ケストナー

2019-08-15 18:40:29 | Books
こんな経験はだれでもあるだろう・・・
本屋さんで本を物色していたり、お目当ての本を探しているときに、探す目的としていたテーマ・分野とは全く違う本の表紙がふと目に入り、妙に気になって、買ってしまう。その本のことは全く知らないのに、本の方が「おれを買え お前に買われるためにここにいるのだ」と言っている気がしたから。そして読んで分かる。これは自分にとても大事な本であるってね。
今回もそうだった。ブックオフで、電車の中で読むための文庫本を買うつもりだったのだが、通りかかった児童向け書籍コーナーに並んでいたこの本の背表紙がふと目に入った。ケストナー「ナチスに抵抗し続けた作家」。児童向け書籍に関心持つような年齢はもう過ぎているのに、どういうわけかこの背表紙に目が吸い寄せられ、そして買ってしまった。

ケストナーは「飛ぶ教室」「二人のロッテ」「エミールと探偵たち」といった児童文学作家として著名だけれど、もともとは詩人として世に出た人だったんだな。
そしてあの時代にケストナーがどれほど鮮烈な生き方をしたか。ケストナーと同時代のトーマス・マンやブレヒトがどんな生き方をしたかは私も知っている。トーマス・マン、ブレヒトとは違う生き方・・・つまりあの時代のドイツにとどまり、ナチスの目をかいくぐりながら、ナチスへの批判を続けた。ナチスにつかまらずに済んだのは、尋常ではない幸運とまわりの必死の助けがあってで、ブレヒトよりケストナーというつもりはさらさらないけれど、強い意志と勇気、そして知性には多くを学ばせていただいた。それにしても児童書でくくるには、レベルの高すぎる一冊だったな。

こんな時代に生きる私たちだから。
ケストナーケストナーケストナーが、このところずっと頭の中で渦巻いている。

柳美里著 「飼う人」

2019-06-19 20:46:42 | Books
柳美里さんにセレクトしていただいた6冊の中で最後に読んだ本が、柳さん自身の著書「飼う人」。
柳美里さんの文体は静けさの中に凄みがあって、すぐに引き込まれてしまうのだけど、この作品もそんな傑作の一つだと思う。
それにしても切ないお話の連続だったなあ。特に最後のエピソードね。
人間って不器用で、不器用だから人間。なんて考えますね。

すべての見えない光 by アンソニー ドーア

2019-06-17 22:53:33 | Books
柳美里さんにセレクトしていただいた本の5冊目
第二次世界大戦下のヨーロッパの街と人について、これほど印象深く描いた小説ってなかなかないだろうなあ
独特の詩的な文体がなあと唸りながらの読了
ところどころユーモアも感じられるけど、これは暖かさというより、極限状態に置かれた人間の心の一面ではないかと思う


未来への周遊券

2019-05-29 12:40:32 | Books
柳美里さんにセレクトしていただいた本の4冊目。最相葉月さんと瀬名秀明さんの対談集。
またまたうれしいことに最相葉月さんのサイン入り。
瀬名秀明さんは『パラサイトイブ』の作者で、柳さんも理系は大の苦手なのに『パラサイトイブ』にとても感銘を受けたことを書いておられたな。

『未来への周遊券』もすごく良いお話満載で、読んでよかった本でした♪
理系人間でなければ未来への希望は持てないというお話に思えるかもしれなけど、決してそんなことはないことが、サン=テグジュペリについて述べているところなどで示されています。
未来への希望がもてないとされる現代。逆説的ではあるが、自分の存在に関する謙虚さと、勇気が未来への切符をもたらしてくれる。
ニーチェのニヒリズムにも考えが及びます。それは一部の恵まれた人間だけが得られる切符ではない。

「違和感なくして創造なし」もその通りだと思う。人の違和感への対応は3通りだと思う。違和感を自分の中で受け入れて創造へと昇華させるか。違和感のあるものを見ないように、考えないようにするか。違和感をもたらすものを攻撃するか。

未来国家ブータン by 高野秀行氏

2019-05-26 13:21:49 | Books
実は高野秀行さんの著書では前に「未来国家ブータン」を読んでいて、「ソマリランド」を読んだ後、「ブータン」を読み返してみた。

