A子とB子の「冷戦」は,5年生の2学期から続いていた。
A子とB子は同じマンションに住んでおり,元々は仲も良かった。しかし,僅かな行き違いと母親の介入が原因で関係がこじれたまま平静を装い続けていた。
ところが,卒業を1ヶ月後に控えた2月中旬,休火山が噴火した。
2人とも同じ委員会で同じ曜日の担当。それでも他の子達が間に入ってうまく治めてきたのだが,
「最近,この曜日のメンバーは仕事の時間に遅れることが多い!」
と,委員会担当教員にも私にも一括された翌週,A子だけが懲りもせず遅刻したのである。
さすがにB子もムッとしていたようであるが,それでも,口をきかない程度に怒りを抑えていたらしい。
ところがA子にとっては,十分堪えたらしい。
「Bちゃんが怒っていて怖い。」
と私に訴えてきた。
そこで,やむを得ず本人同士に話をさせた。
しかし,
「Bちゃんは,いつも他の人に私の悪口を言っている。」
「そんな話していない。そんなに暇じゃない。」
と,A子の根拠のない被害者意識とB子の誠意の見られない対応が堂々巡りして埒があかない。
(確かに,B子は他の友達と遊ぶことを楽しんでいるから,A子のことなんて気に留めていないだろう。)
とうとう私も,「鎖国令」を布いた。
「お互いに,私の許可無く口をきかないこと。」
ということを約束させ,更に,学級の他の子ども達にも,
「A子さんとB子さんはどうにも上手に付き合えない。
そこで,皆さんにも協力して頂きたい。
A子さんの前でB子さんの話をしないでほしい。
逆に,B子さんの前でA子さんの話はしないこと。」
と話した。他の子ども達は
(そこまでしなくても……)
という雰囲気のまま,私の指示に従った。
そうして,A子もB子も他の子たちと「卒業までの残り少ない時間を楽しむ」こと2週間……
「先生,A子さんとB子さん,話をしていいんですか?」
という声が聞かれ始めた。
そう,いつの間にか二人の仲が修復し,一緒に登下校するようになっていた。卒業記念品の製作も,話をしながら楽しんでいる。5年生に進級したての頃のように,すっかり「親友」をしている。
荒療治が功を奏したようである。
「開けてはいけない」
という障子を開けた「鶴の恩返し」,玉手箱を開けた「浦島太郎」。
人は禁じられることをしてみたくなるのですよね♪
この方法で修復した女子の人間関係も,かれこれ10組以上になるでしょうか?(苦笑)
あとは仕上げに,
「誰が,口をきいて良いと許可したのですか?」
と,少し脅かしてあげるとしましょう……(笑)