SMILEY SMILE

たましいを、
下げないように…

優しい雨

2005-06-11 04:32:21 | 
霧のような雨。

ある場所で目的を果たした帰り道。

私は、傘をさすのが嫌いだったんだけれど、彼女がいたから仕方ない。

やさしい雨だ、こんな雨のような人間になりたい。

私の優しさなんて、ニセモノだ。ただあいまいに微笑んでいるだけの

ツクリモノ。

彼女は珍しく寡黙で、大人しく歩いている。赤い傘が邪魔で顔が見え

ない。見せまいとしているの?

私は自分の傘をたたんだ。彼女の手を取り、持っている傘も取り上げ、

顔を覗く。

泣いていた。

それは、前の彼氏への思いか。




「どうしても前の彼の結婚式を見てみたい」

言い出したら聞かない彼女。私も特に反対する理由もない、正直そんな

ことどうだっていいのだ、昔の話じゃないか、それをまだ彼女が引き摺

っていようといまいと、私には関係がない。今、お互いに愛し合ってい

るのは確かなのだから。単純に信じている。いずれ結婚しようとも思っ

ているんだ。だから、

「一緒に行こう」

とだけ言って教会まで付いて行ったんだ。




静かに泣いている彼女。そっと手を握り、赤い傘の下、ふたりキスをした。

彼女はこのキスをどう思ったろう。ただ、泣き止んで欲しいだけだった

んだ。しかし思いとは裏腹に、彼女は子供のように嗚咽して泣き出して

しまった。

こんな風に彼女を泣かせる前の彼氏の存在に少しだけ嫉妬を覚えた。私に

してはめずらしいことだ。所有欲の希薄な私にしては。

子供をあやすように頭を撫で、背中を擦り、とめど流れる涙をぺろりと

舐めた。いとおしい。愛だ恋だなんて、そんな定義を越えて、この人の存在

をまるごと慈しむ気持ちでいっぱいだった。


紫陽花が鮮やかに色づいているのが目に入った。

ゆっくり話しかける。

「大丈夫、大丈夫、しあわせになろうね、しあわせになろうね」

自分でも意味のわからない言葉が出てきた。とにかく、気持ちを落ち着か

せないと。

「ほら、紫陽花が綺麗だよ」

彼女は、白から青に変わりつつある紫陽花のグラデーションの美しさに

気を取られ泣くことを忘れたよう。

「紫陽花の色はなぜ青だとかピンクに分かれるか知ってる?」

と私は彼女に囁いた。

彼女は当然、と言うようにポツリと答えた。

「土の酸度」

「そうそう、かしこい、かしこい。で、君は何色が好き?」

「・・・淡いピンク、かな」

私は、うふふ、と笑うが早いか、彼女を強く抱き締めた。

「痛いよ!殺す気?」

彼女の驚きと嬉しさの交じった声。転がる赤い傘。

私は弛めず、頬にキスをした。

「ほら、ピンクになった♪」

そして優しい雨は、僕らを包む。








原作:あげはさんの優しい雨




SING,THINK,SINK

2005-06-10 14:15:08 | 
「最後に問ふ。弱さ、苦悩は罪なりや。」


という「如是我聞」の悲痛な叫びに心痛める。

言下に否定することもできよう、でも、太宰さんはそんな否定の言葉も

容易に想定してただろう、得意の先回りで。

雨音を聴きながら、今更ながら太宰さんの死を悼む。

うたかた

2005-06-10 14:01:56 | 
心地よい疲れと、軽い酩酊感

日付の変わった午前1時

暗闇の坂をふらりと下る

月は満面の笑顔の口のよう、にっこり

泡のように浮かぶ思いの数々をつなぎとめる

携帯にメモ

「忘れていいもの、いけないもの」
「変われと命じる」
「地力」
「清濁、聖性」
「沈んでしまえばいい」
「同質嫌悪と異物排除」
「平易な真理、難解な誤魔化し」

必死のメモも不可解

ごたごた並んでいる

いずれ芽、出づることありや?