ソマリランドと同様に、ブータンがほかの国とはまったく異なるやり方で国家建設を進めてきたことが、ブータン国民からの視線で描かれていたところはさすが。
しかし、日本を含む先進諸国が幸福大国になる上でブータンを参考とするのであれば、ブータンでの調査研究をもっともっと進めなければならないことも指摘している。
私が大学院の研究室で一緒に勉強していた方に、まさにブータンのGNH(Gross National Happiness)の研究に取り組んでいる方がいる。これからの研究成果に期待しています。

高野秀行著「謎の独立国家ソマリランド」

2019-05-24 19:46:45 | Books
「ヘミングウェイなんかにかぶれちゃってさ♪」ハマッ子なら誰の歌かわかりますよね~(#^^#)

私も大学時代、ヘミングウェイにかぶれてた時期あるけど、いつかアフリカ旅行したいなあなんて思うのはそのせいだと思う。
で、柳美里さんからセレクトいただいた本の三冊目として楽しく読んだのは、高野秀行さんのこの本なですけどね。
高野さんは「そこまでやるか!」と読者を仰天させることで知られるノンフィクション作家で、この本も御多分に漏れず。
取材のために海賊をプロデュースすることを構想するくだりでは、高野さんなら本当にやりかねないと思いました(-.-)
しかし、そこまでやるかと突っ込まれたら、ここまでやらないと本当のところは分からないのだというのが高野さんの答えだと思う。
ソマリランドにおいて、国連からのお仕着せの形ではなく、自分たちで独立国家をつくるためになにが行われてきたか。

ヘミングウェイが描いたアフリカも、一旅行者の視点からでしかない。

舞台の水 太田省吾氏

2019-05-21 00:58:28 | Books
柳美里さんにセレクトしていただいた本の2冊目
この言葉はメモしておこう。感動とは生きる私たちにとって実につつましい、ただ在ることを求めるという、ひっそりした希い。


どんな仕事に携わる人でも、一人一人が感動してもらえる仕事を目標とするなら、いい社会ができる、なんて考える。少なくとも自分の目標としたい。

空にみずうみ

2019-05-14 09:44:42 | Books
柳美里さんにセレクトいただいた本6冊の最初に読み始めた、佐伯一麦さん著「空にみずうみ」。
佐伯さんのサイン入り♬♪♬。佐伯さんの本はこれまで読んだことがなかった。
本の読み方も色々だけど、私の場合は読み始めのところで心に火がついて、夢中になって読み進めることが多い。
心に火がつかなければ、「つまんないや」と読むのをやめてしまう。
実は、今回はなかなか心に点火せず、困ってしまった。
もし柳美里さんにセレクトいただいたということがなければ途中でやめていただろう。
柳さんがこの本を私に薦めたということの意味が必ずあるはずだという考えながら読んでいた。
半分くらいまで読み進めたころに、読み方がようやく分かってきて、「鑑賞」することができるようになった。
この本に描かれている世界は、心に火をつけてというより、静逸な生き方。決して怠惰ではなく、むしろまめに生きているけど、心は静逸で美しい。
その美しさを鑑賞する読み方をこの本で学ぶことができた。
そして最後の締めくくりに大きな感動。
静逸な生活の奥底には、実はあの日のことがあることは、途中まではそれとなく匂わす程度の書き方だったけど、透明感のある文章が、最後の最後に美しい心の奥底にあるものを悟らせてくれる。
こういう本はこれまで読んだことが無かった。柳美里さんのセレクトのセンスにも感動です。
静逸な生き方・・・こういう生き方もいいかもね。



読書記録(11月20日)

2018-11-21 17:30:19 | Books
池井戸潤さんの小説は全部読んでいます。
一番新しい下町ロケットヤタガラス 一気に読みました。
ドラマ化されているようですが、テレビは一切見ない生活なので・・・
期待通りの面白さ。池井戸潤さんは裏切りません。
作品の文庫本をポケットに入れておくと、電車での移動時間も駅の待ち時間もとても楽しい時間となる。池井戸さんはそんな作家の1人です。
読んでいてとまらなくなって、駅についても、ホームのベンチに座って読み続け、さらに駅前のターリーズに移って読了。なんてこともありました。
電車の中で目頭が熱くなって、あわてて花粉症のせいみたいに、ハンカチを鼻と目にあてたこともありました。
ベタではありますが、だから安心して楽しめるってのもあります。
池井戸潤さんの作品はどれもおすすめです。

