たろおの小屋

昼間は「聖職者」を演じる永遠の若造「たろお」のつぶやき。
仕事,家族,後遺症・・・。感謝の日々を綴っています。

無力 ~教員か、教師か~ (後編)

2009-06-02 23:48:27 | お仕事



  *(前編)の続きです。

しかし,
私たちが思っていた以上に,
死は突然だった。
4校時後のことだった。

「先程の休み時間までは普通に動いていたのに・・・・・・」
考えてみると,
人間が近づいていたから,
必死になって動いていたのだろう。
気にかけて世話し過ぎたことによって
無駄な体力を使わせて,
死を早めてしまったのだろう。

「あと1時間待ってくれれば,
 餌を買って来られたのに・・・・・・」



5校時,
鳥の死を全員に知らせる。
「えぇ?!」
と初めて聞いたという声が多かったのが意外だった。
きっと,
知っていた子ども達も,
他の子に言えなかったのだろう。

5校時も急遽,
道徳の授業に。
「公表しないから,
 自分の心に問いかけて書いてみて」
と3つの発問。

「①あの鳥は死の直前にどんなことを思っていたのだろうか?」
「②あの鳥のために,自分はどんなことをしてやったのだろうか?」
「③もっとできることは無かったのだろうか?」
これは,
私自身への問いでもあった。
静寂の中,
私も一緒に鉛筆を走らせた。


書き終わった子ども達に問うてみる。
「寿命を全うできた鳥は幸せに決まっている。
 ただ,
 巣に戻れなくなった鳥は多くいる。
 そんな鳥の一羽としては,
 あの鳥は『幸せ』だったのだろうか?
 それとも,
 『不幸せ』だったのだろうか?」

「たった1日だけでも長生きできたから幸せ」
「自然の中で死ねなかったから不幸せ」
どちらの意見も子ども達から出された。
私は敢えて
「私自身にもわかない」
と本音を話した。


更に,
「みんなに相談したい。
 私自身は③の答えが書けなかった。
 『みんなに頼んで授業を自習にして餌を買いに出れば良かった。』
 とも考えていたんだけど,
 それはできなかった。
 私は,
 みんなを自習にして餌を買いに行くべきだったのだろうか?」
と聞いてみる。
本気で悩んでいたから。


子ども達は意外にも,
私の問いに首を横に振った。
本当に意外だった。
子ども達の方がよっぽど理性的なのかもしれないし,
私を思いやってのことだったかもしれない。


何れにしても,
私自身は,いくらか救われた。

最後に,
「私が校長先生か獣医さんなら,
 あの鳥を救ってやれたかもしれない。
 私も無力です。
 みなさん,
 『力』をつけましょう。」
「私たちが『力』をつけるきっかけになれば,
 次に同じような鳥に出会ったときに,
 もう少しだけでも適切な行動ができれば、
 あの鳥との出会いも,
 そして死も,
 少しは報われるかもしれませんね。」
と話をまとめた。



結局,今回の私は,
「子ども達の安全を最優先する『教員』」にも,
「立場を捨てて命を最優先する姿を見せる『教師』」にも,
どちらにも徹し切れなかった。
どうしたら良かったのだろう・・・・・・

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