「ありがとう。」
その瞬間、風が吹き抜けた。公園の木立が揺れる。明日香の髪のにおいが翔太の鼻腔をくすぐる。翔太は慌てて、明日香から離れる。
「礼はいいって。俺が悪かったんやし。」
「ううん、あたしも悪かってん。あたし、夢中になると、人の話しをうるさがって、聞かへんねん。いつも、そこを怒られるねん。腹が立つこと、言ったやろ。ごめん。」
「もうええって。俺ら、お互い怒ってるか、謝ってるか、どっちかやん。やめよ。それよりさ、」
翔太は気分を変えるように叫んだ。
「喉、乾いた。」
明日香は肩にかけていた青い水筒を掲げる。
「飲み物、持ってきてるで。」
「やった。」
彼らはベンチに並んで座る。明日香はコップに白い液体を注ぐ。翔太は目を丸くする。
「これは…。」
「カルピス。」
翔太はおそるおそるそれを飲む。滑らかに喉にすべりこむ。まろやかで甘い。完璧だ。彼は思わず声にだす。
「うまい。」
「やった。」
明日香の得意顔が翔太はちょっと癪に触ったが、自分の言った通りに彼女が実行したことに感心した。
「俺が言う通りにしたんや。」
「うん。」
「な、そのほうがうまいやろ。」
「うん。」
「うんしか言わへんの。」
「うん。」
「しょうもないこと言うなよ。」
「うん。」
2人で顔を見合わせて、ぷっと笑う。昼下がり。空は青く、雲がぽかりと浮かぶ。人通りはなく、車も通らない。この世には、翔太と明日香の2人しか存在していないようだった。お互いに心は静かで凪いでいた。穏やかな沈黙。彼らはつかの間、それに浸っていた。
その瞬間、風が吹き抜けた。公園の木立が揺れる。明日香の髪のにおいが翔太の鼻腔をくすぐる。翔太は慌てて、明日香から離れる。
「礼はいいって。俺が悪かったんやし。」
「ううん、あたしも悪かってん。あたし、夢中になると、人の話しをうるさがって、聞かへんねん。いつも、そこを怒られるねん。腹が立つこと、言ったやろ。ごめん。」
「もうええって。俺ら、お互い怒ってるか、謝ってるか、どっちかやん。やめよ。それよりさ、」
翔太は気分を変えるように叫んだ。
「喉、乾いた。」
明日香は肩にかけていた青い水筒を掲げる。
「飲み物、持ってきてるで。」
「やった。」
彼らはベンチに並んで座る。明日香はコップに白い液体を注ぐ。翔太は目を丸くする。
「これは…。」
「カルピス。」
翔太はおそるおそるそれを飲む。滑らかに喉にすべりこむ。まろやかで甘い。完璧だ。彼は思わず声にだす。
「うまい。」
「やった。」
明日香の得意顔が翔太はちょっと癪に触ったが、自分の言った通りに彼女が実行したことに感心した。
「俺が言う通りにしたんや。」
「うん。」
「な、そのほうがうまいやろ。」
「うん。」
「うんしか言わへんの。」
「うん。」
「しょうもないこと言うなよ。」
「うん。」
2人で顔を見合わせて、ぷっと笑う。昼下がり。空は青く、雲がぽかりと浮かぶ。人通りはなく、車も通らない。この世には、翔太と明日香の2人しか存在していないようだった。お互いに心は静かで凪いでいた。穏やかな沈黙。彼らはつかの間、それに浸っていた。