◯ 今使われているルーターとUTMのベンダーランキング、生成AIの活用状況も公開。
次は、インターネットと社内ネットワークの境界に置く主な製品である、ルーターとUTM/ファイアウオール*6の調査結果を見ていこう。
ルーター分野では1~4位が2023年調査と変わらなかった(図11)。ヤマハはシェアを1.5ポイント増やして27.9%とし、3年連続の1位。2位のシスコシステムズは0.1ポイント減の19.7%。5位には、2023年調査は3.0%未満だったシェアを5.2%まで伸ばしたアイ・オー・データ機器が食い込んだ。
ネットワーク規模別で見ると、「21~50台」「51~100台」「101~500台」ではヤマハが1位(図12)。シスコシステムズは「501~1000台」「1001台以上」で1位となり、ここでも大規模ネットワークで強みを見せた。全体3位のNEC/NECプラットフォームズは「21~50台」において、17.2ポイント増の20.0%と躍進した。
境界型防御製品は半数弱が導入。
アンケートでは境界防御*7のために導入しているセキュリティー製品についても尋ねた(図13)。導入率1位は「UTMまたは次世代ファイアウオール」で、3.1ポイント増の46.0%だった。2021年調査以降、導入率が年々増えている。
サンドボックス型製品*8の導入率は、1.5ポイント増の4.6%。一方で境界防御製品を導入していないとする回答は4.8ポイント減ったものの、依然としてリスクが高い企業が22.4%いる状況だ。
では境界型防御製品を導入している企業は、どのベンダーの製品を使っているのか。最も導入が進んでいるUTM/次世代ファイアウオールの場合、1位は2023年調査に続きフォーティネットジャパンだった(図14)。シェアは2.6ポイント増の45.7%となった。
1~3位の順位は2023年調査と同じだった。ただ2位のパロアルトネットワークスがシェアを3.3ポイント落としたことに対し、3位のシスコシステムズはシェアを4.3ポイント伸ばした。
ネットワーク規模別に見ると、2023年調査に続きフォーティネットジャパンが全ての規模で1位を独占(図15)。例年フォーティネットジャパンとパロアルトネットワークスでシェアが拮抗する「1001台以上」では、2023年調査からフォーティネットジャパンが2.5ポイント増えた。パロアルトネットワークスは7.5ポイント減らした。
生成AIの普及広がる。
アンケートでは2023年調査に続き、ネットワークの構築・運用業務における生成AIの利用状況を尋ねた(図16)。生成AIを「利用している」と回答した割合は17.6%で、「まだ利用していないが、これから利用する/利用のための検証をしている」と回答した割合は30.8%だった。これら利用に前向きな回答は合計48.4%と、2023年調査から3.4ポイント増えた。
一方で生成AIを「利用したことはあるが、現在では利用していない」とする回答が6.5%あった。利用をやめた主な理由としては「出力内容に不満がある」「生成AIの用途を見いだせない」「セキュリティーや運用方法に課題がある」などがあった。生成AIが事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」のリスクや、入力した情報が社外に流出するセキュリティーリスクなどを懸念したと見られる。
さらにアンケートでは、業務に生成AIを「利用している」「まだ利用していないが、これから利用する/利用のための検証をしている」と回答した人を対象に、利用用途を複数回答で尋ねた(図17)。
最も多かった回答が、2023年調査と同じく「提案書や設計書といったドキュメントの作成支援」で230件だった。2位は「プログラムの作成支援」で172件、3位は「社内の問い合わせ対応の代行」で161件だった。2023年調査と比べて2位と3位が逆転した。「その他」の利用用途の中には、「自己啓発」や「議事録の作成」といった回答があった。
アンケートでは自由回答欄でネットワーク機器ベンダーに対する不満や要望を挙げてもらった。
多かったのは、価格に関する要望だ(図B)。「価格上昇が著しく、顧客に予算を確保してもらっても提案・納入時に予算をオーバーすることが多い」という声からは、物価高や円安などの影響により、ネットワーク機器の導入や運用にかかるコストが高まっている現状が浮かび上がる。「定価と実売価格の差が大き過ぎて参考にしづらい」といった意見もあった。
サポートや製品の使い勝手に関する、不満や要望も多く見られた。対応窓口が複数に分かれていたり、問い合わせ方法が限られていたりする点を、利用者が不便に感じているケースがあるようだ。機能を詰め込み過ぎて分かりづらいといった声もあった。
機種間で統一を望む声も。
独自仕様に関しても不満が上がった。例年「ベンダー間で異なる仕様を統一してほしい」という声が多く上がる。2024年調査で挙がったのは、「機種のグレードが変わっても、CLI(Command Line Interface)やGUI(Graphical User Interface)のパラメーターには一貫性を持たせてほしい」といった、同じベンダーであっても、製品ごとの独自仕様をなくしてほしいといった要望だ。
他には、2024年の調査でも明らかになったように「シスコシステムズのシェアが高過ぎる」といった意見や、「ネットワーク構成図を自動で出力できるツールが欲しい」といった要望があった。
同様の機能を備えていても、ベンダーによってUTMと呼ぶ場合と、ファイアウオールと呼ぶ場合がある。このため記事では「UTM/ファイアウオール」とした。
インターネットとLANの境界にセキュリティー機器を置いて、脅威(サイバー攻撃やマルウエアの侵入)を防ぐ考え方や技術のこと。
本調査ではUTMやWebゲートウエイ(Webアクセス時にサイバー攻撃やマルウエアを検知するプロキシー製品)ではない、仮想環境を利用して不正なプログラムかどうかを安全に検査する製品を指す。