パパね、中身が女の人らしい💁🏻‍♀️

性同一性障害MtF
恋愛対象は女性
強烈な男性拒絶でさらに複雑

女性になる準備

2020年05月25日 | 男から女性へ💁🏻‍♀️
診察の帰り際に、女性の容姿で来てみれば?と言われた。
確かに、これから女性化をするために病院へ行っているのだから、ホルモン療法の開始は関係なく、自分らしい姿として女性の容姿になることは当たり前だ。
ただ、今の状態で女性の洋服、お化粧をしてというのはとてつもなく勇気がいる。

今の容姿は、あまりにも中途半端だ。
スキニーのデニム、ゆったりしてシルエットが分かりにくいブラウス、フラットシューズ。どれもレディースだが、肝心の私が女性化していない。
髪は肩甲骨の下端あたりまで伸びてワンレングスになっているが、それでもこれだけで女性的に見えるかと言われれば、全く見えないだろう。お化粧もしていない。

なぜだろう、性別違和を解決するために性同一性障害の診断を受けようとジェンダー専門医の元へ足繁く通っているのに、どこか心の迷いがあるのか、治療で女性に見えるようになってから全てを進めようとしている。
確かに今の時点でお化粧をして女性の服装を纏っても、中途半端すぎて滑稽にしか見えない。それ以前に、私自身が女性の容姿になることへの踏ん切りがついていない。

あと一週間ちょっとで次の診察、その後にカウンセリングがある。
女性の容姿になるのは女性化してからでもいいと考えるか。それともこれを一つのきっかけにして思い切ってみるか。
院長先生が言っていたが、ホルモン療法を開始してもすぐに効果は現れない。数ヶ月から、人によっては一年以上、或いは効果が現れない人もいる。副作用で治療中止になる人もいるのだ。ある程度の結果、効果の現れ方を見てから女性の容姿に変えるとすれば、それまでずっと今のままでいることになる。

もしホルモン療法に入れなかったら?
そもそも性同一性障害の診断確定が出なかったら?

それも不安だが、もっと本質的なところだ。
治療で女性化できるから女性になるのか。
違う。
自分の心の性別、自認性別が女性であることは確信している。
だから女性化を施すための治療をするのだ。

頭ではわかっている。だが行動に移す勇気、最初の一歩が踏み出せない。自分が間違ったことをしようとしているのかとすら思えてくる。

あれこれ考えていると、会社の同僚からメッセージが入った。
なんだろうと思い、返信してみる。
少しだけ会社の話をした。彼女が連絡してきた本題が別にあることは想定済みだ。

「最近、体調どう?あたしさぁ、なんか不安定すぎちゃってちょっと休みたいなって思ってるんだよね」
「そっか、俺もなんか不調でね。この前、病院行っていろいろ検査したんだけど、歳も歳だし、ちゃんと身体のメンテナンスしないといけないなって痛感してるよ」

古い友人には話してあるが、会社関係には一切カミングアウトしていない。同僚には男として接していた。

「そういえばこの前教えてもらった化粧水、すごく入る感じでいいよ。凄いよね、女子力高くて。あたしなんて化粧水とか適当すぎてもう女終わってる感じだよ」

女子力が高い、か。
この同僚は同期入社で、隣県に住んでいることや、離婚歴あり、一人で子供を育てているなど、私と似た状況を抱えているので、プライベートでも親しく接していた。
いずれにしてもこの先、女性化するのだ。彼女にはカミングアウトしておいた方がいいのではないか。迷いもある。でも彼女は信頼できるし、信頼したい。
うちの会社は外資系で、社風自体、性的マイノリティに理解が深く、差別や偏見は一切排除されている。LGBTに対しても全く問題なく、特に本国ではカミングアウトも積極的で、全て本人の意思を尊重し、自認性別も尊重されている。
彼女はどうだろうか。わからない。

「あのね、ちょっと変な話ししていい?」
「うん、いいよ。どした?」

小さい頃から性別違和があり、自分の心、性自認が女性であること、数年前から血圧の薬を飲むようになり、その副作用で女性化乳房を発症、少しずつ膨らんできた胸を見て、本格的に女性になりたいと思ったこと、体調不良を医師に相談したところ、カウンセリングで性同一性障害の疑いがあると言われ、今はジェンダー専門医の診察を受け始めたところで、性同一性障害の診断が確定したらホルモン療法で女性化をして、容姿も完全に女性になることを考えていること、全てを話した。

「だと思ってた。女子力高いのもそうだけど、考え方とかすごく女性的だしさ、なんかこう話してても男の人と話してるって感じじゃなくて、女子同士で話してる感覚だったのよ」

