〇 特価品のWi-Fiルーターを購入したくなる年末、「安物買いの銭失い」を防ぐには?
Wi-Fiルーターは、ボーナス支給時期の直後や年末商戦などで、大幅に値下げされることが多い。そうした特価品を見て、Wi-Fiルーターを衝動買いしたくなることもあるだろう。だが、Wi-Fiルーターの仕様を理解した上で製品を購入しないと、「安物買いの銭失い」になる。そこで今回は、Wi-Fiルーターの見極め方を紹介する。
Wi-Fiルーターを選ぶときは「規格」「アンテナ数や最大速度」「接続台数の目安」「付加機能」の4点に注目したい。さらに、Wi-Fi 7対応ルーターでのみ確認すべき点も多々ある。
最新規格「Wi-Fi 7」を無理に選ぶ必要はない。
最初にWi-Fiルーターの対応規格を確認する。Wi-Fiの規格は、Wi-Fi 7やWi-Fi 6やWi-Fi 6Eのように、「Wi-Fi」に世代を示す数値を付加した愛称で示す。数値が多くなるほど最新の規格となり、最新の規格ほど通信速度は速くなる。
現在(2024年12月)の最新規格は、Wi-Fi 7こと7世代目のIEEE 802.11beだ。最新のパソコンやスマートフォンの一部機種が対応し始めたことで、Wi-Fi 7対応のWi-Fiルーターは増えつつある。それでも、Wi-Fi 6やWi-Fi 6Eこと6世代目のIEEE 802.11ax対応のWi-Fiルーターが、いまだに売り場の多くを占めている。
Wi-Fi 7は通信速度を大幅に引き上げた最新規格だ。理論上の最大通信速度は46Gbpsで、Wi-Fi 6やWi-Fi 6Eの9.6Gbpsから約4.8倍も高速化している。また、Wi-Fi 7はMU-MIMOの最大ストリーム数の増加、帯域幅を最大320MHzに拡大(6GHz帯のみ、5GHz帯は従来通り160MHzが最大)、変調方式の高密度化などで、大幅な高速化を実現している。
Wi-Fi 6EはWi-Fi 6に6GHz帯の通信を付加した拡張規格(Extended)だ。6GHz帯は、現在Wi-Fi 7とWi-Fi 6Eで利用できる。6GHz帯は開放されたばかりで利用者が少なく、混雑している5GHz帯や2.4GHz帯と比べるとほかの通信と混信しにくい。
そのため、5GHz帯や2.4GHz帯より通信が高速になりやすい。もし、6GHz帯を利用できるWi-Fi 7やWi-Fi 6E対応のパソコンやスマートフォンが手元にあれば、6GHz帯を利用できるWi-Fi 7やWi-Fi 6E対応のWi-Fiルーターを積極的に選びたい。
また、Wi-Fiの規格はWi-Fiルーターだけでなく、パソコンやスマートフォン側も同じ規格に対応する必要がある。どちらかが古い規格の場合は、その古い規格で接続する。Wi-Fiルーターだけ新しい規格にしても、Wi-Fiの速度は向上しないので注意したい。
Wi-Fi 7対応のWi-Fiルーターは2万円台のエントリー向け製品も登場しているが、1万円台で購入できるWi-Fi 6やWi-Fi 6E対応のWi-Fiルーターと比べるとまだまだ高価だ。Wi-Fi 7に対応するパソコンやスマートフォンがなければ、あえて安価なWi-Fi 6やWi-Fi 6E対応Wi-Fiルーターを選ぶ手もある。
現在、Wi-Fi 7対応のWi-Fiルーターを選ぶべき人は、Wi-Fi 7対応の最新パソコンやスマートフォンを持っている人のみとなる。1Gbps未満のインターネット回線であれば、Wi-Fi 6やWi-Fi 6Eの速度域で十分だ。Wi-Fi 7対応の端末がない場合は、Wi-Fi 6Eに対応する端末があれば6GHz帯を活用できるWi-Fi 6E対応のWi-Fiルーターを、なければさらに安価なWi-Fi 6のWi-Fiルーターを選ぶ。
Wi-Fi 7対応ルーターの一部は6GHz帯に対応せず。
Wi-Fi 7対応のWi-Fiルーターは、「6GHz帯の対応の有無」「最大帯域幅」「MLO(マルチリンクオペレーション)の有無」も確認する。
6GHz帯がWi-Fi 6Eで追加されたとき、従来製品をWi-Fi 6、6GHz帯に対応する製品をWi-Fi 6Eと区別していた。だが、Wi-Fi 7対応のWi-Fiルーターの場合、製品によって6GHz帯の対応の有無が異なるので注意したい。安価なWi-Fi 7対応のWi-Fiルーターは、6GHz帯に対応しておらず、Wi-Fi 6と同様に2.4GHz帯と5GHz帯のみ利用できる。
次に確認するのは、最大帯域幅とMLOの対応だ。Wi-Fi 7で6GHz帯でのみ利用できる320MHzの帯域幅に対応するのは、一部の製品のみとなっている。MLOは、Wi-Fi 7で追加された複数の周波数帯を束ねることで通信速度を向上させる仕組みであり、これも製品によって対応の有無が異なる。
