街道を行け!

街道を行く日記

スイスアルプス物語!70年も山に登れば(69)

2024-12-15 14:59:05 | 旅行

 

 『これ無料ですか!』男さん。マッターホルン完登!!

 二言目には『無料ですか?』と聞くNさん、マッターホルンを完登した。感激に咽び、顔が上げられない。彼は、一人でツェルマットまで来た。初めての海外旅行、言葉も出来ずやっとツェルマットに辿り着いた。私は彼の『無料ですか』要望になるべく応じた。ヘルンリ小屋の下にテントを張り「小屋代無料」。日本から持ち込んだインスタントラーメンの夕食で「食事無料」。ガイド料は無料とは行かないけれど、「破格の低料金」。彼が山頂で顔が上がらぬ程に感激した理由はここにあるとも言える。

 無料ですか&後で払います&やらずぶったり男

 長く「給与の受給を受ける者」であった為、「客にお金を請求して受け取る」やり取りが、不得手であった。商売を始めて、①サービスに対し無料感覚の強い人、②「後で払います」、と言う人。③「やらずブッタクリ」の人が、意外と多い事に気がついた。商売を重ねるにつれ、これら三大困ったちゃんにも対処するスキルも高めた。


スイスアルプス物語!70年も山に登れば(68)

2024-12-15 11:54:32 | 旅行

    

 無料ですか男子!マッターホルンへ!!

 33年間続けた勤めを終えガイドなった。早々にホームページを立ち上げた。そのホームページに「マッターホルン登山」の募集を入れた。その募集に応じた一人が、クリスとのモンテローザ登山の後に、日本からツェルマットにやって来た。マッターホルン登山には、客の登山技術を把握するために、岩山と雪山でのプレテストが必要になる。通常は現地のツェルマット周辺で実施する。けれど、今回のゲストは可能な滞在日数が多く取れない。そのため現地でテストを実施すると、本番のマッターホルン登山の時間が苦しくなる。そこで、「プレテスト」を残雪期の谷川岳と、上州武尊岳、谷川一の倉沢で実施した。今回のゲストは、仲間三人を連れてこのプレテストに参加した。群馬水上にテントを張り、二泊三日の登山を行った。この期間、事に触れこのゲストは『これ無料ですか?』のセリフを言った。その無料ですか男が、マッターホルン登山の為にツェルマットにやってきた。

 ちなみに前回登場のクリスは、私とのモンテローザ登山の後、現地ガイドのプレテストを受け不合格となった。町で会った時に、私の問いかけに「不合格だった。」と言い、また萎れた。『いいさ!いい医者になれよ。』と、私は日本語でクリスを励ました。

 


スイスアルプス物語!70年も山に登れば(67)

2024-12-14 07:38:51 | 旅行

 日本語で「毒づく」!

 モンテローザの山頂に続く「ルンゼ」に到着した。十数パーティーいたが、ここまで到着したのは私たちと、フランス人ガイドのパーティーと、ポーランドのTV隊だけだった。小屋からここまで、六時間半かかった。モンテローザ登山の上りのタイムリミットは六時間。タイムリミットを超えた。フランス人ガイドパーティーは、下山にかかった。私も「クリス」に言った。『登りのタイムリミットを超えたので、契約通り登頂はやめて下山する。』。彼も納得した。ポーランドのTV隊は山頂までのロケが仕事であり、山頂からはヘリで下山するので、登山を続行していった。

 またまた事件が起こった。最初は下山指示に素直に従っていた「クリス」であったが、段々と様子がおかしくなった。不平・不満が言葉や態度に現れ始めた。どうやら、ポーランドTV隊の美人リポーターに「首ったけ」になったらしい。同行出来なかった無念が、下山が進むに連れより強くなるらしい。『このニューヨーク野郎、盛りが付いた。』と、私は頭の中で毒づいた。でも、淡々と安全地帯までクリスをガイドした。装備を外しザックにしまった。クリスの態度の悪さに切れた。彼に向かい、日本語で毒づいた。『お前は、最低の客だよ。雪の状態がよくても、お前みたいなヘロヘロ野郎にこの山は上れない。』『でも、最初に私が提案した通り、明日登山を決行すれば、雪が安定していて登れる可能性があった。お前がどうしても今日登ると言うから、特別サービスで今日登山を決行した。なのにその態度は無いだろう。』

 クリスは萎れた。反省したみたいだ。因みにクリスは日本語を全く知らない。小屋でビールを飲み、ツェルマットに下った。


スイスアルプス物語!70年も山に登れば(65)

2024-12-11 16:28:40 | 旅行

  

 なんて事だ!

 翌朝、小屋から出て、砂礫や大きな岩塊の積み重なった岩山を越すと、一時間で上の氷河に出た。モンテローザ山頂へは、この氷河の急傾斜を延々と進む。氷河の上には、昨日の雪が40cmほど積もっていた。岩山の上で、ピッケルを出し、アイゼンを着けてザイルを結ぶ。ここに10程のパーティーがいたが、誰も出発しようとしない。誰もがルートファインディングとラッセルを嫌い、他のパーティーの後に着く作戦であるらしい。結局、モンテローザ頂上直下の『ルンゼ」まで、延々5時間、私とフランス人ガイドが交代でルートファインディングと、ラッセルをする事になった。後のパーティーは私たちの後を付いてきて、私たちが休むと少し離れた下で休み、私たちが出発すると付いてきた。後続のパーティーの中に「ポーランドのテレビ隊」たいたが、これも前に出ようとはしなかった。なんて事だ。


スイスアルプス物語!70年も山に登れば(64)

2024-12-11 12:05:00 | 旅行

 ニューヨークの医学生「クリス」とモンテローザへ!

 私の「キャンピング事務所」に「ニューヨークに医学生クリス」が来た。『現地ガイドとマッターホルンを登る予定であるが、日程が決まらない。日程が決まるまでにモンテローザを登りたい。ガイドして欲しい。』と、自己紹介の後に言った。『明日は荒れた天気で、明後日、回復する。明後日、出発しよう。』と、なった。しかし、一旦引き上げた「クリス」が再び現れ、『明日、小屋まで上りたい。そうすれば、明後日の好天時に山頂アタックが出来る。その後、マッターホルンに登りたいので、是非そうしてくれ。』と言ってきた。

 翌日10時にゴルナーグラード登山鉄道に乗り込んだ。この日は朝から雨が降ったり止んだりしていた。ローテンボーデンの駅で降りる。モンテローザ氷河に沿って、緩いハイキング道を一時間進む。雨が強くなって来た。一時間進んだ地点から、氷河に向かって懸崖を50m下降する。懸崖には鉄梯子が掛けられている。ザイルを使用して、慎重に降ろす。モンテローザ氷河を斜めに横断して、モンテローザ小屋が建てられている岩山に取り付く。天気は雨から霙に、そして完全な雪になった。「クリス」を励まし小屋に辿り着いた。ローテンボーデンの駅から小屋まで、約三時間。下着までビショ濡れの「クリス」を、まずは着替えさせた。モンテローザ小屋は全面に太陽光パネルを張った、超モダンな小屋で人気がある。いつも満員であるが、今日は、悪天候なので空いている。濡れた物を干してビールをのんでいると夕食になった。夕食はフルコース。食後にワインを楽しんでから部屋に入る。『明日は二時起床。朝食の後、装備を整えて四時出発!』と告げて、就寝。