快読日記

日々の読書記録

「どてらい男 第二部 第一巻 利殖編」花登 筐 徳間書店

2006年01月31日 | 日本の小説

「商人とは。」


例の東横●ンの社長がくしくも口にした「私も商人ですから」というせりふを、
この山下猛造が聞いたらただでは済まないだろう。
いや、あきれ果てて、どやしてもくれないかもしれない。
怒るっていうより、悲しむだろうなぁ。
商人にとって一番大事なことは何か。
第一部で“商人というのは物を作るわけではなく、出来上がった品物を右から左へちょいと動かすだけで金が入ってくる”といったフレーズがあった。
だからこそ商人は血の小便を出す思いで、頭を下げ続け、知恵を駆使し、利鞘を稼ぐのだ、という。
知恵(頭脳)と心(ハート)をフル稼働して、商売を転がし、人をひきつける山下猛造のかっこいいことといったら。
昔ドラマ化されたときに山下猛造役を演じた西郷輝彦が、今度は舞台でやるらしいけど、
ここはぜひ山本太郎でやってもらいたい。年齢的にもキャラクター的にも絶対いけると思うのだが。


内容を紹介すると、冒頭は「おまけ」の話。
頑固なようで実は柔らかいのがモーやん(猛造の愛称)の美点だ。
可塑性が高いっていうのか。
自分の間違いに気づく判断力を持ち、納得すると即座にそれを改める行動力がある。
こういう人には周囲も助言しやすいので、よいアドバイスを取り逃がすことも少なくなる。
まあ、助言する方も生半可な態度では逆にどやされてしまうから、それなりの覚悟が必要なんだけど。
ここでモーやんは、お客を呼ぶために、店の二階で食事をふるまうのだが、
その「食事」という「おまけ」は「本当のおまけ」なのか。
商売の師である大石将軍の言葉を思い出し、「わしがまちがっていた」と気づく猛造。

それから、何度言っても客に頭を下げられない社員。
商人にとって頭を下げるということは、工員が機械のスイッチを入れるのと同じだ、と説得すると、
逆に「演技をしろということか」とくってかかる。
あー、昔からこういう人はいたのね。
結局、この件ではモーやんは彼らをクビにして(月給を下げたらやめていった)、
「つまりは人間次第や」という結論に達する。
金と信用で食っていくのが商人なんだという原理をとことん見せてくれる。
その実践編とでも言うべきなのが社長である猛造自らが立ち上げる労働組合の話と、後半のプレス産業との駆け引きの話。
テンポもいいし、せりふの一言一言のキレも良くて、わしわし読んでしまうおもしろさだ。
第一部では子供のころから青年期までが描かれていて、
(感想文を書いていますhttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/2561/bookmoku.htm に目次があります)
そっちもおすすめだけど、未読でも十分楽しめます。
やっぱり猛造最高!って言いたいのはそれだけなのか。
というわけで、第二部第二巻に早く取り掛かりたいところなんだけど、
図書館の蔵書点検に入ってしまってちょっとの間待つことになりました。くーっ!!モーや~ん!


こういう本、ホリ●モンの差し入れにうってつけだと思う。誰か読ませてあげて。

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