裏方

2018-10-27 14:48:28 | Books
広島がんばれ~

愛甲猛さんの「球界の野良犬」を読んでよかったことの1つは、球界の裏側、球界運営の実態やその中で現れる選手の素顔が詳しく述べられていたこと。ロッテが一時期使用していたあのピンクのユニフォームは最悪だなと思ってたけど、ロッテの選手も最悪と思っていたというくだりには爆笑した。ロッテの本拠地が川崎球場にあったころのお話も楽しかった。
もう1つは、高畠コーチのことが述べられていたこと。「選手時代、数多くのコーチと接したが、最も影響を受けたのは故高畠導宏さんだ。」「左打者である高畠さんに、左打者の極意を教えてもらった気がする。」
”仇敵”と呼ぶほど広岡GMと折り合いが悪く、ロッテを自由契約となった愛甲さんが中日に入団したことも、中日コーチに就任が決まった高畠さんの声がけがあったからか。
落合さんは選手としても指導者としても輝かしい実績を残しているけど、どうしてもひっかかるのは落合さんの著書に高畠さんのことが全く出てこないこと。高畠さんのことを描いた「甲子園の遺言」で、著者門田隆将さんが、執筆にあたり落合さんに取材を申し込んだが、断られたとか。しかし愛甲さんの著書にも、落合さんの打撃に高畠さんの影響が大きかったことが述べられている。
その辺り、落合さんにじかに聞いてみたい気持ちもあるが、愛甲さんなら事情や機微をご存知かもしれない。
「偉ぶらず、常に一歩引いていた」と愛甲さんは高畠さんの人柄を述べている。

Are you happy?

2018-10-20 12:54:54 | Books
私は矢沢永吉さんのファンではないけど、好きな曲はいくつかあって、「成り上がり」も読ませていただいた。私が10代のころ、キャロル、矢沢永吉さんは社会現象といえる大きなムーブメントを起こしていて、「成り上がり」もムーブメントをさらにブーストしていた。(矢沢さんが60歳を過ぎたころ、知り合いの女の子が「矢沢永吉さんってサルみたいな顔したおっさんだけど、歌を聞いたらむちゃくちゃいい」と言ってて、「おいおい、永ちゃんになってことを」と思ったけど。(^-^;)
で、最近、「成り上がり」に続く自伝「Are you happy?」を読んで、「成り上がり」も読み返したけど。
元気もらえますね。男一匹が生きていく上で、敵はどうしてもできるし、腹立つことはたくさんあるけど、この2冊には本当に元気づけられる。
あと、この2冊読んでると、横浜がさらに好きになって、横浜に住んでてよかった、なんて考えます。若かりし頃の永ちゃんが活動していた「タクト」も除却解体されて今年新ビルが建ちました。ったく何とかならないのかと思う。都市プランナーとして、私がもっと何とかしないといけないのか。

レインツリーの国

2018-10-09 14:52:17 | Books
有川浩さんのレインツリーの国
図書館戦争の1エピソードを書き下ろした作品と著者自身が述べているけど、図書館戦争よりこちらが好きかも。
三匹のおっさんとその続編、阪急電車も好きな作品だけど、この作品が自分の中で有川さんのベスト。
障害者との関りを描いたというより、男女の繊細な心を描いた恋愛小説として推したい。

読書記録(平成30年4月)

2018-04-16 16:53:05 | Books
4月は楡周平さんの小説を10冊ほどまとめて読みました。
〇プラチナタウン
〇和僑
〇ミッション建国
〇象の墓場
〇宿命 ワンスアポンナタイムイントウキョー
〇血戦
○ラストフロンティア
○介護退職
〇砂の王宮
〇Cの福音
きっかけは仕事でお世話になっている方から「プラチナタウン」を勧めていただいて、読んでみたら結構面白かったからなんですけどね。
一番面白かったのが、宿命と血戦かな
ハードボイルドものは凡庸で退屈だけど、社会ものはとても面白い。