快読日記

日々の読書記録

読書中『名作うしろ読み プレミアム』斎藤美奈子

2016年06月03日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
6月2日(木)

自分は「筋」を記憶するのが本当に苦手、ということに『名作うしろ読み プレミアム』(斎藤美奈子/中央公論新社)を読んでいて気づいた。
小説の読後、その筋がほとんど頭に残っていないのだ。
印象的な場面が浮かぶことはある。
ハッとしたセリフが記憶に残ることも(たまに)ある。
食べたことのない料理の味や、嗅いだことのない孤島の風の匂いを覚えてることだって(さらにたまに)ある。
でも、例えば男Aが芸妓Bに入れあげて、それを知ったAの妻Cが従兄弟のDと結託して仲を裂こうとして…(ってどんな話だ)とか、そういう「筋」はふわーっと忘れてしまうみたいだ。
『名作うしろ読み』で既読の小説が取り上げられていて、そのあらすじを読んでも「はて? そんな話だったっけ?」だ。
愕然とする。

そこへ行くと斎藤美奈子はまとめるのがうまいなあ、あんなにコンパクトに、しかも、解説や突っ込みをしながらだもんな~、と感心した。

あと、昔の名作って意外と波瀾万丈で派手な話が多いな、と思いました。

読書中『名作うしろ読み プレミアム』斎藤美奈子

2016年06月02日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
6月1日(水)

フランケンシュタインって、あの怪物ではなく、彼をつくった科学者の名前なんだそうだ。
へぇ~、知らなかった!とつぶやきながら『名作うしろ読み プレミアム』(斎藤美奈子/中央公論新社)を読む。
本当は ♪ふんがーふんがーフランケン~ によってつくられた怪物~♪だったんだなあ、としみじみと寝る。

読書中『言葉一つで、人は変わる』野村克也

2016年05月26日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
5月24日(火)

『言葉一つで、人は変わる』(野村克也/詩想社)を読む。
たくさん本を出しすぎてネタがかぶり、
さらに同じエピソードでも内容が本によって変化し、
結局のところ自画自賛であったとしても、
やっぱり野村語録はおもしろい。

人を変えるより、自分が変わる方がはるかに確実だし、そもそも他人を変えたいなんて思わない。
なのになんでこの本がぐいぐいくるかと言えば、野村目線ではなく“彼から言葉を掛けられて変わった人”の気持ちで読むからだ。

読了『他人の支配から逃げられない人』片田珠美

2016年04月17日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
4月16日(土)

『他人の支配から逃げられない人』(片田珠美/ベスト新書)を読了。

人間の行動基準には「快感原則」と「現実原則」というのがあるそうだ。
この本で知った。
例えば激しいDVを受けて、“離婚する”“反撃する”などというのが「快感原則」、“そんなことをして状況を悪化させたら子供もかわいそうだし、離婚したら経済的に困るのは明白だからここは我慢しよう”とか考えるのが「現実原則」。
なるほど~。学者って分類がうまい。皮肉ではなく。


北海道の女子高生が祖母と母親を殺害した事件をはじめ、実際に扱った患者の例も多く、説得力はあるが、最後の「処方箋」で披露される対応策はいまひとつ。

じゃあ、おまえはどう対処すればいいと思ってるんだ?と問われたら、ごめんなさいと謝るしかないが、なんか違う気がする。

でも、批評しっぱなしにしたくないという姿勢に好感を持つ。


あと、例えば周囲にパワハラやいじめを受けている人がいたとして、その人から相談を受けるとき、何に注意したらいいか、という話題で、
まずその人の言い分に客観性があるかどうか調べろ、被害者ぶりたいだけの人もいるし、励ましをいじめと解釈する人もいる、うっかりそんな人を擁護したら自分の立場が危ない、という指摘が現実的でいいと思った。

読了『大人に質問!「大人ってどのくらい大変なんですか?」』みうらじゅん

2016年03月21日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
3月20日(日)

「年を取ると一日、一ヶ月、一年とどんどん時間が短くなります。そう感じるようになるのは生きていることに慣れちゃったからです。」(27p)

