のんびり行こう!

3歩進んで2歩下がる。
そんな感じでやっていこう。
思いついたら更新。気ままに気長に。

あれから3年たちました。  2話

2015年04月25日 | 銀魂 テキスト(未完)
ターミナルの造りってどうなってるのか。
巨大な花火筒みたいなもんかな。でも、中がドックになっているようにもないし、いまひとつ存在意義がわからない…。
そういった悩みから長谷川さん登場。なんでそうなるの、とかもうどうでもいい。
矛盾はすべて”銀魂だから”さ。

~ あれから3年経ちました 2 ~

 外出して、食事をとり、渡された金で一杯ひっかけて帰ると土方は姿を消していた。
治療とソファーの弁償のつもりか札が数枚テーブルにあった。
「相変わらず愛想がねえ。」
ため息を一つついて、首の後ろを掻く。
愛想がない、というより…何だろう。何か喉元に引っかかった小骨が取れないような、すっきりしない心持だった。

クーデター以後も万事屋は概ね暇である。
大飯食らいがいなくなったものの仕事に張合いもなくなってとりあえず一人養えればいいという働きようなので今も家賃は滞納気味だ。
 土方が訪れた翌々日も、仕事はなく、家賃の一部を支払いにお登勢に行った以外、家でぼんやりしていた。いるだけでも以前は電話番をしているといえたのだが、電話はもはや通じていない。
 望んだことであるはずだが、また、取り残されている気がする。
戦いたくはない。しかし、目を背けて誰かがどこかで死んでいくのを目を閉じ耳をふさいでやり過ごすのか…。
「土方は、」
相変わらず戦っているのか?
うーと唸りながら無意味に机の上を両手を滑らせ伸びをする。
そこへ。
「おう、銀さん、あいっ変わらず暇そうでだねぇ。」
かつて知ったるとチャイムも押さず、在不在を確かめもせず玄関で靴を脱いで長谷川がやってきた。彼が来ると大抵、銀時は愚痴を聞かされる。
 現在、長谷川は古巣の入国管理局に再就職していた。
「でもねぇ、定期便は一日一便。ビザの発給を許されたまあ、いわゆるエリート天人の入出国手続きなんてそもそも必要ないし、結局、未だに隠れている不法滞在者を強制送還するのが仕事なわけよ。だれがしたいんだよ、んなこと。それによっぽど出ていってほしい天人は居座っちゃってるし。」
自ら勝手に茶碗に水を汲みちびちびやりながら愚痴りだす。
 マダオだからこその再就職なのは十分わかっている。仮にも国家権力の象徴であるターミナルに出入りすることが許された存在ならばかつての政権に従わなかった人物であることは必要条件だったのだろう。さらに才能ややる気があったり、確固とした思想を持っている人間には勤め上げられない仕事だ。
「昔の局とは違いすぎるんだよなあ。」
顔をあげ長谷川を見つめる。彼の顔が、どこか、すっきりとしているように見えた。サングラス越しなのではっきりとは断言できないが。
「あんた、この時間ならいくら閑職とはいえ仕事中じゃないの?」
飲み終えた茶碗をテーブルに置く。
「仕事は、辞めることにした。」
それを告げに来たとわかる一言。だが、なぜ、自分に?
「長谷川さん、あんた…。」
「銀さんは、俺にとっちゃヒーローみたいなもんなんだ。だからあんたにも歩き出してほしいと思ってね。」
そして、長谷川はすべて言い切ったとばかりに立ち上がり、出ていった。
が、もちろん銀時にはなんのことだか分らない。
「奥さんに言えず、友達もいない身としてはとりあえず俺にでも言っておこう、てとこか?」
だが、今更、なぜ、と聞くことはなかった。

 長谷川が帰ってしばらくのち、今度は呼び鈴を押しての来客があった。
いつの間にか眠っていて机によだれが垂れている。無駄に一日を終えかけていたが、仕事ならば暇つぶしの留守番も無駄ではなかったということか。
いそいそと迎えに出た銀時に来客は深々と頭を下げる。銀色の瞳の彼女は、
「坂田銀時様ですね。主の命でお迎えに参りました。わが主ハタ皇子が、ホテルでお待ちです。」と言って、先日土方が持っていたのによく似た端末を押し付ける。
少なくとも地球人ではない。銀時の手を取る時も視線が動かない。
「必要でしたら表の監視は私のほうで排除いたしますが、どういたしましょうか?自力で監視を巻いて来られるか、ここまで車をよこすか。私のほうから依頼をお伝えしても良いのですがいずれにしろお越しいただく必要がありますので、主にお会いいただくほうが良いかと判断いたします。」
「バカ皇子の依頼?」
呟いた途端、銀の目からビームが出た。光は銀時のほほをわずかにかすり、壁を焦がす。
彼女の言うところの“排除”が、何かを考えると、いや、考えるまでもなく、この依頼は受けざるを得ないし、表の監視にばれないよう自力で万事屋を抜け出しハタ皇子のもとに行くのが一番穏便な方法だろう。
「…どこにいけばいいんだ?」
笑顔だけは、現在燃料不足で「お登勢」の定位置で眠りについているタマに似ている。
「車をよこして疑問に思われない、あなた様が当局に見つからずにたどり着けるスマイルあたりがよろしいかと。」
ここに至って長谷川の来訪、ひいては彼の辞職は土方がらみだと気づいた。
そしてハタ皇子の依頼も、あのバカ皇子のことだからもしかしたら、数パーセントくらいは全く関係ない、希少種動物を手に入れたいといった類のバカな依頼であることもありえなくもないが、現時点、このアンドロイドの様子からすれば、ただの護衛官がらみである確率のほうが高い。連絡のときも、確か土方は電話の先にいる人物に自分の無事を伝えていた。さらにその人物は迎えをよこそうかとおそらくは心配して提案したのだ。ただの護衛ではあるが貴重な護衛なのだろう。
今は、まだ内容のわからない依頼を断るという選択肢も残ってはいるのだ。聞いてから判断する余地は残っているはずだ。
残ってはいるが…。
名前も聞いていなかったアンドロイドは、何事もなかったかのように通りを歩て帰って行った。スマイルで待っているのだろう。
久々に木刀を腰にさし、端末を懐に入れると、誰もいない、誰も待たない、万事屋を後にした。裏道に降りて一度だけ振り返った。
明かりをなくした部屋も街もひどく静かで寂しげだった。





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