凡そ僧は、近親郷里に、信心の童子を取りて、供侍することを聴せ。年十七に至りなば、各本色に還せ。
其れ尼は、婦女の情に願はむ者を取れ。
『日本思想大系3』217頁を参照して、訓読は拙僧
条文名は、タイトルの通りで、「取童子条」となっていて、一見すると何やら「児童誘拐」的な危険な行為のように思えるかもしれないが、勿論そんな話ではない。要するに、僧侶が自分の身の回りを世話してくれる童子・沙弥などを雇う場合の条件や方法を示したのである。
なお、「僧尼令」を補う諸式(式は、律令に対する細則の位置付け)をみてみると、僧綱や内供奉など重要な役に就いていた僧侶に対して、複数の従僧を付ける旨記されているが、今回採り上げた一節はそれよりも広く適用されている印象である。つまり、男性僧侶に対しては、近所や故郷から、信心が深い童子がいれば、その者が側で仕えることを認めるべきだ、という話である。ただし、17歳になれば本色(本領などと同じで、故郷のこと)に還すべきだという。つまり、青年となれば親元に帰すことが決められていたわけである。その後、本気で出家するかどうかは、本人と家族次第だったのだろう。
それから、尼僧についても同様に童子を得ることを許したが、「婦女の情」を重視しており、要するに、女性としての感情やあり方などを理解する者を取るように示している。だとすると、童女だったのだろうか?
良く分からないが、この一節、意外と細やかに出来ているのである。
それで、釈雲照法師の註釈を見てみたが、大したことは載っていない。よって、簡単だが、記事は以上である。
【参考資料】
・井上・関・土田・青木各氏校注『日本思想大系3 律令』岩波書店・1976年
・釈雲照補注『僧尼令』森江佐七・1882年
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