「天子の弔辞」
子供の心配をする麗華に「無事だ」と伝える劉秀。安堵した麗華だったが、琥珀と陰興の様子がおかしいことに気付く。「どうしたの?何かあった?」と聞く麗華に陰興が言いかけ、琥珀が止める。麗華が「実家で何か?」と言う。琥珀が泣き始め、劉秀も麗華と目を合せようとしない。「どうなの?答えて」と麗華が言い、陰興と琥珀が跪く。
麗華は実家へ行くと言い出す。劉秀は仕方なく「3日前、新野の陰家が盗賊に襲われ、義母上と義弟の陰訢(いんきん)が亡くなった。抵抗した義兄上も重傷だ」と話す。「嘘よ」と信じたくない麗華。劉秀は興奮する麗華を抱き締める。
麗華が1人、涙を流している頃、劉秀は“麗華、どうか許してほしい。君の家族を守れなかった。この恨みは胸に刻んでおく。決着をつける”と思っていた。
鄧禹、鄧晨、李通を呼ぶと、劉秀は「李通、弔辞を代筆せよ。朕は天下に知らしめる」と言う。
「朕は不遇の時、陰氏を娶るも、兵を率いて出征し別離を味わう。幸い、事なきを得て共に虎口を脱す。陰貴人は国母の器を備えながら后位を固辞し、自ら妾となる。まさに謙譲の美徳なり。貴人の弟・陰訢は冊封される前に災難に遭い、母と共に命を落とす。朕も悲惜に堪えぬ。小雅いわく“将に恐れんとする時 維れ予と汝のみ 将に安楽の時 汝転じて予を棄てる”詩人の戒めをもって己を律するべし。貴人の亡き父・陰陸に諡と爵位を与え、宣恩哀侯に封ず。凶刃に倒れた陰訢を宣義恭侯に封じ、陰就(いんしゅう)に哀侯を継がせる。棺が陰家に届き次第、太中大夫より印綬を授け、列侯に相当する礼を行なう。使者の霊魂は、この恩寵を喜ばん」と書かせる劉秀。
劉陽は「なぜ母上は后位の固辞を?」と麗華に聞く。麗華は「“人が皆 互いを思いやれば世は平和になる”、母はずっとそう考えていたの」と答える。「もし母上が皇后だったら、陰家があんな目に遭うことも、私と妹が襲われることもなかったのですか?」と悲しそうに言う劉陽。麗華は「分からないわ。母が貫いてきた信念は間違いかも。母のせいで怖い思いをさせたわね。忘れていたわ、宮中は戦場のように弱肉強食だと」言う。
劉陽が「もう悲しまぬよう、私は兄上と勉強してもっと賢くなって、父上や天下の民に立派な姿を見せます。そして早く大人になって、妹や母上を守ります」と言い、麗華は泣きながら抱き締める。
「皇后の私を侮辱する気?陰麗華め“后位を固辞した”?恥知らず。許せない」と怒りが収まらない過珊彤。過主は「別に負けたわけではないのよ。私が陰麗華と劉秀に代償を払わせるわ」と言ってなだめる。
劉秀は麗華を思いやるが、心の傷が癒えていない麗華は冷たくあしらう。
「ご撤回を」と劉秀に頭を下げる陰興。劉秀は「麗華のためと思って拝受せよ」と言うが、陰興は「姉のため恩賞を辞退するのです」と言う。「だが麗華を敵から守るには、陰家が一層強大になるしかない」と言う劉秀。陰興は「亡き父と弟が爵位を賜り、陰家はすでに厚遇されています。私まで恩賞を頂けません」とそれでも断わる。こたび敵が暴挙に出たのは姉と陰家の勢力をそぐため、さらなる恩賞は嫉妬を招くだけ、これは亡き母と兄の教えでもあり決して背けないと。
劉秀は強制しないことにする。
陰興は「今はまだ十分な証拠がなく狼藉者を罰せません。陛下も私と同じく、姉のため辛抱なさっているのでは?私に約束したとおり陛下は姉に真心を尽くしておられる。それが何よりの恩賞です」と言う。うなずく劉秀。
