快読日記

読書とともにある日々のはなし
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「屋根屋」村田喜代子

2014年07月09日 | 日本の小説
《7/6読了 講談社 2014年刊 【日本の小説】 むらた・きよこ(1945~)》

主人公の主婦は、一人息子が高校生なので、40代後半から50過ぎくらいか。
家の雨漏りの修理にたまたま呼ばれた屋根屋・永瀬と、夢の中で待ち合わせて一緒に旅をする話です。
SFとも恋愛ものとも違う、「主婦とシュール」の組み合わせは、例えるなら塩キャラメルとかチョコレートがけのポテチ。

中年以降の女性が自己解放と冒険を望むとき、相棒は夫以外の男になるんですね、そこらへんも自然だし、説得力も充分。
主人公は大人すぎていまひとつ共感できませんでしたが、永瀬という朴訥とした九州男の魅力と夢の景色の迫力にやられました。
上空から眺める町の屋根たちの描写がまたいい!
男に先導されて、日常の象徴である「いらかの波」をゆうゆうと見下ろす開放感!

ラスト、もしも主人公がもう片方の道を選んでいたら…というバージョンも読んでみたいです。
乱歩の「押し絵と旅する男」みたいな世界ですかね。

全体的には女にとって都合のいい、甘い話だという気も若干するけど、そういうのもたまにはよろしいかと。

「何も心に残すことがなかように、眼ば閉じてください」
「死ぬ間際の人間に言ってるみたいね」
「はい。状況はよう似とりますたい」
(略)
「安心して先に行ってください。私も後から追いかけます。向こうで必ず逢えますから」(100p)

/「屋根屋」村田喜代子