5/26はゲストをお呼びする代わりに、ゼミの担当講師の戸舘弁護士が講義をしたあとディスカッションをやりました。
〈戸舘弁護士の講義〉
講義では、戸舘さん自身が貧困問題に関わるようになった経緯を交えつつ、ゼロゼロ物件・追い出し屋・ホームレスといった住まいの貧困問題を中心に話してもらいました。
戸舘さんは最初刑事事件を主に担当する弁護士になりたかったそうなんですが、何かのきっかけで路上相談会(弁護士が野宿者や生活困窮者からの相談を無料で受ける会)に行ったときのこと。
ホームレスの方の多くは借金を抱えていて、その取立てが怖いからアパートに入れないという相談を受けた。
でも、消費者金融とかからの借金は5年で消滅時効になる。だから、「消滅時効ですよ」と言うだけでその人は救われてしまったらしい。今までその人が路上で苦労してたのは何だったんだって話。これくらいのことで救われる人がいるということと、弁護士が一番多い東京でもたったこれだけの司法サービスが受けられない人がいるというのが衝撃的で、以来貧困問題に由来する事件を多く扱うようになったらしい。
やっぱり「少しのことで変えられる」っていう実感が、何か行動を起こすきっかけとしては大事なのかな、と思いました。
ゼロゼロ物件っていうのは敷金・礼金がゼロの格安物件で、それを餌に低所得者を釣って、家賃の滞納が1日でも遅れたら鍵を勝手に交換したり家具を捨てたりして追い出すような悪徳業者が存在する。特に戸舘さんは「スマイルサービス」っていう業者から受けた被害の対策弁護団事務局長をやっているそうです。
こういう業者に引っかかったりしてホームレスになるとどうなるか。住所不定だと定職に就きづらいのですが、そもそも憲法25条で「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されていて、生活保護制度があるんだから本当だったら住居が無い人にはすぐアパートとかへの入居費用が支給されるはず。
そうならないのは、福祉事務所の職員の多くが「水際作戦」というのをとっているから。水際作戦とは、住所不定だと生活保護が受けられない、生活保護申請に付添い人は認められない、などの嘘をついて需給させないようにすること。こんなことしてるせいもあって、生活保護制度の補足率(本来所得水準等から見て受給すべき人のうち、実際に受給している人の割合)は3割くらいしかないらしい。これを私は去年初めて聞いたんですが、まさか役所の人間が嘘をついているとは思わなかったからかなり驚きました。
ただその裏には福祉課が予算削減とか人員不足で常にオーバーワーク状態なことがあって、彼らを単に責めれば問題が解決するわけでもない。
そうはいっても、行政の酷い対応をそのままにするわけにもいかないから、今新宿区を相手に七夕訴訟が行われています(6月21日に最終弁論がありました)。
〈ディスカッション〉
残った時間で、これまでのゼミの感想と要望を一人一人話しました。貧困を自分自身の問題として捉えないと、という感想が多かったと思います。使用者側(以前ブラック企業・派遣会社に勤めてた人とか)や行政の福祉担当側の話を聞いてみたいという要望もありました。
(文責:上野)