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NTTグループ が 高性能 XRグラス 「MiRZA」を 開発、

〇 険しい普及の壁を乗り越えられるか。

 NTTグループのNTTコノキューデバイスは、独自開発のXR(クロスリアリティー)グラス「MiRZA(ミルザ)」を発表した。ワイヤレスでスマートフォンに接続でき、6DoF(Degrees of Freedom)に対応するなど高い性能を備える。その分価格は20万円超と非常に高い。どのようにして普及させるのだろうか。

無線接続かつ6DoFに対応したXRグラス。

 AI(人工知能)ブームの到来で世間の関心が大きく薄れたXR。だが、現在もその開発に力を入れる企業は多い。NTTドコモの子会社でXR事業を担うNTTコノキューもその1つだ。同社はXR関連のプラットフォームやサービスだけでなく、XR関連のハードウエア開発にも力を入れている。

 同社はシャープと共同出資で、XRデバイスを開発するNTTコノキューデバイスを設立。2023年4月から事業を開始した。2024年2月の「MWC Barcelona 2024」ではXRデバイスのプロトタイプを展示しており、製品の投入が近いことをうかがわせていた。

 そして2024年9月9日、NTTコノキューデバイスがMiRZAを発表した。発売時期は2024年秋とされ、具体的な投入時期はまだ決まっていないようだ。だがハードウエアはほぼ完成しており、残るはソフトウエアの調整が主だという。製品投入まで間もない状況であることは間違いない。

NTTコノキューデバイスが開発したXRグラス「MiRZA」。スマホとの無線接続が可能で、6DoFに対応するなど非常に高い性能を備える
画1、NTTコノキューデバイスが開発したXRグラス「MiRZA」。スマホとの無線接続が可能で、6DoFに対応するなど非常に高い性能を備える。

 MiRZAの外観は、MWC Barcelona 2024で展示されていたプロトタイプと大きくは変わっていない。通常の眼鏡としてはやや大きいが、XRグラスとして見れば悪くないサイズ感だ。重量も約125gと眼鏡と比べれば重いが、重量のバランスがうまく取られており、実際に装着した際に重くて疲れる感じはしない。

 それでいて、MiRZAは非常に高い性能を備えることが大きな特徴となっている。具体的には空間認識用のカメラを3台搭載。さらに米Qualcomm(クアルコム)製のXRデバイス向けチップセット「Snapdragon AR2 Gen 1」を世界で初めて搭載するという。

 また、スマホと無線で接続して操作できる。従来のXRグラスは、スマホなどの端末とケーブルで接続して利用することが前提だった。ケーブル接続のわずらわしさがないのは大きい。

 そしてもう1つは6DoF対応である。現実空間の位置や物体、そして体の動きを認識したXRコンテンツの利用が可能だ。現在市販されているXRグラスの多くは、コストなどの観点から首の動きのみを認識する3DoFにしか対応していない。MiRZAは無線接続で6DoFに対応しているので、より自由度の高いコンテンツを利用できる。

筆者が実際にMiRZAを装着してコンテンツを体験しているところ。6DoFで体の動きを反映させながら、現実空間の位置なども認識したXRコンテンツを利用できる
画2、筆者が実際にMiRZAを装着してコンテンツを体験しているところ。6DoFで体の動きを反映させながら、現実空間の位置なども認識したXRコンテンツを利用できる。

価格は20万円超、法人への販売が主体か。

 筆者も実際にMiRZAを装着していくつかのコンテンツを試してみた。ケーブル不要で自由度が高い点は大きなメリットだと感じた。開発中ということもあり体験したコンテンツには粗削りな部分もあったが、MiRZA自体の性能の高さは確かだ。

 NTTコノキューデバイスの堀清敬社長によると、親会社の1つであるNTTコノキューがメタバースやXRなどを活用したサービスを提供する上で、「どうしてもハードウエアが必要だと認識した」ことがMiRZAを開発するきっかけになったという。

