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本田雅一 の 先読み ジャーナル。

◯ マイクロソフトが発表した「Copilot+PC」、狙うバタフライ効果とは。

 米マイクロソフトが2024年5月20日に発表した「Copilot+PC」には、ちょっとした驚きがあった。

 インテルやAMDのプロセッサーが現時点で到達できていないボトムラインをCopilot+PCに設定したからだ。生成AIに関してマイクロソフトが先行していることは周知の事実。そんな同社が、端末内で処理するエッジ(オンデバイス)AIにおけるボトムラインを設定した意味は大きい。

「Copilot+PC」を名乗るための要件とは
画、「Copilot+PC」を名乗るための要件とは。
マイクロソフトは、「Copilot+PC」の要件として、(1)40TOPS以上のNPUを搭載、(2)メインメモリー16GB以上を搭載、(3)256GB以上のストレージの3つを掲げる。

 生成AIの主役であるLLM(大規模言語モデル)は、現時点においてエッジでは本格的な処理ができない。マイクロソフトはより小さなモデルで効率的に推論を実行する小規模言語モデル(SLM)を開発した上で、そのパフォーマンスを引き出すニューラル処理プロセッサー(NPU)に、40TOPSという演算性能を設定した。

※ Tera Operations Per Secondの略で、1秒間に何兆回の処理を行えるかを表す指標。

インテルもAMDも未達。

 ちなみに、2024年5月末時点でこの値を実現できているのは、クアルコムのSnapdragon X Elite/Plusだけ。アップルが「iPad Pro」に搭載したM4チップは38TOPS、インテルCore Ultraが11TOPS、AMD Ryzen 8040が16TOPSだ。インテルとAMDがクアルコム並みのNPU性能を持つチップを出荷できるのは、2024年夏以降のタイミングになる。

 マイクロソフトがWindowsに内蔵するSLMも、NPUの性能トレンドに合わせて狙いを定めて開発しているのだろう。小規模と言いながらも、画像生成までサポート。エッジAIにおける新しい進化の起点を定義した。

 AIの主役はあくまでもソフトウエアだ。それがデバイスの中で動作するのか、それともクラウドを通じて提供されるのかは、規模によって異なる。だが、デバイスの中でより大きな付加価値を持つAI機能やサービスを提供するために、どのようなハードウエアの要件と性能が必要なのかは、半導体メーカーの都合によって決まるものではない。


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