この神社の境内にはたった一本だけ
梅の木がある。古い梅の木で、幹には
いくつものこぶがあった。この季節に
なると白梅が咲き、えも言われぬ香り
が漂う。ごつごつとした幹と可憐な白
い花の取り合わせが清吉の目には好ま
しく映った。毎年、彼はここの梅の花
を見るのを楽しみにしていた。梅の木
の下には床几が置いてあった。清吉は
木の箱を下ろした。床几にゆっくりと
座る。梅が優しく香る。清吉が梅の花
を見上げた瞬間、激しい風が巻きお
こった。境内の砂が舞い上がる。清吉
は慌ててふところから手ぬぐいを出し
て顔を覆う。すぐに強風は止んだ。彼
は手ぬぐいを顔から外す。目の前に、
女が一人立っていた。
梅の木がある。古い梅の木で、幹には
いくつものこぶがあった。この季節に
なると白梅が咲き、えも言われぬ香り
が漂う。ごつごつとした幹と可憐な白
い花の取り合わせが清吉の目には好ま
しく映った。毎年、彼はここの梅の花
を見るのを楽しみにしていた。梅の木
の下には床几が置いてあった。清吉は
木の箱を下ろした。床几にゆっくりと
座る。梅が優しく香る。清吉が梅の花
を見上げた瞬間、激しい風が巻きお
こった。境内の砂が舞い上がる。清吉
は慌ててふところから手ぬぐいを出し
て顔を覆う。すぐに強風は止んだ。彼
は手ぬぐいを顔から外す。目の前に、
女が一人立っていた。