「はじめて大人になる人へ」
春日武彦との共著(「健全な肉体に狂気は宿る」角川oneテーマ21)がおもしろかったので。
最初の方に何度か「クリアカット」という言葉が出てくるが
この本自体がまさにその「クリアカット」な論なので
ガラクタでごたごたした頭の中がすっきり整理されたような読後感を味わえる。
まあ、実際はごたごたしたまんまなんだけど。
「正論家の正しさは『世の中がより悪くなる』ことによってしか証明できない。
したがって、正論家は必ずや『世の中がより悪くなる』ことを無意識に望む
ようになる。
『世の中をより住みやすくすること』よりも『自説の正しさを証明すること
』を優先的に配慮するような人間をわたしは信用しない。」(81p)
(アダルトチルドレンに関して)
「(略)特殊な病人だとは思わない。たんなる『役に立たない社会人』だとみ
なしている。
『役に立たない』と査定するという点において私は彼らを差別しており、
『社会人である』ことを認める点において私は彼らと連帯している。
この『差別しつつ連帯し、嫌悪しつつ受け容れる』という背反的な身振
りのうちに社会の『健全』は集約されるとわたしは思う。」(203p)
「『常識は永遠に常識である』とするか、『棄てるべきものは、今すぐ棄
てろ』とするか、どちらかに決めてすっきりしたいという方々ばかりである。
常識の多くは、賞味期限が来たら『腐る』。賞味期限が来るまでは『食べら
れる』。そういうものである。
『いずれ腐るものは棄ててしまえ』ということ言う人もいるが、それを棄
てると、そりあえず他に食べるものがない、という場合もある(民主主義
とか国民国家とか一夫一婦制というのはそういう『もの』だ)。」(269p)
「だが、競争社会というのは、全員の代替可能性を原理にしている社会である
(だから『競争社会』は必ず『マニュアル社会』になる)。」(305p)
考える筋力が弱いと、どうしても踏ん張りが利かず、すぐに「もうかんべん。白か黒かどっちかにして。正解は?」となってしまい、そうして出した結論はたいていがお粗末で使い物にならない代物で耐久性も低い。答えを急ぐということが、結果、話を混乱させ、ぐずぐずにさせてしまうのだ。本書ではそのあたりの解決策として「折り合いをつける」という言葉をポジティブに取り入れ、「話を複雑にする方が話は早い」という提言をしている(177p)。
社会が抱える問題は、必ず私個人の抱える問題とリンクする。“この社会は俺を映す鏡だ”って尾崎豊も言ってたし(←いやホントに)。世の中は、それをいかにも簡単に、チープなキーワードを並べて分かったフリしてやり過ごすけど、そうじゃなくてとにかく考え続けること。それが、誠実ってことなんだろうなあ、と思う。
単行本として出たときにもちょっと気になっていた本なのだが、やはり(2年半後の)今、このタイミングで文庫になって読めたことはラッキーと言えるんじゃないか。「人間は必ずその人が必要とするときに必要とする本に出会う」(55p)んだから。
春日武彦との共著(「健全な肉体に狂気は宿る」角川oneテーマ21)がおもしろかったので。
最初の方に何度か「クリアカット」という言葉が出てくるが
この本自体がまさにその「クリアカット」な論なので
ガラクタでごたごたした頭の中がすっきり整理されたような読後感を味わえる。
まあ、実際はごたごたしたまんまなんだけど。
「正論家の正しさは『世の中がより悪くなる』ことによってしか証明できない。
したがって、正論家は必ずや『世の中がより悪くなる』ことを無意識に望む
ようになる。
『世の中をより住みやすくすること』よりも『自説の正しさを証明すること
』を優先的に配慮するような人間をわたしは信用しない。」(81p)
(アダルトチルドレンに関して)
「(略)特殊な病人だとは思わない。たんなる『役に立たない社会人』だとみ
なしている。
『役に立たない』と査定するという点において私は彼らを差別しており、
『社会人である』ことを認める点において私は彼らと連帯している。
この『差別しつつ連帯し、嫌悪しつつ受け容れる』という背反的な身振
りのうちに社会の『健全』は集約されるとわたしは思う。」(203p)
「『常識は永遠に常識である』とするか、『棄てるべきものは、今すぐ棄
てろ』とするか、どちらかに決めてすっきりしたいという方々ばかりである。
常識の多くは、賞味期限が来たら『腐る』。賞味期限が来るまでは『食べら
れる』。そういうものである。
『いずれ腐るものは棄ててしまえ』ということ言う人もいるが、それを棄
てると、そりあえず他に食べるものがない、という場合もある(民主主義
とか国民国家とか一夫一婦制というのはそういう『もの』だ)。」(269p)
「だが、競争社会というのは、全員の代替可能性を原理にしている社会である
(だから『競争社会』は必ず『マニュアル社会』になる)。」(305p)
考える筋力が弱いと、どうしても踏ん張りが利かず、すぐに「もうかんべん。白か黒かどっちかにして。正解は?」となってしまい、そうして出した結論はたいていがお粗末で使い物にならない代物で耐久性も低い。答えを急ぐということが、結果、話を混乱させ、ぐずぐずにさせてしまうのだ。本書ではそのあたりの解決策として「折り合いをつける」という言葉をポジティブに取り入れ、「話を複雑にする方が話は早い」という提言をしている(177p)。
社会が抱える問題は、必ず私個人の抱える問題とリンクする。“この社会は俺を映す鏡だ”って尾崎豊も言ってたし(←いやホントに)。世の中は、それをいかにも簡単に、チープなキーワードを並べて分かったフリしてやり過ごすけど、そうじゃなくてとにかく考え続けること。それが、誠実ってことなんだろうなあ、と思う。
単行本として出たときにもちょっと気になっていた本なのだが、やはり(2年半後の)今、このタイミングで文庫になって読めたことはラッキーと言えるんじゃないか。「人間は必ずその人が必要とするときに必要とする本に出会う」(55p)んだから。