彼女は楽しそうに微笑んでくれた。

「ごめんね、変な話しちゃって」
「ぜんぜん変な話じゃないよ。話してくれてありがとう。すごく嬉しいよ」

彼女が本心で理解してくれていることが嬉しかった。
その流れで、次回の診察とカウンセリングに行く際、女性の容姿で行くかどうか悩んでいる事を話した。

「いいじゃん、もう女性なんだから女性の格好してて当然だよ。あたし、手伝おうか?」

思っても見ない展開だ。

「そしたら洋服とお化粧だよね。まずはそこをちゃんと作っちゃおうよ」

早い方がいいと言われたが、いきなりお店へ行って採寸してという勇気はない。

「確かにいきなりは勇気いるよねぇ。とりあえず洋服はネットでいろいろ探してみようよ。お化粧はそれからでもいいし。あと大切なこと。下着は?」

そうだ。下着だ。今はショーツこそ女性ものを穿いているが、胸が無いのでブラはしていない。

「胸が出来てからでいいよね、ブラは」
「そこよそこ、意識の問題だよ。女性になりたいんでしょ?副作用で少し出来てるんだし、もうブラはしておいたほうがいいよ」

説得力が凄い。
確かにそうだ。女性の胸というほどまではいってないものの、男の胸としては乳房の膨らみがあるので、普通のTシャツを着ると形がはっきりわかるくらいだ。
だが選び方もサイズも全くわからない。アンダーバストの測り方を教えてもらったが、これで合ってるのかどうかもよくわからない。

「誰か見てもらえそうな女の子いないの?」

そうだ、会って測ってくれるような友達がいれば話が早い。
彼女にすぐ探してみると伝えると、ネットでサイズが合いそうな洋服を探しておいてくれると言ってくれた。ありがとうと伝えて、すぐに携帯の連絡先をチェックした。

思い当たる子が一人いた。
以前、手伝いがてら仕事をしていた会社の、後輩の女の子。家も近所で、彼女も離婚歴ありで子育てをしている。両親と同居しているので一人で育てているわけではなかったが、その分、時間は作りやすい。すぐにメッセージを入れてみた。
相談があるとだけ書いておいたが、ちょうど今夜空いているというので、会うことになった。

夜、息子の夜ご飯の支度をしておき、彼女の仕事終わりで待ち合わせをした。
車に乗せると、すぐに相談の内容を聞かれた。これで彼女にもカミングアウトとなるわけだ。受け入れてくれるか全く見当がつかない。だが、いずれ知ることになるのだから、仲がいいだけに早い方がいいだろう。
同僚に話したように、簡単にここまでの経緯を話し、相談の目的を伝えた。

「やっぱりなぁ、そんな感じしてたんですよ。だって女子力高いんだもん。それにあたしよりちゃんとお母さんしてるしね。いいですよ、じゃあ下着選びから手伝いますよ」

同僚と同じような反応で拍子抜けした。
そうなのか、特に意識もせず普通にしていたが、他の人から見るとこれまでの状態でも女性っぽいところが出ていたのか。無意識に出ていると知って、なおのこと自認性別が女性なのだと痛感した。

「どこでやります?」
「どこがいいかな、車の中かな」
「いやぁ、ここじゃちゃんとした姿勢で測れないから正確じゃなくなっちゃうもん、お部屋とかがいいと思うなぁ」
「そうだよね。でもさすがに今の段階で息子がいるところっていうのは厳しいよねぇ」
「あの・・・ホテル行きましょ」
「えっ?」

突然の言葉に、あまりにも驚いて声が出てしまった。

「だって、ヌードサイズで測らないと駄目だし、ファミレスで脱ぐわけいかないでしょ。ホテルならご飯も食べられるし、なんならシャワーも浴びられるし」
「そ、そうだけど、なんか誤解されないかなと思って」

狼狽ている私の隣で、彼女は楽しそうに微笑んでいる。
確かに言う通り、ちょうどいい場所だと思う。
躊躇う気持ちもあったが、ホテルが建ち並ぶ、近くのインターチェンジへ向かって車を走らせた。

派手な外観のホテルの駐車場へ車を滑り込ませる。
まるで普通の恋人同士のように装い、手を繋いでエントランスへ入っていった。
彼女に好きな部屋を選ばせ、エレベーターに乗り、6階のボタンを押す。

やましいことをするわけでもないのに、なぜか気持ちが高揚してくる。
エレベーターが止まると、手を握る彼女に力が入る。

少し汗で濡れた掌を、お互いに摺り合わせながら部屋へと向かった。


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