フランス衛兵隊に出動命令が下った。
わたしを庇いアンドレが撃たれ…翌日にわたしも撃たれた。
アンドレの死を覚悟しきれぬ中で、アンドレが右胸心であることを思い出した。
幼い頃にアンドレから一度だけ聞いた秘密…右胸心。ひせそれで銃弾は心臓を貫いていないことが判り、瀕死の状態であったがアンドレは助かった。
わたしも左肩を撃たれ、出血は酷かったが弾は肩を貫通していた。
アランが庇ってくれなければ受けた銃弾も一発では済まされなかっただろう。
しばらくは教会に身を寄せていたオスカルとアンドレはシャトレ家の空部屋に移って療養していた。
「アンドレ。ロザリーにラソンヌ先生のところに行ってもらおうと思う」
「…オスカル…」
視力が低下していることはオスカルも知ってしまっている。
撃たれた後、二人で身を寄せていた教会でオスカルはラソンヌ医師に目の診察もしてもらおうと言っていた。
だが、アンドレは体調不良と微熱が続いているらしいオスカルも診察を受けてもらいたいと思っていた。
どう伝えようかと考えているアンドレにオスカルは言葉を続けた。
「お前の目を診てもらう。残った片目に負担がかかって弱視になっているのだろう…?」
「…全く見えない訳じゃあ無い」
たまに視界が真っ暗になることはあるが、日中であれば、弱視ながら周囲の確認はできる。
「前に…ラソンヌ先生がアンドレの目を心配をしていた。点眼薬を受け取りに来ていないと…」
「…オスカル。ラソンヌ先生のところに行ったのか?」
オスカルは小さく頷いた。
「…何故…?」
「………」
いつ行ったのかとアンドレは首を傾げている。
目の診察と点眼薬のことを告げれば、何故ラソンヌ医師の元へ行ったのか問い返されるだろうことは判っていた。
「オスカル。おれも正直に話すから…オスカルも隠し事な無しだ。
目の診察と点眼薬は…忙しくてラソンヌ先生のところに行けなかったんだ。
この一年ほどの間、目を酷使したつもりは無いんだが、右目が弱視なのは事実だ。
目が霞むこともあるし、暗闇では視界も悪いし、視界が真っ暗になることもある」
「………っ」
オスカルは目を見開いた。
七月のあの日。…13日。
アンドレの視力が悪化しているのは判ったが…ここまで悪くなっているとは思わなかった。
こんなに、近くに居たのに。
アラン達でさえ気付いていたのに…一番近くにいたわたしが気付かなかった。
「オスカルの所為じゃ無い。自分を責めないでくれ。黒い騎士事件の時…包帯を取ったのはおれ自身だ。視力か低下しているのを判っていても…お前の側を離れたくなかった。
視力の悪化を隠していたのはおれだ。前にオスカルに視力のことを問われたことがあった。お前と一緒にいたいがゆえに、お屋敷の中ではバレないように動いていたのだから…すまなかった」
オスカルの瞳から涙が零れる。
アンドレの指がオスカルの涙を拭う。
優しく見つめてくるアンドレにオスカルは小さく頷き、静かに話し始めた。
「…年明けに咳き込むことが多くなって、胸を病んでいるかもしれないと…アンドレが夜勤の日にラソンヌ医師の所に立ち寄ったんだ」
アンドレは息を飲んだ。
ジャルジェ家にいた頃、互いに想いが通じ、口付けをすると血の味がすることがあった。
オスカルは風邪気味だと言っていたけれど。
「それで…ラソンヌ先生は何と…?」
「肺結核であるとは言い切れない。体力が落ちていて風邪の延長かも、と。何時も腫れる扁桃腺が悪さをしているようだ」
真剣に聞いていたアンドレの顔が、後半のオスカルの言葉に目をパチクリさせる。
オスカルはクスリと口元で笑ってみせ、ラソンヌ医師から聞いたルイ・ジョセフ殿下のことや疲労からオスカルの体力が落ちていること…聞いたことを全てアンドレに話した。
「もし本当に胸を病んでいたら…とアンドレに言い出せなくて、一人でラソンヌ医師の所に行ったんだ。…すまなかった」
目を伏せるオスカルの髪をアンドレの指が優しく梳く。
銃槍の傷が癒えたら空気のきれいな場所にオスカルと移ろう。
南フランスの故郷ならば自然も多い。
オスカルの身体と自分の目にも豊かな自然は恵みになるとアンドレは思った。
「…話してくれてありがとうオスカル。一緒にラソンヌ医師に診てもらおう」
「…うん…」
オスカルは素直に頷いたのだった。
◆おわり◆
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☆あとがき…のような ひとりごと☆
〜2021年 三が日SSにお付き合いくださり、有難うございました。
扁桃腺。フランス語ではアンジーン。
もしもオスカルさまが胸の病では無く、風邪を拗らせると酷く扁桃腺が腫れやすい人だったら…と思いついたお話です。
近衛隊とは違い、衛兵隊の環境は良いとは言えなかったでしょう。
職務多忙と仕事環境と強いお酒…の体調不良。胸の病かと思っていたものが、扁桃腺が原因だったら?です。
扁桃腺で喉が腫れても吐血することは無いですが、口の中…喉の奥は血の味がします;^_^A
白鳥自身の話になりますが、白鳥も風邪を拗らせると真っ先に悲鳴をあげるのが扁桃腺。
昔は扁桃腺が腫れやすい人は手術して取ったりしていましたが、現在は余程の理由がなければ扁桃腺の手術はしない方向らしいですね。
まぁ…白鳥も酷く扁桃腺が腫れて幼児の頃はしょっちゅう掛かりつけの病院に日夜関係なく担ぎ込まれていたらしく。
私の場合、風邪の症状を喉が殆ど受け止めていたらしく、扁桃腺の手術をすると風邪引いたら喉を通り越して内蔵がダメージを受けるとの先生の判断で、母も扁桃腺と白鳥を向き合わせる覚悟を決めて今に至りますが…数年に一度はドカーンと扁桃腺が腫れてエライことになります(^◇^;)
〜ここまでお読みいただき、有難うございました。
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