とらで、うまんなんだよな
つまらない冗談
それに、出来る位には
遥か彼方の記憶
あの子が、野良として
運良く長生き出来ていても
きっと半世紀は前に
亡くなっている筈のいのち
サイコなおまえだから
口ほどになく
直ぐ気分は、変わっていた
何しろ、翌日
また、こいぬを拾って
かあさんに怒られて
また、捨てに行った位
ただ、そう
例えば、小さないのちを
暴力的に潰そう
いや、違うな
潰してしまった後
後悔の向こうに
あの子が居た事は
確かだったと思う
小さな虫を潰して
そのいのちの儚さ
そして、おまえの無慈悲
その事の痛み、哀しみ
その向こうには、必ず
あの子のいのち
おまえは、多分
学齢期になってからは
殆ど、人前では
泣かなくなったと思う
泣いてばかりだった
馴染めない幼稚園
家では、かあさんが
抱き締めてくれても
外では、みんなから嘲られる
それで、泣かなくなれた
でも、もちろん
情けないおまえは
隅っこで、めそめそ
だけど、確かに
あの時だけは
夕暮れの
人っ子ひとりいない
土手道だったから
息を切らして
立ち止まったあの時
あの時だけは
膝に手をついて
…ただ、嗚咽
なんでだろう
あの時だけだ…