陰興が侍中の職のみ拝受し、爵位を辞退したと知る麗華。麗華が怒って呼びつけると、陰興は「出る杭は打たれます。外戚は自重せねばなりません。“おごれる者は久しからず”、我々も足るを知るべきでは?さもなくば身を滅ぼします」と言う。「身を滅ぼす?私は死なんて恐れないわ」と言い返す麗華。陰興は「兄上や劉陽、陛下を道連れにすると?今は怒りを抑えてください。過家への恨みはすぐには晴らせません。晴らしたければ“忍”の一字で耐えるのです」と話す。かつて陛下は劉玄に忍従していました、陛下の長年の妻なら見習うべきでは?と。
「私だって辛抱してきたわ」と麗華が言う。陰興は「姉上だけが辛抱していると?弟の私や、陰家と陛下も耐えています。過家は今も絶大な権勢を誇るからです。“忍”は危険と紙一重。もし理性を失えば周りの者も傷つく。姉上、大業のため、どうか忍耐を。姉上の心には天下があるはず。違いますか?」と訴える。涙を流す麗華。
雲台殿。琥珀が「今夜、陛下はお越しになれぬと」と麗華に伝える。麗華が「分かったわ」と返事をすると「皇后の元へ行かれたのに…。なぜなのです。陛下も過家が黒幕だとご存知のはず」と言う琥珀。麗華は「過家を油断させ、陰家を守るためよ」と言う。
笛を持ちながら、悲しみに打ちひしがれている劉秀の元に麗華が来る。「陛下」と言う麗華に「馮異が逝った」と伝える劉秀。驚いた麗華も、笛を手にし涙を流す。
建武10年。祭遵、馮異、銚期が相次ぎ陣中で病没した。翌年、来歙と岑彭は蜀で討伐中に公孫述の刺客に暗殺された。
体調が優れなかった劉秀は、侍医から「“風眩”を患われたようです」と言われる。長年の激務がたたり、根治は難しく重傷になると失明の恐れもあると。劉秀は陰貴人や臣下にも内密に、と命じる。
劉秀の命令で、大司馬・呉漢が蜀へ出陣。ついに公孫述を破り、蜀を奪還した。これにより漢は大部分の失地を回復する。
建武13年。15年にわたる征伐の末、乱世は集結を遂げた。
却非殿。臣下たちに「朕は本日、論功行賞を行なう」と告げる劉秀。天下統一が果たされ、鄧禹や呉漢たちが次々と将軍の印を返上する。
劉秀が皆に感謝する中、劉強が「父上はかつて戦場で八面六臂の活躍をされたとか。ぜひ、お聞かせを」と言い出す。「衛の霊公は戦について孔子に問うも孔子は答えなかった。一体、なぜか?」と劉秀が聞く。劉強が答えられないと、劉秀は「己の力が及ばぬことを聞くな。今はまず治国の術を学べ」と言う。
長秋殿に戻った過珊彤は「なぜ、あんな失言を?皆の前で叱責されるなんて」と劉強に言う。「母上、故意ではないのです。ただ父上は猛将だったと陰貴人から聞いていました。ずっと興味があったので…」と言う劉強。過珊彤は「馬鹿者。お父上は今日、皆の軍務を解いた。もう戦を望まないのよ。なぜ話を蒸し返したの?」と叱る。お前は皇太子で、将来、皇位を継ぐのよ、状況を的確に把握することも覚えなさいと。
過珊彤は「今後、諸将が帰京し、朝廷には欠員が出る。お父上に過家の者を推挙するといいわ」と言う。「しかし同族の者は、大勢、爵位を受けています。ご命令には従えません」と言う劉強。過珊彤は「従えないですって?お前の今の座は、母と過家が奮闘して得たのよ。なのに母に逆らうの?一国の主となるのに自覚がなさすぎる。将来の即位に備え、腹心の大臣を擁し、己の勢力を固めないさい」と話す。劉強は「心得ました。明日、父上に進言します」と言う。
麗華は根を詰める劉秀を休ませるため、飲み物を手渡す。陛下は奴婢の解放や減税を行い、徴兵制も廃止した、民は恩恵に浴している、でも国の再興というのは焦らず時間をかけてやるものだと。納得した劉秀だったが、飲もうとして器を落としてしまう。具合が悪そうな劉秀を見て、慌てて侍医を呼ぼうとする麗華。劉秀は「少し疲れただけだ」と止める。