なーるーほーどー!と笑いながら感心しながら『大人に質問!「大人ってどのくらい大変なんですか?」』(みうらじゅん/飛鳥新社)を読み終わる。
突拍子もない答えより、中庸な考えが目立ち、意外と胸にしみる。

夜、『死を悼む動物たち』(バーバラ・J・キング/草思社)を読み始める。
プロローグに登場した、離ればなれになったヤギの母娘が1ヶ月半後の再開で喜び合う姿を想像しながら寝る。

読了『世につまらない本はない』養老孟司 池田清彦 吉岡忍

2016年02月29日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
2月28日(日)

『世につまらない本はない』(養老孟司・池田清彦・吉岡忍/朝日文庫)の後半は、さまざまなテーマ(例えば、米国・科学・ミステリー・ノーベル文学賞などなど)のお薦め本を語り合う鼎談。
3人とも歯切れがいいので、まさにバッサバッサというかんじで、その本の核心をついたり概略をつかんだりしていておもしろい。
丁々発止っていうのか、ああ言えばこう言うっていったらほめ言葉にならないのか、ともかく読みたい本が増えること必至。
ただ、自分が知らない、あるいは苦手なジャンルならいいんだけど、ちょっとでも思い入れがあるジャンル(ここでは近代文学)に関して、彼らがそれを例のバッサバッサで斬り捨てていくような感触があって、若干の抵抗がある。


夜、『飢え』(群ようこ/角川書店)の続きを読んで就寝。

読書中『世につまらない本はない』養老孟司 池田清彦 吉岡忍

2016年02月27日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
2月26日(金)

『世につまらない本はない』(養老孟司・池田清彦・吉岡忍/朝日文庫)の前半、半分強を占める養老孟司の文章がもう、いちいち感銘を受けた。いちいちの使い方が違うか。
こういう大人は、あとどれくらい生きていてくれるんだろう。
そして彼らがいなくなって、「運命は自分の手で切り開くものよ!」みたいな、なんでもかんでもコントロールしないと気が済まない人たちが社会の舵取りをするようになったら(もう既になってるか)、一体どうなっちゃうのか。
ひろさちやは『「けち」のすすめ』で“社会の変化に期待するな。国家も政治家もあてにならない。むしろ今の不安を、我が身の欲望から出た錆と考えて、その不安を飼い慣らすことができる哲学を持て”といっている。
中島義道→ひろさちや→養老孟司、ってつながる気がしませんか…って誰に聞いてるのか。


ちょっと疲れたので漫画『ピアノソナタ殺人事件』(高階良子/講談社)を読んで寝る。
特に3つめの「ばらのためいき」という短編が昔から異様に好きだ。
もう100回以上読んでいる。
これを買った小学生のわたしが知ったらさぞかし驚くだろう。

読書中『「けち」のすすめ 仏教が教える小欲知足』ひろさちや

2016年02月25日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
2月24日(水)

久しぶりにひろさちやの本を読む。
『「けち」のすすめ 仏教が教える少欲知足』(朝日文庫)。

「今、抱えている不安、あなたはその正体を知っていますか。(略)わたしはあえてお聞きしたいと思います。その不安はあなた自身がつくりだしたものではないでしょうかと」(13p)

ハッとする。
次の瞬間、ひろさちやを読み始めた30歳ちょい前、ほぼ同じ意味のフレーズ(「あなたは勝手に悩んではいないか」だったと思う)に今と同じようにハッとしたのを思い出した。
全然成長していないのか。

わたしは特にこれといった不満や不安の原因があるわけではなく、だけど時々疲れたときなんかに「果たしておれはこれでいいのか」と考えてしまう。(けど数秒後には違うことを考えている)

ひろさちやに言わせるとこういう人こそ「欲の塊」なんだそうだ。
なるほど~!やられた~!と唸りながら寝る。

読了『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』ハマザキカク

2016年01月17日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
1月16日(土)

『ベスト珍書 このヘンな本がすごい!』(ハマザキカク/中公新書ラクレ)を読んだ。
ヘンな本と言っても、「どうこれ、ヘンでしょ」なあざといやつと、「シャレオツ」感が強いものはある程度排除してあるので大丈夫。
(でも佐藤雅彦は入っちゃってる)
ピックアップされたのは100冊。

