翔太は今、夢の中にいる。辺り一面、野草が咲き乱れた場所に立っていた。濃い草と甘い花のにおいが漂っている。蜜蜂が後脚に黄色い花粉をつけて飛び回っている。様々な草花が混じり合っていた。鮮やかな緑と極彩色。翔太はうんと伸びをした後、ぴょんと跳びはねた。下半身の感触がいつもと違う。翔太は自分を見下ろす。彼はレモンイエローのチュニックワンピースを身につけていた。袖口と裾はふんわりと広がり、二重のフリルがついている。夢の中での翔太はそれを当然のように受け止めていた。ためらいも戸惑いもなく、ワンピースのふわふわした感触を楽しんでいた。
その時、高らかにファンファーレが鳴り響いた。それに合わせて、どこからともなく明日香が現れた。彼女は淡いピンクのギャザーのたくさん入ったシフォンワンピースを着ていた。明日香の頭には、翔太が昼間に渡した花束と同じ花で作られた冠があった。彼女は冠を軽く手で触り、にこりと笑う。愛らしい歯がちらりと見える。
「花束を頂いたおかげで、すばらしい冠ができたよ。」
「それ、俺があげたやつなんや。」
「もちろん。それで、ささやかなんだけど、お礼がしたくて。」
明日香がそう言った途端、大きなみみずが2匹、頭にあたる部分に緑色の冠を捧げ持ち、しずしずとやってきた。そのみみずたちは、体長が1m20cm、直径が30cmぐらいで、明日香の腰のあたりまで体を持ち上げていた。彼女はみみずから冠を受け取る。四葉のクローバーでできた冠だった。明日香はそっと四葉の冠を翔太の頭に載せる。
「ありがとう。」
翔太は少し照れ臭い。明日香はおっとりと微笑む。みみず達は拍手をするように、体を持ち上げたまま、左右に揺らす。花の甘い香りが強くなる。ファンファーレがまた響き渡る。この地では、明日香は女王なのだ。彼女は翔太にささやく。
「踊ろう。」
音楽が始まった。少し物悲しいオーボエとハープの音。それにホルンやフルート、ティンパニ、様々な音色が混じり合って、聞き覚えのあるメロディーを奏でる。明日香はワンピースの裾をつまみ、おじぎをする。そして、爪先立ちになりくるくると回り始めた。ピンクのシフォンはふわりと広がり、彼女の真っ直ぐな足が見える。曲のテンポが少しづつあがるごとに、明日香の回転のスピードもあがる。翔太はその柔らかくも、硬質な美しさにあっけにとられる。悲しみと強さが交差する音楽。明日香は憂いを秘めながらも、何か解放されたように踊り続ける。翔太はただ目をみはって、立ちつくしていた。音楽が終わる。彼女も踊るのを止める。少し息が上がっている。腕を伸ばし、足を折り、優雅におじぎをする。翔太は思わず拍手をする。
「山川、すごい。」
明日香は微笑む。翔太は言葉を続ける。
「本当はバレエを踊りたかったんやな。」
彼女は微笑んだままそれには答えず、翔太に手を差し伸べる。
「踊ろう。」
彼は躊躇する。
「俺、バレエなんか踊られへんし。」
「音楽に合わせて踊ればいいし。ここでは、好きなように踊ればいいよ。」
その時、高らかにファンファーレが鳴り響いた。それに合わせて、どこからともなく明日香が現れた。彼女は淡いピンクのギャザーのたくさん入ったシフォンワンピースを着ていた。明日香の頭には、翔太が昼間に渡した花束と同じ花で作られた冠があった。彼女は冠を軽く手で触り、にこりと笑う。愛らしい歯がちらりと見える。
「花束を頂いたおかげで、すばらしい冠ができたよ。」
「それ、俺があげたやつなんや。」
「もちろん。それで、ささやかなんだけど、お礼がしたくて。」
明日香がそう言った途端、大きなみみずが2匹、頭にあたる部分に緑色の冠を捧げ持ち、しずしずとやってきた。そのみみずたちは、体長が1m20cm、直径が30cmぐらいで、明日香の腰のあたりまで体を持ち上げていた。彼女はみみずから冠を受け取る。四葉のクローバーでできた冠だった。明日香はそっと四葉の冠を翔太の頭に載せる。
「ありがとう。」
翔太は少し照れ臭い。明日香はおっとりと微笑む。みみず達は拍手をするように、体を持ち上げたまま、左右に揺らす。花の甘い香りが強くなる。ファンファーレがまた響き渡る。この地では、明日香は女王なのだ。彼女は翔太にささやく。
「踊ろう。」
音楽が始まった。少し物悲しいオーボエとハープの音。それにホルンやフルート、ティンパニ、様々な音色が混じり合って、聞き覚えのあるメロディーを奏でる。明日香はワンピースの裾をつまみ、おじぎをする。そして、爪先立ちになりくるくると回り始めた。ピンクのシフォンはふわりと広がり、彼女の真っ直ぐな足が見える。曲のテンポが少しづつあがるごとに、明日香の回転のスピードもあがる。翔太はその柔らかくも、硬質な美しさにあっけにとられる。悲しみと強さが交差する音楽。明日香は憂いを秘めながらも、何か解放されたように踊り続ける。翔太はただ目をみはって、立ちつくしていた。音楽が終わる。彼女も踊るのを止める。少し息が上がっている。腕を伸ばし、足を折り、優雅におじぎをする。翔太は思わず拍手をする。
「山川、すごい。」
明日香は微笑む。翔太は言葉を続ける。
「本当はバレエを踊りたかったんやな。」
彼女は微笑んだままそれには答えず、翔太に手を差し伸べる。
「踊ろう。」
彼は躊躇する。
「俺、バレエなんか踊られへんし。」
「音楽に合わせて踊ればいいし。ここでは、好きなように踊ればいいよ。」