ギニア:9月28日の虐殺は計画的
詳細な調査が手当たり次第に行われたレイプを取りまとめている
(ニューヨーク、2009年10月27日)-2009年9月28日ギニアの首都コナクリーで平和的集会参加者への大量殺人とレイプが行われたが、この事件に対する徹底的な調査は、虐殺と性的暴力が、“レッドベレー”として一般に知られている大統領護衛精鋭部隊によってほぼ計画・実行されたことを暴露した、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ギニアへ10日間の調査ミッションを行った後、ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、武装部隊がスタジアムや市の安置所から遺体を押収しそれを集団で埋葬して、犯罪の証拠を隠蔽しようと試みていたことも明らかにした。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、大統領護衛部隊が少なくとも150名を計画的に虐殺し、数十人の女性を残虐にレイプしたことを明らかにした。レッドベレーは銃弾が尽きるまで政府反対派の支持者に銃撃を加え、更に銃剣とナイフで殺害を続けた。
“死者が出たのは何らかの事故だったと、ほのめかすようなことを、最早政府は続けられない。”とジョルジェット・ギャグノン、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アフリカ局長は語った。“これは政府反対派の声を沈黙させるためのあきらかに計画的な行動だった。”
“治安部隊はスタジアムを包囲・封鎖して、その後襲い掛かり、銃弾が尽きるまで冷酷に抗議運動参加者に銃撃を加え、又指揮官の眼前で女性たちを身の毛のよだつ方法でギャングレイプし殺害した。”とギャグノンと付け加えた。
2008年12月22日、自らを「民主主義と発展のための国民評議会(CNDD)」と呼ぶギニア軍将校の一団が、24年間ギニアの大統領だったランサナ・コンテ(Lansana Conté)の死亡数時間後に、政権を掌握した。CNDDは自らを大統領であると称するムサ・ダディス・カマラ(Moussa Dadis Camara)大尉に率いられている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が提案する、虐殺・レイプ事件を調査する国際委員会を全面的に支援すること、調査を速やかに行うこと、調査はアフリカ連合が関与し国連が率いること、などの要求を改めて表明した。犯罪に対する公正で効果的な訴追につながる、刑事捜査(国内的努力が原則だが、それが出来ない場合は国際努力で)が必要不可欠である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員4名のチームは、10月12日から22日までの間に、被害者及び目撃者150名以上に聞き取り調査を行った。聞き取りに応じた人々の中には、襲撃による負傷者、スタジアムでの目撃者、行方不明者の家族、弾圧・隠蔽に参加した軍将校、医療スタッフ、人道援助当局者、外交官、政府反対派指導者などがいた。
9月28日スタジアムでの大量殺戮
多くの目撃者の説明によれば、9月28日午前11時30分頃、“レッドベレー”と呼ばれる大統領護衛部隊数百名と、対麻薬及び対組織犯罪部隊に協力する憲兵隊、機動隊の一部、数十人の私服非正規民兵の混成部隊が、機動隊のスタジアムへの催涙ガス発射の後、スタジアムに入り、殆どの出口を閉鎖したのだそうである。スタジアムは、軍事政権と近づいてきた大統領選挙にカマラが立候補するというウワサに抗議する、平和的な民主主義支持者数万人で満杯だった。
その朝の経過では政府反対派支持者と治安部隊の間に少々の衝突があった。死者を出した幾つかの事件では、治安部隊が政府反対派メンバーに発砲したのだが、それはスタジアムに政府反対派メンバーを近づけまいとしての行動だった。致命傷を与えるような発砲に怒った政府反対派支持者たちが、ベレブー(Bellevue)警察署に火をつけた事件も1つあった。
しかしながら目撃者の説明とヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した、発砲直前のスタジアムに集まった人々のビデオ映像は、平和的でお祝いムードに溢れるものだった。政府反対派の支持者たちが歌い、踊り、スタジアムの周辺をポスターやギニア国旗を手に行進し、中には祈っている者さえいる、そんな光景が写されていた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府反対派の支持者の誰かが武装していたという証拠を確認していないし、治安当局者は1人もスタジアムで政府反対派の支持者に負傷させられていない。このことは、続いて怒った虐殺やレイプもたらすような、政府反対派の支持者による正真正銘の脅威などなかったことを示唆している。
スタジアムに突入した直後、大統領護衛部隊員は抗議者の大きな集団に至近距離から直接発砲し始め、数十人を殺害しパニックを引き起こした、と目撃者は語った。襲撃者、とりわけ大統領護衛部隊員と対麻薬及び対組織犯罪部隊に所属する憲兵隊は、その多くが携行しているAK-47突撃銃の弾倉2本が空になるまで銃撃し続けた。襲撃者によって殆どの出口は閉鎖されスタジアムは包囲されていたので、閉じ込められられた抗議者にとって脱出は極めて困難だったし、多くがパニックになった群集によって押しつぶされて死亡した。
ある政府反対派支持者(32歳男性)はヒューマン・ライツ・ウォッチに、如何にレッドベレーがスタジアムに突入し抗議者に直接発砲し始めたのか、如何に彼が脱出しようとしていた際に殺害が続いたのかの様子を話してくれた。
