烏威す 音に鶏鳴く 日永かな
虫の殻 曳き行く 蟻のうららかに
賽銭の 音冴え返る 祠かな
雨の日の 心ゆたかや 春祭
下駄の歯を 噛む板橋や 春の風
烏威す 音に鶏鳴く 日永かな
虫の殻 曳き行く 蟻のうららかに
賽銭の 音冴え返る 祠かな
雨の日の 心ゆたかや 春祭
下駄の歯を 噛む板橋や 春の風
うららかや網の目越しに沖の島
星あらぬ夜の雨曇り春寒し
暖や馬糧すたりの芽出し麦
春寒の炉火に補乳器温めけり
留守の戸に時計鳴りをる日永かな
人日や 農具手入れも 小半日
福寿草 帝都に春を 迎へけり
山荘や 垣山吹の 雨に倦む
石門に 照る一燈や 町朧う
手水鉢に 虫わきており 暮の春
炭火とんで焼けし畳や花の春
太鼓打つ何の布令やな初凪
若水を汲むや鐘の音梢より
夕凪の島へ一帆の初荷かな
抱かれ子に書初の筆持たせけり