確認すべき「アンテナ数」と「最大速度」。
次に確認すべきはWi-Fiルーターの最大速度だ。Wi-Fiルーターのパッケージや仕様にはWi-Fiルーターのパッケージや仕様には「5764Mbps」「4803Mbps」「2882Mbps」「2402Mbps」など最大速度が記載されている。その数値が大きいほど、Wi-Fiルーターの最大速度は速い。
ただし、Wi-Fiルーターのパッケージや仕様に記載されている最大速度は、あくまでその製品が対応する規格上の最大速度だ。接続時にその速度がそのまま出るわけではない。Wi-Fiを利用する環境のほか、接続するパソコンやスマートフォンの仕様によっても速度が異なる。
そこで、端末の最大速度に見合った速度のWi-Fiルーターを選ぶ。速度はアンテナ数で決まる。現在販売されているパソコンやスマホの多くが2x2か1x1だ。そのため、パソコンやスマホの端末側の最大速度はWi-Fi 7対応だと5.8Gbps(5764Mbps、6GHz)または2.9Gbps(2882Mbps、5GHz帯)、Wi-Fi 6やWi-Fi 6E対応だと2.4Gbps(2402Mbps)または1.2Gbps(1201Mbps、ともに5GHz帯/6GHz帯)となる。
Wi-Fiルーターを選ぶときは、それ以上の最大速度を持つWi-Fiルーターを選ぶ。また、Wi-Fiルーターのアンテナ数が多いと、接続する端末の台数が増えたときに有利だ。
各メーカーが掲示する接続台数の目安をチェック。
Wi-Fiルーターの性能を示すため、各メーカーは接続台数の目安をパッケージや製品仕様などで紹介している。Wi-Fiルーターはネット回線を複数のパソコンやスマホに分配する役割を持つが、その処理速度はWi-Fiルーターが搭載するCPUの性能に左右される。接続台数の目安の数値が大きい製品ほど、搭載しているCPUも高速だと思ってよい。
安価な機種ほど接続台数の目安の数値は小さく、高価な機種ほど大きい傾向がある。もし、予算に余裕があるなら、なるべく接続台数の目安の数値が大きい上位製品を選ぶ。逆にパソコンやスマホを1~2台しか接続しない環境であれば、あえて接続台数の目安が少ない安価な機種を選ぶ手もある。
接続台数の目安は、あくまで各メーカーが独自に算出した数値だ。メーカーによって計測方法などがかなり異なるため、メーカーを超えて製品を比較するときは要注意だ。
有線LANやメッシュネットワークにも注目。
Wi-Fiルーターの仕様で確認すべき点はほかにもある。もし、最大速度が1Gbpsを超えるインターネット回線を導入しているのであれば、WAN側の有線LAN端子の規格も確認する。WAN側の有線LAN端子が最大速度1GbpsのGigabit Ethernet(1000BASE-T)だと、最大速度は1Gbpsとなりそれが原因でネットの速度が1Gbpsで頭打ちになってしまう。
そこで、WAN側の有線LAN端子が最大速度10Gbpsの10GBASE-Tや同5Gbpsの5GBASE-T、同2.5Gbpsの2.5GBASE-Tなど、Gigabit Ethernetより速い規格を持つ製品を選ぶ。
さらに、広い範囲で使うのであれば、メッシュネットワークへの対応も重視したい。メッシュネットワークは2台以上のWi-Fiルーターを設置し、Wi-Fiの電波を網(メッシュ)状に張り巡らせる仕組み。メッシュネットワークはWi-Fiルーターを複数台必要とするため費用がかさむが、その分広い範囲でWi-Fiを活用できる。
メッシュネットワークには「Wi-Fi EasyMesh」という統一規格があり、それに対応した機器同士であればメーカーや機種を問わずメッシュネットワークを構築できる。対応していない製品の場合、同一メーカーの同じ製品群でのみメッシュネットワークを構築できる。もし、メッシュネットワークの構築を考えるのであれば、Wi-Fi EasyMeshへの対応を重視して製品を選びたい。
最後に、IPv6 IPoEに対応しているかどうかも重視したい。IPv6 IPoEはネットの接続認証にIPv6網を使う仕組みだ。従来のIPv4 PPPoEのIPv4よりも接続処理が高速。また、回線認証になるため、Wi-FiルーターにプロバイダーのユーザーIDやパスワードの設定が不要になり初期設定がかなり楽になる。
また、IPv6 IPoEの環境下では、IPv6の通信網でIPv4の通信をするIPv4 over IPv6という技術を利用でき、従来のIPv4網よりも通信の高速化を狙える。なお、このサービスの利用には、Wi-Fiルーターの対応とプロバイダーへの申し込みが必要となる。現在、ほとんどのWi-FiルーターがIPv6 IPoEに対応するが、海外メーカーの一部機種にはIPv6 IPoEに非対応の機種もあるので確認しておいた方がよい。