例えば「難洗衣料事故事例図鑑101」なんて本は、クリーニング業界に向けてのみ書かれたもので、クリーニングで失敗した衣類の無惨な姿と解説が読めるという。読んでみたい。

「門鉄デフ物語-切取式除煙板調査報告」の「デフ」というのは、機関車のフロントについた煙を上に逃がす板のことなんだそうで、この本はその「デフ」にのみスポットをあてた本。

扱っている世界やターゲットが狭くなればなるほどおもしろい。

写真集・学術専門書・エログロまで、買ってまでは読みたくないけど読んだ人の話は聞いてみたい、という本がいっぱい並んでいる。

他人から見たら「なんでそんなところを」というような場所を、様々な事情でせっせと掘り進む人たちの存在を意識するだけで幸せな気分になる。

先行のこの類の本と比べると、突っ込みや分析、他ジャンルへの発展、みたいな部分は弱い。

「真夜中の図書館」谷山浩子

2015年10月19日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《☆☆ 10/12読了 ヤマハミュージックメディア 2015年刊 【読書案内 書評】 たにやま・ひろこ》

世間でよくいう“子供の必読書”をほとんど読んでこなかった、というのがわたしの弱点であり、実は隠れた(そして屈折した)プライドでもあります。

だからここで谷山浩子が挙げている数々の童話や児童書のうち、既読なのは1割か2割弱というところ。
でも、“谷山浩子の読書”を読むってのがそそるじゃないですか!
なんだかメルヘンとかファンタジーの世界の人みたいな印象ですが、
昔からその世界観は意外とクールで(冷徹とさえ思えることもある)洞察力もするどいし。
高致死率な毒もあるし。
最近書くものはそこに“年輪”も加わってますますコクがでてきてる。

本書も、子供のころに読んだ印象と、若い頃、そして現在で感じ方が違うという話が何度か登場し、
そこらへんにも谷山浩子の思考的なふくよかさが表れていると思いました。

彼女の曲とリンクした作品(例えば「車のいろは空のいろ」)もあって、ファンはニヤニヤしてしまいます。

/「真夜中の図書館」谷山浩子

「人間の生き方、ものの考え方」福田恒存

2015年09月08日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《☆☆☆ 9/7読了 2015年刊 【日本のエッセイ 講演録】 ふくだ・つねあり(1912~1994)》

福田恒存が昭和37年から55年にかけて学生たちに行った特別講義録。

特に「タブー」について論じた項の迫力がすごくて、「原爆を落とされたということは、日本にとって特権ではなくて屈辱なのであって、(略)「広島から世界に平和を」というような思い上がった気持は一体何か、原爆を落とされるような人間に原爆を止めさせる力がありますか」(131p)とか「人命尊重ということについて私は非常に疑問 」(126p)とか、ドキッとしました。
なんだか、こう考えておけば安全、こう言っておけばだいたい通用する、みたいないい加減でずるい考え方が見透かされ、正面から「よく考えろ」と見据えられてるかんじ。
この知力と胆力にぐいぐい引っ張られてビシビシ叱られたい。

第一、「人間の生き方、ものの考え方」なんていうタイトルで、本当にそれをまともに語っているなんて、すごい本ですよね。
右だ左だというのは相対的なもの。
世間がどちらにふれてもソワソワせず、立ち止まってしっかり頭を使わねば!と 思いました。

唯一「自己犠牲」に対する考えがいまいちすんなり飲み込めませんでした。
文庫になったら買って再読してみます。

今年読んだ本の中で一番グッときた。

/「人間の生き方、ものの考え方」福田恒存

「プライドが高くて迷惑な人」片田珠美

2015年05月05日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《☆☆ 2/6読了 PHP新書 2014年刊 【精神医学 社会批評】 かただ・たまみ(1961~)》

俺を誰だと思ってるんだ!
誰に口をきいているんだ!
と爆発しちゃう人の心の内を分析、彼らへの賢い対応、だけでもおもしろかったけど、最後に「自分がそうならないために」という予防策を提示してくれてあるのがいい。
そういう人にひどい目に遭わされた人でも、気づいたときにはそっち側ってことも充分ありえますからね。

