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◯ 「LINE Pay」終了で「PayPay」に一本化、それでも残るLINEヤフーの課題。

 LINEヤフーは日本国内におけるスマートフォン決済サービス「LINE Pay」を終了し、同様のサービスである「PayPay」に一本化する。LINE Payの整理がようやく進んだが、LINEヤフーの真の実力を発揮する上では、解決できていない課題がある。

既定路線ながら時間がかかったLINE Pay終了。

 メッセンジャーアプリ「LINE」と連携したスマホ決済サービスとして知られるLINEヤフーのLINE Pay。そのLINE Payが日本でのサービスを終了すると2024年6月13日に発表され、大きな話題となった。

 発表によると、LINE Payは2025年4月30日までにサービスを順次終了させる。現在LINE Payを利用している人には、LINEヤフー傘下のスマホ決済サービスPayPayに、LINE Payの残高を移行できる機能を提供するとしている。

 またLINE Payで利用できる「LINEポイント」は、LINE Pay終了後も引き続き使える。台湾やタイで提供しているLINE Payは継続される。ユーザーに対する影響を最小限に抑えようとしている様子がうかがえる。

 LINE Payは、およそ10年前の2014年から提供されている、この分野では老舗ともいえるサービスである。しかも日本で多くのユーザーがいるLINEで利用できることもあって、多くの利用者を抱えていた。それだけに、LINE Payの終了を驚く声は多かったようだ。

LINEヤフーは2024年6月13日、スマホ決済「LINE Pay」の終了を発表した
画1、LINEヤフーは2024年6月13日、スマホ決済「LINE Pay」の終了を発表した。

 とはいうものの、国内でのLINE Payの終了は既定路線だったことも確かだ。経営統合前の旧LINE陣営がLINE Payを、旧Zホールディングス陣営がPayPayを提供しており、2021年3月1日の経営統合の際には、LINE PayをPayPayに統合するべく協議を開始すると発表していた。それから既に3年以上が経過して、今回やっとLINE Payの終了を発表した。かなり時間がかかった印象だ。

旧LINEと旧Zホールディングスが経営統合した2021年3月1日の時点で、スマホ決済はPayPayに統合するべく協議を開始すると発表した
画2、旧LINEと旧Zホールディングスが経営統合した2021年3月1日の時点で、スマホ決済はPayPayに統合するべく協議を開始すると発表した。

競争の軸は決済から経済圏へ。

 なぜこれほど時間がかかったのか。その理由は、旧LINE側と旧Zホールディングス側との力関係にあったといえる。現在のLINEヤフーの親会社は、旧LINEの親会社だった韓国NAVER(ネイバー)と、旧Zホールディングスの親会社だったソフトバンクが対等な比率で株式を持ち合った。この対等な関係での合併が、事業の整理を難しくすることになった。

 旧LINEと旧Zホールディングスは多くの事業が重複していたにもかかわらず、経営統合後も事業が整理されず効率化が進まないなど、事業環境がむしろ悪化する状況が続いていた。そのことに業を煮やした親会社の影響もあり、2023年10月にはLINEヤフーとして1つの会社に統合された。

 その統合に前後する形で重複する事業の整理がようやく進められるようになった。とりわけ重複する事業が多かった金融・決済関連の事業に関しても、2023年3月30日には旧LINEが銀行設立を断念。旧LINEの証券事業「LINE証券」に関しても、2024年5月31日に事業を野村証券に承継予定であることを発表するなど、整理に向けた動きが明確になってきた。

旧LINEは2018年、みずほフィナンシャルグループと銀行を設立する構想を打ち出し、経営統合後もしばらく設立の検討を続けていた。写真は2018年11月27日の「LINE Financial Conference」から
画3、旧LINEは2018年、みずほフィナンシャルグループと銀行を設立する構想を打ち出し、経営統合後もしばらく設立の検討を続けていた。写真は2018年11月27日の「LINE Financial Conference」から。

 そして今回、LINE Payの終了が発表され、PayPayに決済事業が一本化されることになった。これでLINEヤフーの事業整理は、1つの区切りを迎えることになる。現在のLINEヤフーが誕生するに至った背景にはLINE Payが少なからず影響していた。それだけにそのLINE Payが終了したことは、スマホ決済の競争そのものが大きく変わったことを表している。

 LINE PayとPayPayは、競合サービスとして非常に激しい競争を繰り広げてきた。2018年から2019年にかけてスマホ決済サービスの競争が激化した、いわゆる「ペイ競争」においては、両サービスが共に大盤振る舞いの還元施策を展開してきた。

 だがその結果、企業体力の面で弱さがあった旧LINEが赤字に苦しむようになり、それが旧Zホールディングスとの経営統合、ひいては現在のLINEヤフー誕生へとつながった。そのLINE Payが終了し、PayPayに一本化されることは、スマホ決済の競争が「経済圏」という、より大きな軸に変化したことを示している。

スマホ決済の競争が激化した2019年には、LINE Payも利用促進のため大規模キャンペーン施策を展開した。写真は2019年5月16日の「LINE・LINE Pay」記者発表会から
画4、スマホ決済の競争が激化した2019年には、LINE Payも利用促進のため大規模キャンペーン施策を展開した。写真は2019年5月16日の「LINE・LINE Pay」記者発表会から。

問題山積で進まないLINEとPayPayのアカウント統合。

 LINEヤフーの親会社の1社であるソフトバンクは現在、自社系列のサービスに顧客を囲い込む経済圏ビジネスに非常に力を入れている。それは携帯電話会社の競争軸が、市場飽和などで稼げなくなった携帯電話事業から、携帯電話の顧客基盤を活用した経済圏ビジネスへと移りつつあるためだ。

 そしてスマホ決済は、今やポイントプログラムと並んで経済圏ビジネスを支える軸の1つとなっている。とりわけソフトバンクはPayPayでスマホ決済のトップシェアを獲得しているだけに、LINE Payの終了とそれに伴うPayPayの基盤強化により、一層経済圏ビジネスに力を注ぐことになるだろう。

 だがその経済圏ビジネスを巡って、大きな課題となっているのがLINEヤフーでもある。これまで事業整理が進まず停滞が続いていたのに加え、最近ではネイバーとの連携部分が原因で個人情報漏洩が相次ぎ、総務省からネイバーとの関係見直しを求められている。

 そして個人情報漏洩対策のため、LINEヤフーは当初2024年内を予定していたLINEとPayPayのアカウント連携を延期することを明らかにしている。本来ならばLINEとPayPayのアカウント連携によって、従来LINE Payが実現していたLINE上での送金や決済などができるようになると見られていた。アカウント連携時期の見直しによって、その実現が見通せなくなってしまった。

個人情報漏洩を相次いで起こしているLINEヤフーは、その対策のため、2024年内を予定していたLINEとPayPayのアカウント連携時期を見直すと発表した。写真は2024年5月8日のLINEヤフー決算説明会から
画5、個人情報漏洩を相次いで起こしているLINEヤフーは、その対策のため、2024年内を予定していたLINEとPayPayのアカウント連携時期を見直すと発表した。写真は2024年5月8日のLINEヤフー決算説明会から。

 LINEヤフーの経営統合で期待されているのは、大きな顧客基盤を持つ「LINE」「Yahoo! Japan」「PayPay」といったグループ内のサービスを密に連携してユーザーの利便性を高め、経済圏ビジネスを強化することだ。その実現に非常に多くの時間を費やしている現状が、ソフトバンクの経済圏ビジネスにも少なからず影響を与えている。LINEヤフーが越えるべき壁はまだ多い。


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