“ヤツラはスタジアムの外から催涙ガスを撃ちはじめた。沢山のガス弾がスタジアムに撃ち込まれたんだ。それから直ぐ、レッドベレーが大きなゲートから突入してきた。突入してきた途端に、群集を狙って撃ち始めやがった。兵隊の1人が‘掃除に来た’って大声でわめくのを聞いたよ。一番奥のゲートまで逃げようとしたんだ。後ろを見たら、芝生に死体がいっぱい転がってた。スタジアムの外に出ようって決めた。奥のゲートのドアが1つ開いてたんだけど、あんまり沢山の人がそこから逃げようってしてたもんだから、閉まってるドアをよじ登ることにしたんだ。”
“周りにある壁に向かって走った。バスケットボール場の近くで、レッドベレーとティエグボロの憲兵[麻薬密輸及び重大犯罪との闘い担当国務大臣ムサ・ティエグボロ・カマラ大尉(Moussa Tiegboro Camara):CNDD総裁ダディス・カマラの親族ではない]の集団に追いかけられた。俺たち8人のグループにヤツラ撃ってきて、3人だけ生きて逃げられた。[ガマル・アブデル・ナセル:Gamal Abdel Nasser]大学に面した壁の近くで撃たれ、5人は殺された。”
“俺たちは外に出られなかったんで、ドンカ(Donka)道路の近くにある壊れた壁に走って戻った。そこでもトラック2台とレッドベレーの集団が待ち伏せしていた。銃剣を持っていて、俺は1人のレッドベレーが目の前で(銃剣を使って)3人殺すのを見たもんだから、戻ろうと思ったんだけど、友達が、‘俺たちは数が多いんだから、押し通ってみようぜ!’って言ったのさ。そしてそれが俺たちの逃げた方法だったのよ。”
政府反対派指導者の1人はヒューマン・ライツ・ウォッチに、演壇の下で展開された殺戮の光景を、どのように信じられないような気持ちで見ていたかを説明した。
“私たちは演壇に上がった。人々が指導者の到着に気づき、更に多くの人がスタジアムに入ってきて、満杯になった・・。スタジアムを出ようと準備しながら、人々に家に帰ろうと呼びかけたちょうどその時だった。外で銃声が聞こえ、それから催涙ガスが撃ち込まれてきた。兵士が頭上の電線を切って金属のドアに電気を流し、スタジアムを包囲した。”
“それからスタジアムに突入してきて発砲した。スタジアムの大きな入場口から発砲し始めたんだ。私たちは演壇上にいたので、撃たれた人が倒れるのが見えた。本当に信じられない光景だった。みんなが逃げた後、そこら中に死体があって、私たちはまだ演壇の上にいた”
目撃者はまた、スタジアム周辺の2メートルの高さの壁に囲まれている場所で、大統領護衛部隊と他の治安部隊が更に多くの政府反対派支持者を殺害したと説明した。その壁をよじ登って逃げようとしている時に、抗議者たちは襲撃者によって撃ち殺された。政府反対派支持者はまた私服でナイフ、パンガス(ナタ)、先を尖らせた棒で武装した男たちにも襲撃されたと語った。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが集めた証拠は、虐殺と手当たり次第に行われたレイプ(以下に取りまとめた)が組織化され計画されていたということを、強く示唆している。この結論は、治安部隊がスタジアムに突入して直ちに抗議者に発砲を開始しているということ、及び、政府反対派の抗議が平和的であり、激しい暴力で対応する必要のあるような脅威を与えていなかったという、目撃者とビデオ映像による両方の証拠によって裏づけられている。混成部隊が同時に到着し、出口とエスケープルートを封鎖、極めて多数の大統領護衛部隊が一斉にしかも執拗な激しい銃撃を加えて、虐殺は実行されたらしい。その方法が、虐殺が組織化され周到に計画されていたことを示している。
民族的側面
聞き取り調査の際多くのギニア人は、今回の暴力に明らかな民族的側面があることにショックを表していたが、それはギニアの状況を一層不安定にする恐れがある。犠牲者の大多数は、殆ど全部がイスラム教徒であるフーラ族(Peuhl)という民族グループ出身であり、一方スタジアムの指揮官の殆どは(支配政党CNDDの主要メンバーはクーデター指導者カマラを含めて実際は)、概してキリスト教か精霊を信仰する南東部森林地帯の民族グループに所属している。
多くの殺人者とレイピストが襲撃の際、政府反対派支持者内の多数派民族であるフーラ族(Peuhl)を、ターゲットにしているのを明らかにし侮辱しながら、民族的偏見に基づいた発言をし、「フーラ族(Peuhl)が権力を取ろうとしている。」、「フーラ族は“思い知らされる”必要がある。」などと言っていた、と目撃者は語っていた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは又、南東部の町・フォレカリアー(Forécariah)近くにある基地で行われた、軍事訓練の目撃者の話を聞いた。それは、森林地帯出身民族の人々で多数派を構成する特殊部隊を作るための、同地帯出身の数千人の男に対する訓練だったらしい。
フーラ族犠牲者の多くは民族性を理由にして、脅迫され虐待されてきたと報告している。例えば、制服を着てレッドベレーを被った男たちにギャングレイプされたある女性は、如何に襲撃者たちが繰り返し彼女の民族性に言い及んでいたかを、説明していた。:「今日俺たちはお前らに教えてやる。お前らの悪巧みにはウンザリだよ。フーラ族なんて皆殺しにしてやるぜ。」と言っていたそうだ。コウンダラ(Koundara)軍事基地に数日間拘束されていた、ある若い男性はレッドベレーにピストルを頭に押し当てられ、「お前ら俺たちをイヤダって言ってるんだってな。セロウ[フーラ族を率いている政府反対派候補者セロウ・ダレイン・ディアロウ(Cellou Dalein Diallo )のこと]”の方がイイって言ってるんだって。皆殺しにしてやるよ。俺たちがノシテ行くんだ。」と言ったと説明した。
殺害された者の数と政府の隠蔽
