多摩爺の「旅のつれづれ(その29)」
絶景の宝石箱 ムカつく半島(山口県長門市)
昨日朝、BSで朝ドラを見た後、
引き続きで火野正平さんがお元気だった頃を振り返る「こころ旅」を見ていたら、
なんと、故郷山口の「角島大橋」を訪ねた回が再放送されていた。
10分程度のダイジェストだったが・・・ 懐かしくて、食い入るように見入ってしまった。
スタートはJR美祢線の於福(おふく)駅で、JR山陰本線の特牛(こっとい)駅まで電車で移動し、
国道191号線(通称・北浦街道)から県道275号線を経由して、
角島へ向かう橋を渡る手前で、午前中の放映は終ったが、
久しぶりに故郷の海を見たので・・・ この界隈の面白い地名について紹介させてもらいたい。
まず、起点となった於福(おふく)駅の地名の由来について、詳しいことは知らないが、
古文書に記されているようで、なんとなく縁起が良い地名のように思う。
ところがいま、その於福駅のある界隈が大変なことになっている。
瀬戸内海と日本海を結ぶJR美祢線が、一昨年の豪雨で橋梁が崩落して不通となっていて、
復旧工事に58億円と5年の歳月がかかるとの見通しがあり、併せて河川の改修工事もあるので、
10年ぐらいは復旧が無理とされいて、瀬戸内地域(山陽小野田市)と日本海地域(長門市)の間を、
1日9往復する代行バスが住民の足となっていて、小さな集落だが大変な事態が続いている。
続いて電車を降りた正平さんが、目的地の角島に向けてチャリオ君に乗って走り出した、
特牛(こっとい)という地名だが、初見で読める人はまずいない・・・ 極めて難読な地名だと思う。
特牛という文字から、畜産が盛んで和牛の生産地か、それとも酪農の町かと思いきや、
牛とは縁も所縁もなく、漁業を生業とする港町だというから・・・ さらに驚く。
かつては漁師の妻や母たちが、漁港に上がった魚を大きな缶に詰めて、
特牛駅から山陰本線に乗って下関まで行商に出かけ、下関市民の胃袋を支えてくれた、
通称「カンカン部隊」と呼ばれるオバチャンたちが・・・ たくさん住んでいた町でもある。
そして特牛駅から、長門市方面に5つ進んだの長門古市駅の北に広がる半島に、
10年ぐらい前にCNNが選ぶ「日本の最も美しい場所31選」に選ばれた、
崖っぷちの海から延びる鳥居で有名になった「元乃隅(もとのすみ)神社」があるんだが、
ここの地名が「向津具(ムカつく)半島」だから・・・ ちょっと笑ってしまう。
なお、向津具(ムカつく)は、昔からの地名のようだが、
この半島には、見なきゃ損するような絶景が点在しているから、
ハッキリ言って・・・ 感動することはあっても、ムカつくことはあり得ない。
まずは前述の「元乃隅神社」だが、鳥居の突端の崖っぷちは、潮や波のタイミングにもよるが、
日本海の荒波が崖下の海蝕洞から天空高く吹き上げる、国指定の名勝「龍宮の潮吹き」があって、
「元乃隅神社」東には、北長門のリアス式海岸が一望できる絶景の「千畳敷」が広がり、
西には日本の棚田100選に選ばれた「東後畑棚田」があり、潮風を受けた稲穂が揺れている。
また、半島の突端にあたる「川尻岬」は、本州の最西北端なんだが、
崖っぷちで釣り糸を垂れると、突然高波が襲ってくるスリルと絶景と釣りが楽しめる釣り場で、
怖いもの知らずの太公望だったら・・・ 一度は訪れたい、穴場の釣りスポットでもある。
そしてもう一つ・・・ 「元乃隅神社」には、ちょっとした拘りがあって、
以前は「元乃隅稲成(もとのすみいなり)神社」と呼ばれていたが、
参拝者に名称を覚えてもらいやすくするため、
2019年1月から「稲成」の二文字がなくなり、現在の名称「元乃隅神社」になっている。
神社本庁によれば、神社の改名は基本的には行わなれないらしいが、
そもそも地元の網元さんが、枕元に現われた白狐さんのお告げによって建立された神社で、
創建時から宗教法人格を保有してない個人事業であって、123基の鳥居も個人の所有物なので、
この国の法律によれば、ちょっと驚くが課税対象の神社ということになっている。
少し前まではそのように聞いていたが、いまもそのままなのかどうかは分からないが、
宗教法人格を保有したとは聞かないので、たぶんそのままだと思う。
なんとなく釈然としないが、これって事件を起こして宗教法人格を取り消された某団体と、
位置づけというか扱いは同じだから・・・ それを知ってて訪れていたら、
あくまでも気持ちの持ちよう次第だが、「元乃隅神社」はたんなる観光地であって、
恭しさを感じることはないかもしれない。
また、以前の名称に使われていた・・・ 稲成の文字にも拘りがあったようで、
世の中一般的には稲荷だが、ここでは「荷」ではなく「成」の文字が使われていたんだから、
拘りもここまで来ると・・・ 有りがたいか、どうかは別にして、
なかなかの頑固者といった方が、良いのかもしれない。
因みに「荷」じゃなくて、「成」の文字を使ってる神社は、
私の知る限り、島根県津和野町にある「太皷谷稲成神社」だけだったと思うが、
こちらは津和野藩の殿様が、願望成就・大願成就などの意味から、そのように命名したらしいが、
「元乃隅神社」と「太皷谷稲成神社」の間には、なんの繋がりも関係性もないらしい。
以上、生意気ながら・・・ 長々と蘊蓄を垂れてしまったが、
魅力タップリの「向津具(むかつく)半島」に興味のある方は、訪れていただければありがたい。
また、奈良で凶弾倒れた元総理のお墓も、長門古市駅の隣の人丸駅の近くにあり、
迷うことはないので、探してみてもらえればと思う。
海から「元乃隅神社」へと、うねりながら連なる・・・ 123基の鳥居、
鮮やかな朱色が、紺碧の日本海とスカイブルーのグラデーションに映えている。
日本の棚田100選に選ばれた「東後畑棚田」
この風景に、日本海に沈む夕日が仲間入りすると・・・ もう、映えるってもんじゃない。
夕暮れ時で写真が鮮明ではないが「千畳敷」から撮影した北長門のリアス式海岸
もう 三年前かしら?
元乃隅神社と角島大橋に行きたくて、、天気にも恵まれて\(~o~)/
堪能しました。
そーそ、そのときに特牛の読み方に驚きました(^_^;)
地名って興味深いですね。