〈いじめ学〉の時代内藤 朝雄柏書房このアイテムの詳細を見る |
・・・・・・「卒業前のひと仕事(3)」の続き・・・・・・
木曜日の朝は,あえて教室へ行かなかった。
理由は子ども達にも分かっているであろう。
私の性格・指導スタイルを知っている者からすれば,当然の行動である。
子ども達は,昨日の続きの話し合いをしているであろう。
彼らを信じているからこそ任せられる。
教室へと逸る気持ちを抑えて,職員室で「卒業生台帳」に子ども達の名前を記していく。
「卒業へは進ませない!」
などと言っておきながら,卒業への手続きを進めるのは,
(彼らは自分たちで解決できる)
と信じているからこそである。
途中,いつも通りに「朝の挨拶回り」をして戻ってきた校長が,
「今日の6年○組はどうしたんだい?」
と首をかしげている。理由を報告し,
「もう少し,話し合わせておこうと思います。」
と苦笑いを返す。
話の判る校長だから,「ボイコットでなく積極的な指導」ということをすぐに理解してくれた。
そこで1校時が終了。
「2時間目の算数は・・・・・・?」
と聞きに来たT.T担当教員に,
「ちょっと様子を見てきてもらえますか?」
と指導を託す。
クラス全員の名を卒業生台帳に記して「担任として卒業を申請」し終えた頃,2校時が終了。
戻ってきたT.T担当が,
「もうすぐ,決着がつきそうです。」
と,それまでの様子を報告してくれた。
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ほとんどの児童が話し合いをしようとする中で,
「俺たちは,やっていないから関係ない。」
「私には,何のために話し合うかわからない。」
と,参加しないで自習を始める数名がいたらしい。
それを,諭して全員が話し合いに参加するところからスタートしたらしい。
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「道理で,彼らにしては時間がかかりすぎると思いました。」
と苦笑していると,学年主任も気にかけてくれていたらしい。
「B子さんが心配だ。昨日もずっと泣き崩れていたし,
昨晩もほとんど寝ていないらしい。
顔色も良くないから,ほどほどのところで許してあげないと・・・・・・。」
B子はクラスのリーダー格で,こういう時には先頭に立って解決してきた。
4年生から受け持ち続けている子で,自他共に認める私の右腕である。
しかし,今回は「別れの言葉」の列で,A男を隣で避けた張本人であった。
(泣いて馬謖を斬る!)
と,今回はきつく叱った。
責任感も感受性も強い子だけに,余計に堪えたのであろう。
A子が仕切れないことも,解決が遅れている原因になっている。
(ここが正念場だな・・・・・・)
チャイムが鳴り,とうとう3校時に突入した・・・・・・(その④に続けます)