教室の悪魔 見えない「いじめ」を解決するために山脇 由貴子ポプラ社このアイテムの詳細を見る |
・・・・・・「卒業前のひと仕事(2)」の続きです・・・・・・
「おまえらの姑息な思惑なんてお見通しなんだよ!
何年付き合っていると思ってるんだ!
黙っていれば,いつまでも続けやがって。」
A男を避けて「旅立ちの歌」を合唱している子ども達。
水曜日の6校時。
先週,A男のスピーチにだけ,誰も拍手をしなかった瞬間の沈黙が思い出された。
歌声が頭の上を通り過ぎていく。
そこが,私の忍耐の限界だった。
「一人の人間を避けているのが見え見えの状態で,
どんなにきれいな声を出したって誰も感動しない!
それは,自分勝手な汚れた歌にしか聞こえないんだよ!!」
「・・・・・・もう少し考えろ。
それが分かるまで,あなた達の面倒は一切看ない。
卒業へは進ませない。」
それだけを言い残して,私はその場を離れた。
下校時刻,体育館の施錠に行く日直の同僚に,
「子ども達がまだ居たら,帰るように促してください。
私が言ったというのではなく,先生の判断ということで。」
と頼んだ。
思惑通り,子ども達は残って話し合っていたらしい。
何人かの女子が泣いていたという。
それも思惑通り。
卒業までの登校日数は,あと14日であった・・・・・・(その③に続く)