Human Rights Watch’s research confirms that the death toll of the September 28 massacre was much higher than the government’s official toll of 57 dead, and is more likely to be about 150 to 200 dead. According to hospital records, interviews with witnesses and medical personnel, and the records collected by opposition political parties and local human rights organizations, at least 1,000 people were wounded during the attack on the stadium. Human Rights Watch found strong evidence that the government engaged in a systematic attempt to hide the evidence of the crimes. During the afternoon of September 28, members of the Presidential Guard seized control of the two main morgues in Conakry and prevented families from recovering the bodies of their relatives.
ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、9月28日の虐殺で殺害された者の数が政府の公式発表である57名よりもはるかに多数であり、およそ150から200名になる可能性が高いことを確認している。病院での記録、目撃者と医療従事者への聞き取り調査、野党政党と地元人権保護団体が集めた記録によれば、少なくとも1000名の人々がスタジアムへの襲撃の際に負傷している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府が彼らの行った犯罪の証拠を組織的に隠蔽しようとしていることを示す、強力な証拠を発見した。9月28日の午後大統領護衛部隊はコナクリーにある中心的死体安置所を支配下に治め、家族が親族の遺体を引き取りに来るのを妨げている。
In the hours that followed, witnesses and family members said, soldiers, most wearing red berets, removed bodies from the city morgues and collected bodies from the stadium, then took them to military bases and concealed them. Human Rights Watch investigated more than 50 cases of confirmed deaths from the massacre and found that half of those bodies had been taken away by the military, including at least six that had initially been taken to the main Donka Hospital morgue.
その後数時間以内に、大方はレッドベレーを被った兵士たちが、市の安置所から遺体を持ち去り、スタジアムの遺体を収集して、それを軍基地へ持ち運び隠した、と目撃者と家族は語っていた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは虐殺での死亡が確認された50ケース以上を調査し、主要な安置所のあるドンカ(Donka)病院に当初運ばれた、少なくとも6名の遺体を含む遺体の半数が、軍によって半分が持ち去られているのを明らかにした。
For example, the body of Mamadou “Mama” Bah, a 20-year-old student killed on September 28, was transported to Donka morgue by the local Red Cross. The body disappeared and has not been recovered. Bah’s father described what he experienced to Human Rights Watch:
例えば、9月28日に殺害された学生ママドウ・“ママ”・バーの遺体は地元赤十字によってドンカ安置所に運ばれていた。しかし彼の遺体は消え回収されていない。バーの父親はその経験をヒューマン・ライツ・ウォッチに以下のように語ってくれた。
“The Red Cross took the body to Donka Hospital morgue, and I followed them myself. At the hospital, I spoke to the doctors and they told me I should come back the next day to collect the body. But the next day, the morgue was encircled by red berets who refused anyone access. We tried to negotiate with them, but they refused. On Friday, I went to the Grand Fayçal Mosque when they displayed the bodies from Donka morgue, but his body wasn’t there. It had disappeared.”
