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日記、日々の想い 

あの夏,父の死…

息が、切れそうで
止まりかける
でも、止まらない
止まれないから
止まっては、いけないから
こころを、鞭打つ
歩く、一歩でも
いや、走らなければ
とにかく、走れ
あたまは、まっしろだ
何にも、考えられないよ
…あの、さっきの
あの、先生の言葉
「お父さんが、
 危篤だそうだ」
「早く、帰りなさい」
その先生の言葉が
ただ、ただただ
まっしろなあたまを
へ巡っていたんだ
もう、息も
絶え絶え
でも、意味も失せて
音の目眩になった
先生の言葉が
この、息も出来ない
そんな自分を
それでも、容赦なく
ただ、打ち据えてくる
…いったい
自分は
あの先生の言葉のあと
なんて、答えたんだろうか
席に、戻って
荷物、まとめたんだよな
でも、どうやって
教室を、廊下を
昇降口を、校庭を
校門を、出たんだろうか…
ただ、そこからは
切れる息
迸る汗
もどかしい、脚の進み
中学三年生の、夏休み
受験対策の
全体補修授業だったんだ
結構な猛暑で、でも
不意打ちの、帰路
からからの喉
覚えているのは
それだけだ…
思い出せるのは
それから
居間の入り口
立ち尽くす自分
切れた息、喘ぎ
吹き出す汗も
拭うこともしない
荷物を、置くのも
忘れていたんだよな
振り返る母
少し,咽び泣くように
絞り出した言葉
「お父さん、
 死んじゃったんだよ」って
その向こうに
敷かれた布団
上掛けを掛けられて
横たわっている,父
白布
蝉が、
鳴いていたかも知れない…


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