10950日間の真実

2005-06-10 13:36:14 | 
世界に別れを告げる日に
人は一生をふりかえって
自分が本当に生きた日が
あまりに少なかったことに驚くだろう

指折り数えるほどしかない
その日々の中の一つには
恋人との最初の一瞥の
するどい閃光なども混じっているだろう

<本当に生きた日>は人によって
たしかに違う
ぎらりと光るダイヤのような日は
銃殺の朝であったり
アトリエの夜であったり
果樹園のまひるであったり
未明のスクラムであったりするのだ

  ~茨木のり子 「ぎらりと光るダイヤのような日」


日付の変わった6月9日
サッカーのせいでガラガラの、終電近くの田園都市線で開いたページには
茨木さんのこんな詩が。
「もっとしっかりなさい」
と言われているようでもあった。
一万九百五十日間に幾日「ぎらりと光るダイヤのような日」があったろう、
と自問。
そしてこれから・・・。
確かにそれはあった。指を折ってみる。
っでも、私はそれを愛撫するだけだった。
生もうとしただろうか?

こんな詩もあった。



樹木はある日ひとの脳天をつきやぶる
それはとうとうつきやぶってしまったのだ
ああ その歓喜を思え!
この事件はもう
いかなる批評も受け付けぬ
この事件はもう
いかなる判決も受け付けぬ
懺悔とは遠いところ
だらけた手記とも遠いところに成立する
かかる美しい行動をわたしたちは見るか
わたしたちの周囲に

  ~「行動について」



「気まぐれな種子」が伸びて僕を突き破る
そのことを想像して戦慄

私は、ますます私らしくなる、なっている
その恍惚と不安の海に浮かんでいる
ぷかり、と



ケーキ2話

2005-06-10 03:51:29 | 
1話

久し振りのデフェール。
モンブランとバナナチョコとマンゴーホワイトチョコ・・・。
んー、名前わからん!
改めて安食さんのセンスに驚嘆しました。
モンブランの口溶けの良さは最高。
「軽い♪」
コレどうやって作るんだろ、と首をかしげるほど。アンジェリーナとは対極の軽さ。

チョコとバナナのヤツは、バナナ、キャラメル、チョコ、コーヒー、の味・香り・食感のハーモニーが素晴らしい!一番下のショコラのビスキュイジョコンド?に沁みこんだたっぷりの珈琲ったら、アナタ、お口の中で味覚のオーケストラを指揮をするんですよ。バナナ嫌いの私でもぺロりですわ。

えと、あとは、マンゴーとホワイトチョコのムースをタルトに乗っけたヤツですね。しつこくないマンゴーソースとフレッシュのマンゴーにホワイトチョコのムースが爽やかに調和。で、タルト地がまた美味しい!杉野さん並の出来ですな。香り高く贅沢にさっくりといけます♪




2話

今日オープンの渋谷フードショウの新店、オリジンーヌ・カカオ、コンフィチュール・タカギ、レトルダムールを見てきた。
堀江さんのレトルはさらっと見て、木さんのグラスソルべは試しに購入。ワサビと仏産赤桃。まぁまぁかなー。でもソースやお酒のトッピングってのは新しいかも。
本命は、川口さんのチョコ♪
ケース内のケーキを凝視、ふと、目を上げると川口さん本人がっ!さすが川口さんや。他の店のシェフはいないのにこの方ったら、閉店までいるとは。
川口さんは日本のショコラティエの草分けで、和光でずっとシェフをしていたんです。全然偉ぶったトコがなく謙虚さがその柔和な笑顔から伝わってくる。こんな人が作ったショコラが不味いわけがない!この方のミルクチョコのケーキは今までのチョコケーキの中で最高級の味でしたよ♪
で、マカロン好きの間では有名な最中みたいに大きなマカロン購入。かぶりついてます。ピエのネチ感がたまらん・・・。もう少しカリっとしてたらいいなぁ。でも、私の中で№3に入ります。「また来ます」と心に誓ったのでした。次は自由が丘の本店(スイーツフォレストにあり)かなぁ。






三十路の第一歩

2005-06-09 03:05:21 | 
無事、30になりました。

よくもまぁ、こんな男が30まで大過なく?生きてこられたと思います。

ひとえに、両親と奥さん、親族、そして皆様のお陰であると、大袈裟で

なく思っております。

20代にひたすら蓄積してきたものを30代で活かせたらと思います。

ちょうどいい区切りになりました。



「飛べる?」

「うん・・・」



飛べそうです。

飛びたいのです。

高いトコは苦手なんですが、怖いもの見たさ、飛んでみたいんです。

そこからは、なにが見えるのだろう。



さぁ、一緒に飛ぼうか・・・?




