負けないで!―「いじめ」を生き抜く22通の手紙枝広 淳子PHP研究所このアイテムの詳細を見る |
・・・・・・「卒業前のひと仕事(4)」の続き・・・・・・
「先生,私たちA男さんに,避けていた理由を話そうと思うんです。」
「だから,先生には直接聞いてもらいたいんです。」
「教室に来て頂けませんか?」
3校時開始から15分。
学級の代表2人が私を迎えに来た。
「結局,B子さん,あなたが来たのね。
もうちょっと,私が『あっ』というような人選はできなかったの?」
等と,すっかり落ち着いたB子に冗談を言いながら教室に戻る。
「おはようございます。
ずいぶんと時間がかかりましたね。
代表の人たちが迎えにいらして下さったので,
話を聞かせて頂きましょう。」
と,私の席に座る。
ようやく,クラス全員が揃った。
「A男さんは,前にC君をいじめていたから,なんだか怖くて・・・・・・。」
「前にD君を蹴ったりしていたから,関わりたくなくて避けてしまいました。」
「E君に意地悪をしたことがあったから,自分がやられるのが怖くて・・・・・・。」
子ども達が涙ながらに語ったのは,A男の素行を非難する言葉であった。
ただし,全員が最後に
「A男さん,ごめんなさい」
と謝罪した。
A男は黙って聞いていた。
そう,A男は元々,いじめの加害者であった。
何度も指導を繰り返してきたが,なかなか止められずにいた。
習い事や家庭環境における極度のストレスを抱えている子であった。
そのやり場を,自分より弱い者にしか見いだせず,「慢性的ないじめ癖」に自他を苦しめていた。
思い起こせば,そのA男のいじめ癖が見られなくなったのは,彼自身が被害者になり始めた頃であった。
他人の痛みに気付いたのか,自分の身を守るのに精一杯になったのかは判らないが。
判っているのは,「A男のいじめ癖を矯正したのは教師ではなく,子ども集団の修復機能であった」ということである。
だから,私もあえて見守っていたのである。
A男自身に気付いてもらうために。
しかし,今回は私が我慢しきれずに口出しをしてしまった。
A男の自覚を待つには,卒業が迫りすぎた。
子ども達が出した結論にほぼ満足した私は,こんな話をした
・・・・・・(「かっこいい生き方のススメ」に続く)・・・・・・