れいの如く

朝鮮半島関連の所感を書きます。

北朝鮮帰還事業60年 講演と鼎談

2019-12-08 19:36:08 | 所感(集会、講演等)
 12月10日から16日までは、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」ということで毎年、各地で様々な関連イベントが行われます。
 しかし、その内容を見るとやはり「拉致問題」に関するものが大半で、帰還事業や北朝鮮内部の人権、脱北者についてのものはあまり見られません。
 そんな中で、北朝鮮の生命と人権を守る会主催で行われた「北朝鮮帰還事業60年 講演と鼎談」は意義深いイベントの一つといえるでしょう。
 ということで筆者は7日土曜日、会場である東京・神保町の専修大学に向かいました。
 イベントは二部構成になっていて、一部が講演、二部が鼎談でした。
 開演時間の13時30分になると、さっそく第一部の講演が始まりました。
 講師は菊池嘉晃氏。『北朝鮮帰国事業』(中公新書)等の著書のあるジャーナリストです。講演内容は「ソ連・東欧機密文書から見た実像と悲劇の責任」で、近年公開されたソ連や東欧諸国の機密文書を通じて北の内情を見るというものでした。
 60年代から90年代に入る頃までの日本のメディアが伝える北の状況は、初期は“地上の楽園”、その後はそれなりの社会主義体制の国というものでした。
 しかし、帰還してかの地へ行った人々が伝えたのは周知の通り悲惨なものでした。
 これらを裏付けるのが今回紹介されたソ連や東欧諸国の機密文書です。これらの国々では、早くから北の実情を正確に把握していたということが判明しました。
 かねてから、北朝鮮が帰還運動を奨励したのは労働不足を補うためといわれていましたが、このことについてもソ連の機密文書に記されていました。
 その他、北の実情が記された様々な文書が紹介され、個人的に得ることの多い講演でした。
 第二部の鼎談では「悲劇の拡大を防いだ関貴星著『楽園の夢破れて』」をテーマに、評論家の三浦小太郎氏、関貴星氏の長女でエッセイストの呉文子氏、そして菊池嘉晃氏が議論を繰り広げました。
呉氏の語る著書を刊行したゆえの父の苦難、そして自身と夫君が受けた酷い仕打ち……等々はただ胸が痛むばかりでした。
そして著作は世間から全く無視され、帰還事業による悲劇は防げませんでした。
その後の質疑応答まで含め、帰還事業とその背景そして時代的限界等、考えさせられることが多々ありました。

 帰還事業が始まってから60年、拉致が始まってからも同様の歳月が流れました。その間、自分たちは何をしたのだろうか、そして今後どうすべきか、今回の講演や鼎談を聞きながら、様々な事柄を考えました。


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