たまごを抱える男

2005-06-08 07:43:57 | 
自分の中から湧きだす言葉のリズムがある

街中で不意に訪れる

これはなんだ?

日本人の生まれ持った七五調?

いや…なんだろう、太宰を読みすぎたか…口述筆記な気分

漢詩独特の抑揚にも似ている

まだ言葉にならない、仮歌のようなもの

実を結ぶことは稀な、言葉の苗、新芽

月見ル君想フ

2005-06-07 02:39:54 | 
デヴュー以来、聴き続けている朝日美穂さんとHARCOこと青木慶則さんのライブに行ってきました。
もう8年近く聴いているのに生で聴くのが初めてなんて、何たる怠惰。今回なんと勿体無い事をしていたんだと深く後悔しました。
青山ピアノナイト~三日目~GROOVE DRO(P)IANOと題されたピアノ弾き語りライヴ、まずは朝日さんから。
先日まで声帯を痛めていたらしく、ハスキーヴォイスで本調子とは言えない状態だったようです。しかしまた一味違った朝日さんの声もよかった、ということで私としては大満足。あの名曲「唇に」を聴けたことだし。しっかり泣かせていただきました。鼻水たらして♪
朝日さんのバラッドはココロに沁みます。情感の込め方に天性のものがあるんでしょう。
珠玉の名曲群「しあわせをうたおう」「Daisy」「YourSong」などを一聴すればわかります。

この人にしか表現できないモノがある。

いつだって、芸術の一級品は人に希望を与えてきたんだ。
そんな言葉さえ浮かんでくる。


下記のミニアルバム『HOLIDAY』所収「YourSong」のピアノはHARCO。バラバラに聴き始めたこのふたり。
いつのまにか?仲良しさん。よかったよかった。




HOLIDAY
朝日美穂
インディペンデントレーベル

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ピアノの夢

2005-06-06 14:05:28 | 
全く弾けないぼくが、鍵盤を押していたら、曲になった。

とても単純な旋律を繰り返し繰り返し、少しずつ変化をつけながら。

その曲はエヴァンスの「PEACE PIECE」や「YOUR STORY」に近かった。

ぎこちなく、ゆっくりと、不器用な手つきで弾いたその曲にひとりココロ

を震わせていたような。後ろに立っていたのは、エヴァンスだったのかな、

やさしく見守っているような気配を感じていた。彼が弾かせてくれたに違

いない。



時々ピアノを弾く夢をみる。なんでだろう。

適当に弾いて曲になってしまう。トリオで演ったりする。

都合のいい夢だ・・・。でも、気持ちいい夢。




作法

2005-06-04 05:16:17 | 
一枚のカードのホントが知りたくて、裏返すことを覚えた

モノゴトが少しだけわかるようになってきた

でも空回りする思いは、キリがなく

「このカード実は二枚重ねなんだ」とか

「あぶり出しになってんだ」とかなんとか

知ったような理由つけて剥がす、燃やさんとす

散々辱められたカードの残骸眺め、思いは千々に乱れ

哀しいという思いをまた、覚えた

竹の理由

2005-06-03 08:49:38 | 
テンプレ変更。

「おおっ」って思いましたよ。

自分じゃん、て。

takeは、竹ですからね。竹林の中(=内)


「竹里館」  王維

獨坐幽篁裏   竹やぶの奥、独りきり

弾琴復長嘯   琴を弾いたり詠ったり 

深林人不知   こんなトコまで入ってくる人はいないよ 

月来相照    ただ、お月さんだけは僕を照らすんだ  (拙訳)


篁から見上げる空は笹に遮られていて、見えないけれど、隙間から

滲むような蒼が見える。

そんな気がする。