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惑わせる・愛

2025-02-09 | 過去の日記
 

 昔、高校三年生の頃、
ラピスラズリを買った事がある。

それを身につけると恋人ができると
いう雑誌広告経由でね。

   かなりの高額であった気する。
(確か1マン以上もしたであろう)

高校生にとっては大きな出費だ。
高校生ではない
おっさんな今でもそうだけど。

   しかし、どうしても手に入れたい。

バイトで得た収入の残党や
お年玉の残党、
あるいは財布の中の…

とにかく
各所に散らばる残党(小銭)を
情熱的にかき集めてその販売金額を
満たしてる事を知ってからは
急いでその広告主の
郵便番号と住所とラピス◯◯◯係

(◯◯◯の部分は
その広告が載っている雑誌の
名前をいれてください…とある)

   そのラピスの広告を
だしてる主がおそらく
消費者がどこの雑誌広告から
自分たちの商品に関心を
示したんだろう?
というアンケート集計という

たくらみをも素直にそして忠実に
受け入れて官製ハガキに
アリノママを書いた僕。

   その広告主にとって
少女漫画誌なのに
男性からの申し込みもあるんだぁ
と貴重なデータになったか
どうかは知らないが

とにかく僕は
その当時、妹が購読していた
少女漫画誌の広告から
ラピスラズリを知り
いろんなラインナップの
中で気に入った星形の
ラピスペンダントを
注文という事で

ハガキ表には先に述べた記述、
ハガキ裏面には送り先(自宅)、
名前、後は占い鑑定のために
必要なデータ、
生年月日とか出生時間、出生場所、
血液型も書いたな…

そんな具合でポストに投函したのだ。

   鑑定はあの有名な
マドモアゼル・愛先生
がラピス購入者のために
してくれるとのことである。

   1週間くらい
たった頃だっただろうか?

待ちに待った
星形のラピスペンダントが
その鑑定書とともに
送付されてきた。

無我夢中で開封して
ラピスをすぐに首につけた。

装着完了して落ち着きを
取り戻してから愛先生が
鑑定した僕の生まれ持った
運勢と今後の注意などが書かれた
文章を読む事にした。

…と、ここで注意書きである。

あれから
長年の歳月を経てるし
トウゼン手元に
鑑定書はもうないし
(星形ラピスペンダントもね)

カンペキに再現できないけど
青年期に関心の高かった
部分を以下の通り要点として
書いてみる。

(特別に何をしなくても
なぜかモテてしまうニクいタイプです…
口説きの文句もマニュアル誌なんかを
頼らなくてもビシバシと
自分のオリジナリティでキメていける
スゴ腕です

その華やかさとともに
自然と理想も高くなり
女性選びもかなり辛口となるでしょう…
離婚する暗示もでていますが
すぐにまた花はあらわれるでしょう…)

文面最後には
マドモアゼル・愛先生の
力強い直筆サインもあり

僕にも

「ラピスがブルーから
トツゼン灰色のまだらに
変わりました。
そしたら素敵な
異性に出会えました…」

という広告の隅にあった
購入者の体験談
のようになるんだ!

恥を忍んで
少女漫画誌の広告から
申し込んでよかった!

と思った。

   魅力的な文面で満ちている
鑑定書と広告を
交互に改めて見直しつつ
首につけたラピスにもアツイ視線
を送ってみたり

いつ灰色に変わるんだろう?
たのしみ~

だなんていう
肌身離さずラピスという
男子校セイカツがスタートである。

  ラピスに変化が起こるとしたら
2週間後の文化祭のときの
他校の女生徒が訪れる頃かな?

そんな甘く淡い
アイスクールな妄想してた
ハイスクール最後の晩秋だった。

が、文化祭を迎えても
過ぎても
3学期も迎えても過ぎても
卒業式になっても就職しても

ラピスはひたむきなまでに
ブルーのままであった。

 それからは仕事の
関係もあり肌身離さず
つけるというわけにもいかず、

イッコウにブルーから
灰色に変わる事のない
ラピスへの情熱は
仕事の忙しさも
あったのだろう…冷めつつもあり
休日でもつけることはなくなった。

時だけが無駄に過ぎて行く…。

  ある日曜日、
机の引き出しに幽閉状態だったラピス
をふとひさしぶりにつけてみようと
思って取り出してみた
それを見ると変化があった。

でもそれはラピスがブルーから
トツゼン灰色のまだらに
変わりました。
そしたら素敵な異性に出会えました…

ではなく

ただ単にペンダント部分と
ラピスを星形に囲う
金メッキが酸化による
経年変化で剥がれて
銀色した地金がでてきたことだけである。

 落胆しつつ部屋の窓に視線を移し
そこから見える外の景色は
灰色、ココロはブルー
という皮肉な出来事を

あれから長い時間の経過を経た
という事実が
あるだよ…という言葉の挿入を
要しているが

恋するオンナのごとく
そのものすごい歳月の流れを
まるで昨日あった出来事のように
センメイにうけとめてしまう
男なのにマドモアゼルな感性の僕。

   愛先生の鑑定通り
チュウジツにあえて
特別に何もしなかったが
花を摘む出来事もなかった。

つまり青年期の華やかな
想い出はひとつもないということだ。

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