“赤十字が遺体をドンカ病院安置所に運び、私は赤十字の後をついていった。病院で私は医者と話しをし、先生たちは遺体を引き取りに明日もう一度来なさいと言ったんだ。でも次の日安置所はレッドベレーに取り囲まれていて、誰も入れてくれなかった。交渉しようとしたけれど断られた。金曜日にグランド・ファイサル・モスク(Grand Fayçal Mosque)に行った、レッドベレーがドンカ安置所の遺体をそこで見せていたからだ。でもそこにも息子の遺体はなかった。消えてしまったんだ。”
Hamidou Diallo, a 26-year-old shoe salesman, was shot in the head and killed at the stadium. A close friend, who was wounded, watched the red berets remove Diallo’s body from the stadium and take it away to an unknown location. Despite an extensive search of the morgue and the military bases, the family was unable to find Diallo’s body.
26歳の靴のセールスマン、ハミドゥ・ディアロ(Hamidou Diallo)はスタジアムで頭部を撃たれ殺害された。負傷した親友の1人はレッドベレーが彼の遺体を何処かに運び去って行くのを見た。安置所や軍の基地を懸命に探したが、家族はディアロの遺体を見つけられなかった。
One witness inside the Almamy Samory Touré military camp described to Human Rights Watch how in the hours after the massacre, the military brought 47 bodies from the stadium to the camp, and then later that evening went to the morgue that he was told was at the Ignace Deen Hospital and collected an additional 18 bodies. The witness further stated that the 65 bodies were taken from the military base in the middle of the night, allegedly to be buried in mass graves.
アルマミー・サモリー・トウレ(Almamy Samory Touré)軍基地内部の目撃者はヒューマン・ライツ・ウォッチに、虐殺の数時間後に軍がスタジアムから47遺体を基地に運び込んだ様子と、その日の夜イガンス・ディーン(Ignace Deen)病院に行くよう彼が言われ、そこから更に18遺体を回収した様子を説明してくれた。その目撃者は更に、その夜中65遺体が基地から運び出され、まとめて埋められたらしい、とハッキリ述べていた。
Widespread Rape and Sexual Violence
広範囲に行われたレイプと性的暴力
The Presidential Guard, and to a lesser extent gendarmes, carried out widespread rape and sexual violence against dozens of girls and women at the stadium, often with such extreme brutality that their victims died from the wounds inflicted.
大統領護衛部隊とそれより数の少ない憲兵はスタジアムで、数十名の少女や女性を手当たりしだいにレイプし又性的暴力を加えた。余りにも激しい残虐行為を多くの場合加えられたために、犠牲者はその傷が元で死亡した。
Human Rights Watch researchers interviewed 27 victims of sexual violence, the majority of whom were raped by more than one person. Witnesses described seeing at least four women murdered by members of the Presidential Guard after being raped, including women who were shot or bayoneted in the vagina. Some victims were penetrated with gun barrels, shoes, and wooden sticks.
ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員が聞き取りを行った、性的暴力の犠牲者27名の大多数は1名を超える者にレイプされている。目撃者は、大統領護衛部隊員が少なくとも4名の女性をレイプした後に、性器に銃撃を加え又は銃剣を突き刺すなどして殺害したのを見たと説明した。犠牲者の一部は銃身、靴、木の棒などを性器に突き刺された。
Victims and witnesses have described how rapes took place publicly inside the stadium, as well as in several areas around the stadium grounds, including the nearby bathroom area, the basketball courts, and the annex stadium. In addition to the rapes committed at the stadium, many women described how they were taken by the Presidential Guard from the stadium and from a medical clinic where they had sought treatment to private residences, where they endured days and nights of brutal gang rape. The level, frequency, and brutality of sexual violence that took place at and after the protests strongly suggests that it was part of a systematic attempt to terrorize and humiliate the opposition, not just random acts by rogue soldiers.
犠牲者や目撃者はスタジアム内部と同じく、スタジアム周辺近くの浴室エリア、バスケットコート、スタジアム別館など様々な場所で、レイプが公然と行われた様子を説明した。スタジアムで行われたレイプに加えて多くの女性はスタジアムや治療を求めて行っていた診療所から民家に連れて行かれ、そこで昼夜を問わず大統領護衛部隊によって残虐にレイプされ続けた。抗議の時とその後に起きた性的暴力のレベル・頻度・残虐性はそれが、ごろつき兵士の行き当たりばったりの行動ではなく、反政府派を恐怖に陥れ辱める組織的企ての一環であったことを、強く示唆している。
A 35-year-old teacher described to Human Rights Watch how she was gang raped at the stadium:
35歳の教師がヒューマン・ライツ・ウォッチにスタジアムでギャングレイプされた様子を説明した。
“After the shooting began I tried to run, but the red berets caught me and dragged me to the ground. One of them struck me twice on the head with the butt of his rifle. After I fell down, three set upon me. One whipped out his knife and tore my clothes off, cutting me on the back in the process. I tried to fight but they were too strong. Two held me down while the other raped me. They said they would kill me if I didn’t leave them to do what they wanted. Then the second one raped me, then the third. They beat me all the while, and said again and again they were going to kill all of us. And I believed them – about three meters away another woman was being raped, and after they had finished, one of them took his bayonet and stuck her in her vagina, and then licked the blood from his knife. I saw this, just next to me… I was so terrified they would also do this to me.”