劉強は「朝廷に欠員が出たので、賢才を大いに抜擢すべきかと。過氏の中には文官が大勢おります。国の再興のため、人材を活用されては?彼らを引き立てれば、今まで以上に父上をもり立てましょう」と劉秀に話す。「分かった。その件については、よく考えておく」と劉秀は答える。
劉秀は劉強を下がらせた後「劉強は過家の言いなりだ。あれでは安心して天下を託せるわけがない」と麗華に言う。「皇太子は温和で何事にも慎重よ。大臣にも支持されているし、心配ないわ」と言う麗華。しかし劉秀は「劉強は気弱で頼りない。ただ、幸いなことに劉陽は聡明で気骨がある。やや無茶だが、気丈で頭が切れ、善悪の区別もつく。考えてみると、すべて両親の長所だな。劉陽がもう少し大きくなったら、劉強と共に朝政を傍聴させる」と話す。
陰興が「喜ばしい話では?」と言うと、麗華は「陛下は劉陽に帝位を継がせたいのかも。“国に二君なし”。劉陽が跡継ぎになれば、劉強は今の座を失う。過家はさておき、劉強は素直で優しい子よ。兄弟が争う事態は…」と心配する。「墨家の思想を捨てきれないんだな。どう転ぶかは分からないが、陛下と劉陽に決断させたらどうだ?」と言う陰興。麗華は「そうね、本人たちに任せるわ」と言う。
陰興と琥珀に「あなたたちは?どうするの?母上の死から早くも3年が経ち、もう喪は明けたわ。私と劉陽のせいで縁談を進められないのよね」と言う麗華。陰興は「仕方ないさ。私にはやきもきさせる姉や甥、主に忠実な想い人がいる」と言う。
朝議。劉秀は劉強と劉陽を傍聴させる中「数日前、漁陽と上谷で暴動が起きた。いずれも耕地不足が原因と聞く。存じておるか?」と言う。長らく戦乱が続き土地の管理を怠っていたのだ、と。
却非殿を出た劉強は「朝儀はどうだった?」と劉陽に聞く。「初めて父上のそばで傍聴したので緊張しました」と答える劉陽。劉強は「何かあれば聞いてくれ。父上に尋ねてもいい」と話す。
その様子を陰から過珊彤が見ていた。
「庶子が皇太子の隣で朝議を傍聴した。陛下1人の考えだろうか」と言う過康。机をバンッと叩き「卑しい妾め。あの女が陛下を言いくるめたのよ。劉強の皇太子の座を奪う気だわ」と過珊彤は言う。あの母子は陛下はおろか、善良な劉強まで手玉に取っていると。
劉強がいつ東宮に移るのか過康が聞く。「陛下は一切、その話をしないの」と答える過珊彤。過主は「劉強を認めていないのよ。過家は多大な恩賞を得るも、目立った昇進はない。かたや陰家は近頃、何人も列侯に。特に陰興は重要され、都と朝廷の警護まで任されたわ」と言う。
麗華に届ける書物を持って歩いていた琥珀に過康が声をかける。「姉上に吉報を伝えに来た」と言う陰興。その様子を見ていた過康が「吉報とは?」と言って近づく。
過康は「そうか、吉報とは陰侍中が昇進した件だな?おめでとう」と言う。「痛み入ります」と陰興は返す。
過康は「出世しても、まだ独り身とは。もしや想い人でも?」と言う。陰興が「ご心配には及びません」と答えると「貴殿は陰貴人の弟だ。娶るなら名家の令嬢であろう、のわけがない」と言う過康。陰興は「苦楽を共にでき心が通じ合う女子であれば、令嬢かかは関係ありません。用があるので失礼します」と言い、琥珀とその場を後にする。
麗華に「子陵の消息が分かった。伯父上の伝書バトによると、今、太学にいる」と言う陰興。その話を劉陽が聞いてしまう。
太学にいた厳子陵は逃げようとするが、麗華に捕まってしまう。
