大戒と言うは大乗戒なり。是を以てか此の中に声聞衆無し。
太賢『梵網経古迹記』巻下
これは、これまでの当方が学んできた他の文献にも引用されていたので、正直、この意味が最初に理解されていたのだが、色々と調べてみると、他にも意味がある。
爾の時、白四羯磨して大戒を受くる者……
『四分律』巻48
ここからすれば、「大戒」とは、「大僧戒」であり、比丘戒・具足戒のことである。
下衆学戒、大僧戒と異なること無し。
『四分律』巻30
「大僧戒」という用語もあるが、余り用例は多くない。一応、示しておく。
沙弥と作る者は、応に沙弥の分を与うべし。更に大戒を受くる者は、応に大比丘の分を与うべし。
『五分律』巻20
やはり、大戒を受けた者を、大比丘としている。よって、まず、大戒を比丘戒だというのは間違いないのだが、以下の用例もある。
此の千仏の大戒……
『梵網経』巻下
でも、「菩薩戒」でも「大戒」という用語を使う。先ほど「大乗戒」について論じた通りではあるが、それは『梵網経』に出ている通りである。
是れを菩薩大戒と名づけ、菩提の果を聚得す。
『菩薩地持経』巻5
今度は「菩薩大戒」という表現である。これは同経で示された「清浄戒」について論じられた箇所となるが、それはそれで一度記事にしてみたいと思っている。
戒に在家・出家有り。
在家は則ち三帰・五戒・八関・十善なり。
出家は則ち声聞小戒・菩薩大戒なり。
『賢首五教儀』巻4
こちらは、中国に来てからの綱要書ではあるが、ここだと「声聞小戒」と対比的に「菩薩大戒」と用いている。これは、声聞戒を小乗戒だと見なして用いられた表現であるが、大小の違いにドグマ性を感じる表現である。ということで、「大戒」については、「大僧」や「大乗」或いは、「大小の違い」などの意味が付与された形で用いられていることが分かった。そのため、自分の立場や信念に応じて、「大」の在処は異なることが分かる。
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