“発砲が始まった後、逃げようとしたけれど、レッドベレーに捕まりグランドに引きずられていった。1人のレッドベレーにライフルの台尻で頭を2回殴られた。倒れたところに3人が襲い掛かってきた。1人がナイフを取り出し着ているものを引き裂いた。抵抗しようとしたけれど相手はとても強かった。2人に押さえつけられ1人にレイプされた。「俺たちがやりたいことをやらせないと殺す」って脅した。次に2番目の男がレイプしその後が3番目。ヤツラその間中殴って、私たちを皆殺しにするって言ってた。私はそれを信じたわ。だってほんの3mくらい離れたところでもう1人の女の人がレイプされていたんだけど、終わった途端に兵隊の1人が銃剣をその女の人の性器に突き刺して、ナイフについた血をなめてたのよ。私はそれを見たの、すぐ私の隣で・・・・ヤツラ私にもそうするって、ものすごく怖かった。”
A 42-year-old professional woman who was held in a house and gang raped for three days described her ordeal to Human Rights Watch:
3日間ある家に拘束されギャングレイプされた42歳の専門職の女性はその地獄のような経験をヒューマン・ライツ・ウォッチに説明した。
“As I tried to run from the firing, I saw a few red berets raping a young woman. One of them put his gun in her sex and fired – she didn’t move again. Oh God, every time I think of that girl dying in that way… I can’t bear it. As this happened, another red beret grabbed me hard from behind and said, ‘Come with me, or I will do the same thing to you.’ He led me to a military truck with no windows. In it were about 25 young men and about six women, including me. After some distance they stopped and the soldiers told three or four women to get out. Later they stopped at a second house where they told the women who remained to get out. I was immediately led into a room and the door was locked behind me.
“銃撃から逃げようとした時、数人のレッドベレーが若い女性をレイプしているのを見た。その内の1人が銃を彼女の性器に突っ込んで発砲した。その女性はもう動かなかった。あー神様、その女性が死んでいく様子を思い出す度に・・・耐えられなくなるのよ。それが起きた時、もう1人のレッドベレーが私を後ろから私を羽交い絞めにして言ったの。「一緒に来な。そうでないとお前に同じことするぜ。」って。そいつは私を窓のない軍用トラックに連れて行った。そこには25人くらいの若い男と、私を含めて6人くらいの女性がいた。少し走った後、トラックが止まって、兵士たちは3人だか4人だかの女性に降りるよう命じた。その後トラックは2軒目の家のところで止まり、残っていた女性に降りるよう命じた。すぐに部屋に連れ込まれて、ドアは後ろで鍵が掛けられた。”
“Some hours later three of them came into the room – all dressed in military and with red berets. One of them had a little container of white powder. He dipped his finger in it and forced it into my nose. Then all three of them used me. They used me again the next day, but after a while others came in, two by two. I didn’t know how many or who. I felt my vagina was burning and bruised. I was so tired and out of my head. The first three of them were watching each other as they raped me.
“数時間後、3人の男が部屋に入って来た。みんな軍服を着てレッドベレーを被っていた。その内の1人は白い粉の入った小さな入れ物を持っていた。そいつは指をその入れ物に入れ、その指を私の鼻に突っ込んだ。それからその3人は全部私を使った。次の日も使った。でもしばらくして別の連中が2人ずつ来た。何回で誰だったなんてことは分からない。私の性器は焼けるようにヒリヒリと痛み、すりむけた。とても疲れ、正気を失ったわ。最初の3人は私をレイプするのをお互いに見物していた。”
“I was there for three days. They said, ‘You don’t really think you’ll leave here alive, do you?’ and at times argued among themselves, ‘Should we kill her now?’ ‘No… let’s get what we need and then kill her.’ At times I heard another woman crying out from a nearby room, ‘Please, please… oh my God, this is the end of my life.’ On the last day at 6 a.m., the soldiers put a cover over my head, drove for some time, and then let me go on a street corner, completely naked.”
“私はそこに3日間いた。ヤツラは「お前ここを生きて出られるなんてマジには考えてねんだろ?」’って言ってたし。時々は仲間内で口げんかしてた。「今ここでコイツを殺さなきゃなんねーのか?」「違うだろ・・・やりたいことやってそんで殺しゃいい。」 時々もう1人の女性が近くの部屋で泣き叫んでいるのを聞いた。「お願いします、どうか・・神様、これが私の一生のお願いです。」 最後の日の午前6時、兵隊たちが私の頭に覆いを被せて、少し車で走り、ある街角で私は解放された。完全に素っ裸だったのよ。”
Commanders at the scene clearly were aware of the widespread rapes, but there is no evidence that they made any attempt to stop them. One opposition leader told Human Rights Watch how he was led out of the stadium by Lieutenant Abubakar “Toumba” Diakité, the commander of the Presidential Guard, past at least a dozen women as they were being sexually assaulted by red berets. He noted how Toumba did nothing to stop the rapes:
現場の指揮官は手当たり次第に行われているレイプを明確に認識していた。しかし指揮官がそれを止めさせようとして何か試みたという証拠は皆無である。ある政府反対派指導者は、どのように大統領護衛部隊の指揮官であるアブバカル・“トンバ”・ディアキテ(Abubakar “Toumba” Diakité)中尉にスタジアムから連れ出されたのか、どのようにレッドベレーに性的暴行を受けている少なくとも12名の女性の傍らを通り過ぎたのか、その様子をヒューマン・ライツ・ウォッチに説明した。その指導者はトンバがレイプを止めさせようと何一つしなかった様子に言及した。
“I saw lots of cases of rape. The opposition leaders were taken slowly out of the stadium, so we saw a lot. As we came down from the podium, I saw a woman naked on the ground surrounded by five red berets who were raping her on the grass. I saw other naked women there being taken away by the red berets [to be raped]. There were even more rapes outside the stadium. Just outside the stadium, where the showers are, there was a woman naked on the ground. There were three or four red berets on top of her, and one had pushed his rifle into her [vagina]. She was screaming so loudly in pain that we had to look and see it. All along that passage, there were about a dozen women being raped. Lieutenant Toumba was right next to us and saw it all, but he didn’t do anything to stop the rapes.”
“沢山のレイプを目撃しましたよ。政府反対派の指導者はスタジアムの外にゆっくりと連れ出されたので、その分私たちは多くを見ることになったのです。演壇から降りた時、グランドの上に5人のレッドベレーに取り囲まれた裸の女性がいるのを見ました。兵隊は彼女を芝生の上でレイプしていました。他にも裸の女性たちがレッドベレーに[レイプのために]連れ去られていくのも見ました。スタジアムの外でももっと多くのレイプがありました。スタジアムのすぐ外に、そこにはシャワー室があるんですけれども、そこの地面にも裸の女性が1人いました。頭の方に3人か4人のレッドベレーがいて、1人がライフルをその女性に[性器]突っ込んでいた。その女性は痛みで大きな悲鳴を上げたので、私たちも見ざるを得なかった。道すがらのありとあらゆるところで、おおよそ12人くらいの女性がレイプされていた。トンバ中尉は私たちのすぐ横にいて全てを見ていたのですが、レイプを止めさせようとは何1つしなかったのです。”
Responsibility for the Massacre, Sexual Violence, and Other Abuses
虐殺、性的暴力その他の虐待の責任
Based on the evidence gathered, Human Rights Watch found that the massacre and sexual violence committed on September 28 at the stadium appeared to be both organized and pre-planned. All those responsible, including those who gave the orders, should be held criminally accountable for their actions, as should anyone who tried to cover up the crimes and dispose of any evidence. That the killings, sexual violence, and persecution on the grounds of ethnicity appear to have been systematic suggests that this may have been a crime against humanity. As such, the principle of “command responsibility” applies. Those in positions of responsibility, who should have known about the crime (or its planning) and who failed to prevent it or prosecute those responsible, should be held criminally responsible.
