はしがき
私が子供の時分に、父や母から、毎年旧十月になると、「カラサデババが来るから行儀よくしなさい。」と教へられていた。
そのカラサデババさんは、どんな方であるか目に見えず。さっぱり物事がわからずに、只、行儀よくすることに努めていた。
俳句を作るようになってから、神等去出(お斐忌み祭)とは、出雲國特有の季題であることを知ったので、私は「神等去出」の句によって俳句に活きることを決心した。
いろいろ歳時記をあさって見たが、「神集め」「神送」「神迎」「神の旅」「神の留守」神返り」「大社の神事」「神在月」などはあるが、「神等去出」はない。けれど、私は出雲俳人であるが故に、「神等去出」を季題として多くの句を詠んできた。
「獺祭」の吉田冬葉先生は出雲の旅をしておられたから、「神等去出」由来を知っておられたが、「虎落笛」の中村素山、「みどり」の松本翠影の両氏は「神等去出」の説明を求めて来たので、この稿を草することにした。
これは私が、幼い頃に父から教わっていたことを綴った。
しかし、公にするとすれば間違いを生んではならぬので、八束郡佐太村の佐太神社宮司、朝山皓先生の閲を得た。
朝山先生は「これだけ精しい神話伝説を知っておられたあなたのお父上は相当にえらいお方であったでしょう」との賛辞を頂いたので、「虎落笛」「みどり」に発表した。
また、細木芒角星先生からは、改造社出版の「歳時記」による記事を知らせて頂いたので、其の記事を巻末に加えておく。
昭和三十一年大神等去出日
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます