天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

無風地帯

2013-06-03 22:05:02 | 小説
洗い物をすませ、飾り棚にある時計を見る。六時過ぎ。今日は早番だから、もうそろそろ用意をして出かけねば。私は慌てて立ち上がる。身支度といってもたいしたことはしないのだが。歯を磨いて、日焼けどめを塗って、サングラスをかけて、帽子をかぶり、リュックを背負う。それだけ。私は玄関の中に入れてあった自転車を外に出し、またがる。私は毎日、自転車で通勤していた。職場は自転車で二十分ぐらいのところにあった。玄関前に直植えしている朝顔が生き生きと咲き誇っていた。鮮やかな瑠璃色、深い赤紫、入り乱れて咲いている。瑞々しい緑の葉や蔓の巻具合も愛らしい。螺旋に丸まった蕾が咲くのも楽しみだ。帰ったら、水をあげよう。私はそう思いながら、自転車のペダルを踏んだ。