収集した証拠を根拠として、ヒューマン・ライツ・ウォッチは9月28日に行われた虐殺と性的暴力が組織化され事前に計画されていた可能性がある、ということに明らかにした。命令を下した者も含めて全ての責任者は自分たちの行為に対して刑事責任を問われなければならない。犯罪を隠蔽しようとした者、証拠を処分しようとした者も同じである。民族性を根拠にした大量殺害、性的暴力、迫害が組織的であったようであるが、それはこの犯罪が人道に反する罪である可能性を示唆している。そのため“指揮命令系統上の責任”の原則も適用する。犯罪(若しくは計画)について知っていなければならない者、それを阻止しなかった者、若しくは責任ある者を訴追しなかった者で、責任ある地位にいる者は刑事責任を問われなければならない。
Human Rights Watch believes that independent criminal investigations leading to the identification and prosecution of those responsible, including those liable under command responsibility, are urgently needed. Among those whose possible criminal responsibility for the massacre and sexual violence should be investigated are:
指揮命令系統上の責任を負うべき者を含む責任者の特定と訴追につながる、中立な刑事的捜査が緊急に必要であるとヒューマン・ライツ・ウォッチは考えている。虐殺と性的暴力に対する刑事責任の容疑で捜査されるべき者には以下に掲げる者がいる。
Captain Moussa Dadis Camara, president of the CNDD: While Camara was not believed to have been present at the stadium on September 28, he was involved in trying to prevent the protest. All witness accounts said killings were carried out by members of the Presidential Guard, which Camara ultimately commands, and that the person in command of the red berets at the stadium was Camara’s personal aide de camp and head of his personal bodyguard, Lieutenant Abubakar “Toumba” Diakité. Evidence suggests that the Presidential Guard at the stadium came there from the Alpha Yaya Diallo military camp where Camara is based. Further, there is no evidence that Camara has initiated any proceedings to discipline or hold accountable any of his subordinates directly implicated in the massacre and rapes.
ムサ・ダディス・カマラ大尉、CNDD総裁:カマラは9月28日にスタジアムにはいなかったと考えられているが、彼は抗議運動を阻止する企てに関与していた。目撃者全ての証言は大量殺害が大統領護衛部隊によって行われたと言っている。同部隊の指揮カはマラが最終的にとっている。しかもスタジアムでレッドベレーを指揮していたのはカマラの側近であり、個人的ボディーガード責任者のアブバカル・“トンバ”・ディアキテ中尉だった。スタジアムにいた大統領護衛部隊はアルファ・ヤヤ・ディアロ(Alpha Yaya Diallo)軍基地から派遣されており、同基地をカマラは本拠地としている。更に虐殺とレイプに直接に関与していた部下の誰に対しても、カマラは懲戒処分若しくは責任を問う手続きを開始していない。
Lieutenant Abubakar “Toumba” Diakité: Many witnesses interviewed by Human Rights Watch have stated that Toumba was physically present at the stadium and in direct command of the Presidential Guard that carried out the massacre and widespread sexual violence there. There is no evidence that he made any attempt to stop troops from carrying out the killings or the sexual violence.
アブバカル・“トンバ”・ディアキテ中尉:ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた多くの目撃者は、トンバがスタジアムに物理的に存在し、そこで虐殺と手当たりしだいのレイプを実行した大統領防衛部隊の直接の指揮に当たっていた、と言明していた。部隊が大量殺人や手当たりしだいの性的暴力を実行するのを止めさせようとして、トンバが何か試みた証拠は全くない。
Lieutenant Marcel Kuvugi: Kuvugi is a deputy to Diakité and sometimes serves as Camara’s personal driver. Witnesses, including several opposition leaders, have said he violently attacked and repeatedly threatened to kill the political opposition leaders present at the stadium. The political leaders said that when they were taken from the stadium to a clinic for first-aid treatment, Kuvugi threatened to shoot them if they got out of the car and to throw a grenade at them, keeping them from getting medical treatment.
マルセル・クブギ中尉(Lieutenant Marcel Kuvug):クブギはディアキテの副官であり、時折カマラの個人的運転手をつとめている。政府反対派指導者数人を含めた目撃者は、クブキがスタジアムにいた政治的政府反対派指導者を襲撃し、繰り返し殺すと脅したと言っている。政治的指導者たちはスタジアムから応急処置のため診療所に連れられて行った時、車の外に出たら発砲して手榴弾を投げつけると、クブキが脅し治療を受けさせないようにした、と語った。
Captain Claude “Coplan” Pivi, minister for presidential security: There are conflicting reports about whether Pivi was present at the stadium during the massacre. Witnesses have alleged that he participated in attacks on the homes of opposition leaders on the evening of September 28 and in the violent attacks on opposition-dominated neighborhoods in the following days.
クラウデ・“コプラン”・ピヴィ大尉、大統領警護担当大臣:虐殺当時ピヴィがスタジアムにいたかどうかについては相反する報道がされている。目撃者はピヴィが、9月28日夜の政府反対派指導者の自宅に対する襲撃、そして翌日以降の政府反対派が多数派である近郊への暴力的襲撃に参加した、と申し立てている。
Captain Moussa Tiégboro Camara: As secretary of state in charge of the fight against drug trafficking and serious crime, Tiégboro commands the elite gendarme unit that took part in the massacre at the stadium. Witnesses have stated that Tiégboro was present. Witnesses have also said the gendarmes made several attempts to stop the protesters before they reached the stadium, in a few instances firing into the crowds and killing at least three protesters. Witnesses have stated that the gendarme unit then participated in the massacre at the stadium, though its members were less frequently implicated in murder and rape than were the Presidential Guard. At least 72 protesters were detained in the custody of the gendarme unit following the massacre, and those held by the unit said they were severely mistreated.