「決心したんでしょ?」と麗華が言う。厳子陵が「決心って何のことだ?」と聞くと「陛下が心配で戻ってきたくせに」と言う麗華。厳子陵は「何度言えば分かる。私は師匠の様子を見に来ただけだ」と返す。そんな中、部屋の外で音がする。
麗華たちがそっと外を見に行くと、中の様子をうかがう陰陽と陰強の姿が。見つかってしまった劉陽は「厳子陵殿のご高名は、かねがね伺っておりました。お会いしたいと思っていたところ、太学におられると耳にし、兄上と共にやってきたのです」と話す。麗華は「あなたを慕って来たのよ。学問を教えてあげて」と厳子陵に言う。
毎日、太学まで来る2人の皇子に、厳子陵は「今日は“本”を解きましょう」と言う。「先生の言う“本”とは民ですか?」と劉陽が聞くと「“栄辱の本は君主にあり 君主の本は国にあり 国の本は民にあり 騒乱の本は政にあり”」と言う厳子陵。劉陽が「“政”?」と言う。厳子陵は「制度と法が整わねば、国を安定させられぬのです」と話す。
劉強が退朝したあと、厳子陵の元へ行っていると知った過珊彤は「なんて愚かなの。第四皇子はお前を取り込む腹なのよ。善意などではないわ。お前を駄目にするため。太学へ連れて行くの」と言う。「私は自ら望んで学びに行っているのです」と言う劉強。過珊彤は劉強の話を聞かず「今日から、一歩も太学に入らぬよう」と告げる。
退朝した劉強は、待っていた劉陽に「私は今後、太学には行けない」と言う。劉陽は理由を聞くが、何も言わずに行ってしまう劉強。
太学へ行った劉陽は、厳子陵に「兄上は、もう来ないそうです」と伝える。溜め息をついた厳子陵は「私も発ちます」と言い、麗華に宛てた文を渡す。
厳子陵の文を読んだ麗華は「子陵は悟ったのね、いずれ内紛に巻き込まれると」と言う。「ひどい方ですね、陛下と貴人に招かれたのに去るなんて。無礼にも程があります」と言う琥珀。麗華は「彼は朝廷にいなくても、内情に通じている。関心はあるはず。ただ朝廷は利害が絡み合う戦場よ。出仕を拒んだのは、暗闘の犠牲者を見たくないからだわ」と話す。
琥珀は「貴人は厚意で皇子たちを共に学ばせたのに、過家は感謝もせず悪意と受け取った。なんて心のねじれた者たちでしょう」と言う。「彼らを警戒しろと子陵に忠告されたけど、私は百も承知よ。ただ私は争いの渦中にあり、陛下を信じる以外、何もできないの」と言う麗華。過家に目の敵にされても逃げられず、立ち向かうしかないと。
ーつづくー
劉陽と劉強が急に大きくなってしまってヾ(・ω・`;)ノ
劉強は優しくて弟と仲がよいのに、過珊彤が2人の仲を裂いている感じ。
うっそ…( ꒪д꒪ )
まさか馮異が亡くなってしまうなんて。
もっともっと劉秀を支えてほしかったし、丁柔とももっとたくさん過ごしてほしかった。
丁柔はどうしているんだろう?
麗華とまた会えるかな?(;д;)
できたら馮異の最期を見たかったかも。悲しいけど…。
劉秀の病が心配。
あと過家が今度は陰興を恨んで何かしそうで怖い(;´д`)ノ
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劉秀にとっては大きな痛手ですよね、公私ともに。
笛が本当に悲しく見えました。
劉秀の病気が気になります。
そして、過家の病気も・・・
珊彤のヒステリーはエスカレートするばかり。。。
善悪の判断が本当についていないですね(大汗)
ところで、劉強役の邱爽さん、
優しい雰囲気と優柔な感じを出されるのが本当にお上手ですね。
はまり役の一つですね!