つらつら日暮らし

新型コロナ禍の「棚経」考

8月盆が本格化しているかと思う。ただし、今年は東京五輪が盛り上がる一方で、首都圏を中心に新型コロナ禍がまん延しており、寺院の行事もかなり厳しい印象である。

そうなると、影響を受けざるを得ないのが「棚経」であろう。棚経については、【棚経―つらつら日暮らしWiki】の通り、現在の日本で、7月または8月の13日~15日(この期間は、各地域・各寺院で違いがある)までの盂蘭盆や、他の定められた時期に、祖先の霊を祀る精霊棚や仏壇を、僧侶が訪問して読経供養することを指す。

特に供物を献じて僧侶を招き読経供養することは古来から行われてきたが、盂蘭盆会では精霊棚(盆棚)を各ご家庭で設けて、寺檀関係の中で各家々を僧侶が回るようになったのは、江戸時代のキリシタンの取り締まりから始まるともされるが、どうだろうか。

そこで、新型コロナの影響から、どうしても棚経の実施が難しい状況となる可能性がある。もちろん、重々注意して寺院も檀信徒も取り組むであろうから、大きな問題は起きないと思いたいが、こればかりは個別ケースであるため、当方からは何も言えない。

昨今の都市部の寺院では、棚経をするために僧侶が檀信徒各家に出て行くのではなく、反対に各寺院に檀信徒を集めて盂蘭盆会の法要を行い、棚経の代わりとすることもあるという。以前はこのような方法に、疑義を呈したこともあったが、昨今の状況ではむしろ、その方が相応しいように思える。それほどに、新型コロナの影響は大きかったと思っていただければと思う。

新型コロナではあるが、ご先祖さまへのご供養を欠くのも忍びない。なんとか、その両方を両立させる方法を模索していきたいものだと思う。

ところで、話は変わるが「棚経」を調べていて、次のような文章を見付けた。

南葛飾の勝鬘寺といふ所から棚経に行く、受て貰ひたいと云ふ端書きが来た、私の家は真宗で盆と謂つたやうなものは無い、仏達も初耳でさぞ驚くであらうと思つた。
    「棚経」、篠原温亭『その後』(民友社・大正13年)54ページ


この文章を素直に読み解くと、この著者である篠原氏の自宅に、勝鬘寺というところから、棚経に行くという通知が来たということになろうか。しかし、篠原氏の宗旨は浄土真宗だったようで、盂蘭盆会をしないといいつつ、もし棚経に来たら、仏達も驚くだろう、という。それで、先の一文の続きを読むと、勝鬘寺の住職と、篠原氏は旧知の関係だったようで、世間話をする機会も含めて棚経に来るということになったらしい。

なかなか大らかな様子が理解出来る。今時であれば、勝手に棚経に行ったら怒られてしまいそうだ。とはいえ、聞くと、いわゆる菩提寺ではないお寺から、棚経だけ来て貰うことはあるらしい。これもそういう話に類したものだと理解すれば良いのだろうか。

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コメント一覧

tenjin95
コメントありがとうございます。
> 青天 さん

やはり、各お寺さんの方法はそれぞれまちまちのようですね。立地条件などによっても、さまざまな違いがあるということです。
青天
一応、檀家には入っていたものの(青森県の曹洞宗寺院)、家族元気で位牌堂は空っぽ(維持費だけ納めていた)から数十年。
昨年、父が亡くなり、お寺様のお世話になる機会が増えてきそうです。
わたしもイメージで「盆、正月前は和尚様が経を上げにお檀家回りをする」と思っていたものですが、お世話になるお寺様では、基本的には時間を予約してお寺に参り、各家位牌堂の前で読経供養をして頂くシステムです。
何かしらの意向でお願いしない限り、和尚様に来宅頂く機会は少ないようです。
(我が家も今のところ、枕経に来て頂いたときだけ)

どこかの地方の小さい集落では、お留守でも和尚様が家に上がって仏壇前で供養し、お檀家さんはあとからお寺にお布施を持って行く、なんて所もTVで見たことはありますが、もちろん都市部では無理でしょうし、何よりお年寄りも女性も、家にいることが少ない今日では、お寺もお檀家もお互い都合がつけづらく、棚経回りは難しいことでしょう。
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