◯ どこでもネットに接続できるモバイルWi-Fiルーター、テザリングと何が違う?
今回は「モバイルWi-Fiルーター」の仕組みと特徴を説明していく。
モバイルWi-Fiルーターは、PCやタブレットなどインターネット接続手段を持たない機器を外出先で接続するために使う小型のデバイスだ。携帯電話回線やWiMAX回線を使ったインターネット接続を、Wi-Fiを介して複数の機器で共有できる。バッテリーを搭載しているため、携帯電話かWiMAXの電波が入る場所であれば電源がない出先のような場所でも利用できる。
「出先でPCなどをインターネットに接続するなら、スマートフォンのテザリング機能を使えばよいのでは?」と思った人もいるかもしれない。確かにモバイルWi-Fiルーターの用途はテザリングと同じで利用方法も似ているが、実は違いもある。
スマートフォンの通信量やバッテリー残量を気にしなくてよい。
モバイルWi-Fiルーターは単独で動作する通信機器であるため、スマートフォンのパケット通信量やバッテリー残量を気にしなくてもよい。連続通信時間に関しては、長いものだと10時間以上という製品もある。
また、テザリングで接続可能な最大台数は、モバイルWi-Fiルーターよりも少ない。テザリングの場合は、iPhoneだと最大接続台数は通信キャリアによって異なり、Androidであれば最大10台だが、モバイルWi-Fiルーターは基本的にそれよりも多い。そのため、自宅で据え置きのWi-Fiルーターの代わりに使う人もいる。
Wi-Fiの通信で用いる周波数帯も違う場合が多いと考えておこう。現在、テザリングを使う場合は2.4GHz帯でWi-Fiの電波を出すスマートフォンが多いはずだ。一方モバイルWi-Fiルーターは、その多くが2.4GHz帯と5GHz帯のどちらで電波を出すか選べるようになっている。本連載でも解説してきたが、速度重視なら5GHz帯、電波の届きやすさ重視であれば2.4GHz帯の方が向いている。やはり、選択肢がある方が使いやすい。
一方で、スマートフォンにはあるがモバイルWi-Fiルーターにはないという機能も存在する。例えばモバイルWi-Fiルーターは通信用のデバイスであり、通話機能はない。また自由にアプリをインストールして実行する機能を搭載していない。
利用できるインターネット回線は携帯電話通信とWiMAXの2種類。
モバイルWi-Fiルーターが対応しているインターネット接続手段は、携帯電話回線とWiMAX回線の2種類である。携帯電話回線を使うデータ通信サービスは、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの回線事業者4社、およびそれらの通信網を使うMVNOが提供している。ただしモバイルWi-Fiルーターの製品によっては、一部事業者のサービスあるいは一部の周波数帯に対応していないことがある。また4Gにだけ対応し5Gは非対応という製品もあるので、購入前に利用する通信サービスに対応しているか確認したい。
WiMAXはWorldwide Interoperability for Microwave Accessの略語。日本全国で利用できるサービスは、UQコミュニケーションズが2.5GHz帯を使って提供している。ただし携帯電話で使用しているより低い周波数の電波と比べると障害物に弱く、室内やビルが多い場所など状況によっては速度や通信の安定性が落ちることがある。KDDI(au)とUQコミュニケーションズ、およびそのMVNOなどが、携帯電話回線とWiMAX 2+回線を併用するモバイルWi-Fiルーターと対応する通信サービスを提供している。併用によって、通信の安定化や高速化といった効果が得られる。
1カ月の料金は?レンタルで利用できることも。
モバイルWi-Fiルーターを使うには、対応するデータ通信サービスを契約する必要がある。データ定額の(通信量の上限がない)サービスであれば、月4000~5000円程度の料金で利用できる。スマートフォンと同様に、長期契約だと月額料金から割引を受けられるサービスもある。速度制限があったり通信量が少なめだったりと制約はあるが、その分安価なデータ通信専用の格安SIMを使うこともできる。
モバイルWi-Fiルーターを一時的に使うのであれば、レンタルサービスもある。長期出張や引っ越し直後、海外への出張・旅行の際に使う一時的なインターネット接続手段として便利だ。モバイルWi-Fiルーターの受取や返却は、宅配便やコンビニ、空港などの窓口による手続きのほか、テレコムスクエアの「WiFiBOX」のように、町中の無人機でレンタルモバイルバッテリーのように借りられるサービスもある。
料金は国内向けサービスの場合、データ定額であれば安くて1日あたり700~800円と考えておけばよい。1~2週間借りると、1日あたり100~200円になるサービスもある。
なおモバイルWi-Fiルーターのレンタルサービスには、国内専用のものと海外専用のものがある。例えば上記のWiFiBOXのように、海外で使うプランと国内で使うプランの両方を提供しているサービスもある。間違えないように気を付けよう。
「クラウドSIM」を使うモバイルWi-Fiルーターもある。
携帯電話回線を使うモバイルWi-Fiルーターの中には、「クラウドSIM」と呼ぶ仕組みを用いた製品やサービスもある。
クラウドSIMは携帯電話会社各社のSIMカードを、モバイルWi-Fiルーターの提供事業者がクラウドサーバーで管理し、場所や状況に応じて自動で回線を切り替える仕組み。日本国内だとNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社の回線から、その場で一番接続しやすいキャリアを自動で選択して接続する。そのため、どのような状況でも接続しやすいとしている。また、海外のSIMにも自動で切り替えられるため、手続きなしで海外でも利用できることを特徴とするサービスもある。
クラウドSIMを利用するモバイルWi-Fiルーターの場合、通常の携帯電話回線やWiMAX回線を使うモバイルWi-Fiルーターと比べると、最大速度は100M~150Mbps程度と低めのようだが、それでも日常的なインターネット接続としては十分な速度は出る。また、クラウドSIMを利用するサービスで、データ定額の料金プランを用意している事業者はほとんどない。月額の基本料金は月50GBで2000円前後、月100GBで4000円前後となっている。