ムサ・ティエグボロ・カマラ大尉:麻薬密輸及び重大犯罪との闘い担当国務大臣として、ティエグボロはスタジアムで虐殺に参加した精鋭憲兵部隊を指揮している。目撃者はティエグボロがいたと言明しているし、また憲兵がスタジアムへたどり着こうとする抗議者を止めようとして、群集に向かって2~3回で発砲し少なくとも3名の抗議者を殺害するなど、様々な事を行っていたとも述べている。大統領護衛部隊に比べれば殺人とレイプへの関与の度合いが低いものの、憲兵部隊はその後スタジアムの虐殺に参加した、と目撃者は述べた。少なくとも72名の抗議者が憲兵部隊に拘束され、拘束された者は激しい虐待に遭ったと語っている。
Need for an International Commission of Inquiry and Criminal Accountability
国際調査委員会と刑事的説明責任の必要
Due to the serious nature of the crimes committed by Guinea’s security forces, particularly the Presidential Guard, on September 28 and on the days that followed, there should be a strong response from the international community. Human Rights Watch therefore calls upon the African Union, ECOWAS, the European Union, and the United Nations to:
9月28日とその翌日以降、ギニア治安部隊、とりわけ大統領防衛隊が行った犯罪の質の重大性を鑑み、国際社会は強い対応をとるべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチはアフリカ連合、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、EU、国連などに以下のことを求めた。
Support fully the international commission of inquiry into the events of September 28 proposed by ECOWAS and already established by UN Secretary-General Ban Ki-moon, to ensure that it immediately has the resources to carry out its investigation and promptly publish its results, and urge Guinea’s authorities to cooperate fully with this inquiry.
ECOWASが提案し、国連事務総長・潘基文が既に設立した、9月28日の事件に対する国際調査委員会が、その調査を実行し速やかにその結果を公表するための資金を直ちに獲得できるよう、全面的に支援すること、及びギアナ当局のその調査に全面的に協力するよう強く求めること。
Strongly urge Guinean authorities to ensure that prompt, independent, fair, and open criminal investigations take place into the crimes and their cover-up, leading to the fair and effective prosecution of those allegedly responsible in accordance with international standards, including those who gave orders or who are liable under command responsibility. Should the Guinean authorities fail to ensure such investigations and prosecutions, the Guinean government, the AU, ECOWAS, EU, and UN should fully support international investigations and prosecutions, including by the International Criminal Court (ICC) if the requirements of its statute are met. Guinea is a state party to the ICC, which gives the court jurisdiction over genocide, crimes against humanity, and war crimes committed on its territory. Following the violence on September 28, the ICC prosecutor indicated that Guinea is under preliminary examination by his office. Preliminary examination is a phase that may precede the opening of an investigation.
ギニア当局が行った犯罪とその隠蔽工作の命令を下した者、若しくは指揮命令系統上の責任を負うべき者を含む容疑者に対する、国際的基準に沿った公正で効果的な訴追に結びつく、速やかで中立かつ公正で公開された刑事捜査が行われるよう保証することを、ギニア当局に特に強く求めること。ギニア当局がそのような捜査や訴追を保証しない場合、ギニア政府、アフリカ連合、西アフリカ諸国経済共同体、欧州共同体、国際連合は、国際刑事裁判所(ICC)規定の必要条件に該当するならICCによって行われることを含めた、国際的捜査と訴追を全面的に支持するべきである。ギニアはICCの締約国であり、ICCは締約国領土内で起きた虐殺・人道に反する罪・戦争犯罪に関して裁判権を持っている。9月28日の虐殺と手当たり次第に行われたレイプを受けてICC検察官は、ギニアが検察官事務所によって予備調査されているということを明らかにした。予備調査は捜査開始に先行している可能性のある局面である。
Human Rights Watch plans to release a full-length report on its findings. Human Rights Watch is now releasing a summary of its core findings because of the gravity of the abuses committed and the need for immediate international action to bring the perpetrators of the abuses to justice.
ヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした事実に関する全面的なレポートを公表する計画である。しかし行われた人権侵害の重大性と、人権侵害を行った者たちを裁判に掛ける国際的な行動が緊急に必要であることから、ヒューマン・ライツ・ウォッチは現在調査での中心的な発見事実の要約を公表している。