NTTコノキューデバイスの堀清敬社長は、NTTコノキューがサービスを提供する上で必要なデバイスがなかったことが、MiRZA開発の契機になったと話した
画3、NTTコノキューデバイスの堀清敬社長は、NTTコノキューがサービスを提供する上で必要なデバイスがなかったことが、MiRZA開発の契機になったと話した。

 現在市場に出回っている多くのXRグラスは、スマホやパソコンなどの画面を現実空間上に大画面で映し出すことに重きを置いている一方、先にも触れたように3DoFまでの対応で全身の動きを反映できないなど、性能は抑えられている。

 6DoF対応などの高度な機能や性能を備えたデバイスは市場にあまり存在せず、NTTコノキューが提供したいサービスに対応できない。そこでより性能の高いデバイスを、シャープとの合弁によって直接開発するに至ったようだ。

 ただMiRZAは性能が高い分、価格も高いというのが正直なところである。MiRZAの希望小売価格は24万8000円とされている。米Apple(アップル)の「Vision Pro」より安いとはいえ、一般のコンシューマーが容易に購入できる価格ではない。しかもMiRZAを利用するには対応するスマホが必要で、現在のところ動作を確認しているのはNTTドコモが販売するシャープ製のスマホ「AQUOS R9 SH-51E」のみだという。

 それに加えてXRグラスに対応するコンテンツ自体がそもそも少ないので、購入してもコンシューマーが楽しめるデバイスとはなりにくい。それ故NTTコノキューデバイスも、MiRZAをコンシューマーに広く販売するのではなく、法人向けの販売に重点を置く方針のようだ。

 法人向けに絞ると、XRグラスは以前から企業の遠隔作業支援用途で多く使われている。そこで当面は、MiRZAを遠隔作業支援用デバイスとして、企業向けソリューションと一体で提供していくことになるのではないだろうか。

法人向けのXRグラスは遠隔作業支援用途で多く利用されていることから、MiRZAも当面はそうした用途での活用が想定される
画4、法人向けのXRグラスは遠隔作業支援用途で多く利用されていることから、MiRZAも当面はそうした用途での活用が想定される。

第2弾ではコンシューマー向けを狙う。

 とはいえ、同社はMiRZAを法人向けにとどめるわけではなく、コンシューマーにも販売する考えのようだ。堀社長は2025年内の早いタイミングで、MiRZAの2号機を発売したいとしている。

 2号機は現在のMiRZAよりも一層眼鏡に近い形状にし、なおかつコンシューマーでも手に取りやすい価格帯で販売したいという。2号機は「1号機とは性格が違うもの」になるとも堀社長は話している。必ずしも現在のMiRZAの機能や性能を引き継いだものとはならない可能性もあるようだ。

初代MiRZAは性能も価格も高いことから法人向けが主体となる。2号機ではより性能と価格を抑え、コンシューマー向けにも提供したいとしている
画5、初代MiRZAは性能も価格も高いことから法人向けが主体となる。2号機ではより性能と価格を抑え、コンシューマー向けにも提供したいとしている。

 このような話を聞いて、2号機は、3DoFで映像視聴に重きを置いた現在主流のXRグラスのような製品になるのかと想像した。だが堀社長は、「そういった製品とも異なる性格の製品になる」と答えた。MiRZAのコンセプトはある程度維持しながらも、性能をある程度落としてリーズナブルな価格で提供することを想定しているのではないだろうか。

 ただ映像視聴に重きを置かずにコンシューマー向けデバイスを提供するとなると、課題となるのはコンテンツである。現状、XRグラスの市場が本格的に立ち上がっているわけではなく、主な用途は映像視聴である。多くの人が楽しめるXRグラス向けコンテンツは決して多いとは言えない。

 それだけにNTTコノキューデバイス、そしてNTTコノキューには、デバイスの開発及び普及と同時に、コンテンツを充実させるための取り組みも同時に進めることが求められるだろう。そのためにはNTTグループだけにとどまらない、XR業界全体で盛り上げる必要がある。普及に向けた課題は非常に多いだけに、長期的視野に立った取り組みが求められる。


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