期待には応えてもらったぞ!
第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品で、
「日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006」でも絶賛されてたから読んでみた。
五十代の作者の、これがデビュー作なのだそうだ。
どちらかというとみっしり身の詰まった描写で、スピード感がない代わりにコクはあると思う。
「ホラーサスペンス大賞」という帯から「ホラー」を期待すると肩透かしを食らうだろう。
主人公は、離婚して高校生の息子・文彦と二人暮しの女性。
その息子がある夜、ごみを出しに行ったまま帰ってこない、というのが発端。
これはきっとすぐ映画化されるんだろうな~と思った。
黒木瞳主演だったらいやだなあ、とか。
高畑淳子だったらまあいいかな、とか。
登場人物はどれも濃い目で印象的なんだけど、
結局、だれにも感情移入はできなかった。
母親って、常に息子の姿に夫を重ねているのか、そりゃあ嫁いびりをするわけだ、などと下世話なことも考えたり、こちらの読み方がいいかげんなのか、結局あのことはどうなったの?ってのがいくつか残ったりした。
しかし、全般的にはたっぷり楽しめたと思う。
どの人物にものめりこめなかったのは、意外とすべての人物に対して等分にスポットがあたっているからか。
でも、「亜沙美」メインでもちょっとうっとうしいし、別れた夫にもっと焦点を当てられても気持ち悪いし(この元夫、萩尾望都「残酷な神が支配する」のおやじを連想してしまった)、息子中心だと現実味が薄まりそうだ。
ってことはこれでいいのか、なあんだ^^
そういえば、人物の設定が思いがけずステレオタイプだったかもしれない。
だからスムーズに読めたともいえる。
ん~、小説って難しい。独創的だからいいってもんじゃないらしい。
ああ!桐野夏生を薄めてやわらかくして飲みやすくしたみたいなかんじ。
2作目が出たら読むかと聞かれたら、答えはYESだ。