本文は頭のいい女ならではの切れ味のよさで、読んでてすっきりする場面も多かったです。
一方で、「耳ざわりのいい」などの誤用が気になるし、何より接続詞的に文頭に「なので」を使うのが嫌でした。

去年読んだ「無差別殺人の精神分析」がものすごくよかったから読んでみたんですが、本書はそれよりくだけた分、雑さがちょっとだけ目立った本でした。

/「プライドが高くて迷惑な人」片田珠美

「本が多すぎる」酒井順子

2014年11月16日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《11/15読了 文春文庫 2014年刊 【書評】 さかい・じゅんこ(1966~)》

タイトルは、ある大型書店で著者が耳にしたおじさん客の叫び。
たしかにおじさんのその気持ちわかる。
わたしもそう思う。
読みたい本、読まなきゃいけない本、読んどいた方がいい本、今が読みどきな本、……ああ!何を読んだらいいの?
仮に1年間に100冊読んだとしても、一生に1万冊は読めないわけで、そう考えるとハズレは引きたくないからつい冒険を避けて、結局、特定の書き手のものや信頼できる書評がおしてるものだけを読むことになってしまう。
んー。まあ、それはしょうがないか。
書評を読むのは、自分が読みたい本を探す以上に、自分はきっと読まないだろうという本を読んだという人の感想を知りたい、という目的。
ああ、世の中にはおもしろい本がまだまだ無限にあることよ、と未読本に思いを馳せながらこの世とお別れするのもいいかもね。

それはともかく、酒井順子の書評本。
週刊誌連載の比較的短い文章をまとめたものであることと、ふだんの腹にいちもつありそうな敬体ではなく、ちょっとキリッとした常体であることで、いつもより若干歯切れがよい印象。
でも、やんわりたおやかなようで、チクリと対象を刺す酒井節はここでも生きています。
1回に3冊くらいの本を数珠繋ぎ的に取り上げているのも、テーマの深化や拡大が感じられておもしろかったです。

/ 「本が多すぎる」酒井順子

「阿呆の知恵」ひろさちや

2014年10月16日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《10/11読了 角川oneテーマ21(角川書店) 2013年刊 【人生訓 仏教】 ひろさちや(1936~)》

ちょっと疲れたときには、ひろさちや。
この適度ないいかげんさと、実は結構過激なところが好きです。

「わたしたちは世の中のために生きているのではありません」(38p)

「わからないことをくよくよ考えてはいけません」(115p)

ひろさちやファンはたくさんいても、ひろさちや信者というのはいない気がする。

向上心を持って、とにかくポジティブに!っていう風潮に嫌気がさしたときに、ひろさちやの本おすすめです。


「阿呆の知恵」とありますが、筆者が「知恵」と「智慧」を使い分けている以上、タイトルも「智慧」を使うべきだったかなと思います。

/「阿呆の知恵」ひろさちや

「天才バカボン幸福論。夜のつぎは朝なのだ。」バカ田大学しあわせ研究部 編

2013年10月13日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《10/12読了 主婦の友社 2010年刊 【名言集 漫画 赤塚不二夫】》

コニャニャチハ。

最近こういう癒し系名言集がよく出てる気がするのだ。
でも、赤塚不二夫ほど「癒し」から遠い人はいないのだ。

各名言の横に紹介されている「天才バカボン」の一部を読むだけでも意外と時事ネタが多くて、世間に対する皮肉や批判も目立つし、常識にケンカを売っていておもしろいのだ。たまにドキッとするのだ。

「あーっ サクラがちったらスッキリしたっ」(96p)

パパに憧れる人はたくさんいるだろうけど、誰でもパパになれるわけじゃないのだ。

どうでもいいことにこだわったり、考えても仕方ないことをくどくど考えたり、わかっちゃいるけどやめられないのだ。
自分は自分でしかないのだ。

「魚の形をまねしてアンコがはいっているたいやきのどこがいいのだ!! それよりタコの形をまねしない まるくてしょっぱい「たこやき」のほうがずーっとおいしいのだ!!」(34p)

/「天才バカボン幸福論。夜のつぎは朝なのだ。」バカ田大学しあわせ研究部 編