野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成29年5月3日 花桐から伊豆ヶ岳を経て子ノ権現

2017年05月06日 | 奥武蔵へようこそ
(花桐川)

平成27年に「奥武蔵登山詳細図」(吉備人出版)が出る以前から伊豆ヶ岳には東尾根ルートと花桐川ルートというバリエーションルートが歩かれてきた。今回はそのうち明治大正期の地形図にも記載がある古い道である花桐川ルートを歩いてみた。現在は直接伊豆ヶ岳へと取り付けるルートになっているのだが、元々は伊豆ヶ岳の北隣にある五輪山を巻いて長岩峠へと繋がっていたらしい。そこで花桐川を遡行して途中から五輪山の東尾根に取り付いてみる計画を立てた。下山は伊豆ヶ岳から縦走して、子ノ権現から吉田山へ行く予定だったが、時間切れで滝不動から車道を歩いて帰ることになった。

朝7時に西吾野駅に着く。これでも十分早い時間ではあるが、本来は始発電車で来て歩く予定だった。40分ほど遅れての出発となるので、吉田山はパスすることになりそうだ。駅前の坂道を下って北川道路を見送ると国道299号に出る。この辺りの国道を歩くのは三社の山之神から高山不動へと歩いたとき以来だ。まずは久通川との合流点である畑井地区を目指して歩く。交通量の多い国道を行くと椚平の集落をバックに天久保山が聳えているのが見える。昨年のGWはあそこを歩いていたのだったな。何だか随分と前のことのように感じる。椚平に限らず、国道沿いの集落はどこも開けていて、あまり山奥の集落という雰囲気はない。

(国道299号から天久保山を望む)

子ノ権現への案内板が見えてくると畑井地区に着く。ここも新しい住宅が多く、狭山丘陵辺りの新興住宅地を見ているようだ。住宅地を抜け、分岐を入り、高麗川を渡る。ここからしばらくは久通川沿いに歩く。実は山歩きを始めた頃、この久通川沿いの車道を歩いて子ノ権現へと行ったことがある。そのため何となくこの辺りの景色に見覚えがあるのだ。民家が少なくなってくると子ノ権現への案内板と諏訪神社入口を示す古い石柱が立つ花桐林道との分岐に着く。花桐川を覗くと下流には水流が無く、普段は伏流となっているようだ。

(畑井地区の住宅街)


(奥から手前へ久通川が流れる)


(花桐川 下流は水がない)

車道をしばらく歩くとようやく花桐の集落が現れる。以前歩いた岩井沢地区ほどではないものの、ここもだいぶ山奥にある集落にもかかわらず、どの家にも人が住んでいるようだ。集落をやや進んだ所に諏訪神社があり、旅の安全を祈ってお参りしていくことにした。入口にあった鳥居は古いものであったが、拝殿は比較的新しいもののようだ。諏訪神社から先も花桐林道沿いには点々と民家が続き、最後の民家を見送るとクルマの転回場となっている。「奥武蔵登山詳細図」(吉備人出版)によると西ノ平というらしい。林道はここで終わり、杉林の中に明瞭な踏み跡が延びている。ここまで1時間弱かかっており、正丸駅から伊豆ヶ岳を目指すルートに比べると随分と長い距離を歩かされた。

(花桐地区)


(諏訪神社)


(西ノ平)

歩き始めは比較的明瞭な道が続き、古くから歩かれてきたルートなのだろうなと感じさせる。傾斜も緩く、山頂直下の急坂さえなければ歩きやすい道なのではないだろうかと思い始めていた。ところが高度を上げていくにつれて踏み跡が消えている所が増えてきた。渡渉も頻繁に繰り返すので、山慣れていない人が歩くには少々難しいかもしれない。また傾斜が緩やかな分広い沢なので、やや見所に欠けるきらいがある。大きな露岩の斜面がある花園沢を過ぎると沢は狭くなる。踏み跡のない所は沢の中を登っていく。水量は少ないので防水の利かない靴でも足を濡らすことはないだろう。

(花桐川の流れ)


(標高を上げると落葉樹も出てくる この辺り踏み跡は明瞭)


(左手にちょっとだけ見えるのは花園沢の一枚岩)

炭焼き釜の跡を過ぎると踏み跡は沢の右岸を行く。しかし時計の高度計を見ると標高600メートル付近で、そろそろ伊豆ヶ岳へ直登する沢との分岐に差し掛かる頃だ。そこで右岸の踏み跡には入らず、更に沢の中を進む。すると予想通りに同じくらいの大きさの沢に分かれている。左の沢が伊豆ヶ岳方面で、右の沢は伊豆ヶ岳と五輪山の鞍部に繋がっている。明治大正期の地形図ではもう少し下った辺りから五輪山東尾根に取り付いていたようだが、傾斜が急すぎて無理だった。沢の出合から右の沢に少し入ると五輪山東尾根を見上げることができる。傾斜も比較的緩そうなので、この急斜面を上がってみることにした。地面が柔らかく歩きやすいとは言い難いものの、獣道が幾筋か通っており、それを利用してジグザグに上がっていく。10分ほど急斜面と格闘して何とか尾根の上に出ることができた。ここは地主の意向で立入禁止になっている区域だが、正丸駅へと下るハイキングコースからはそれほど離れていないはずだ。

(炭焼きの跡)


(ここで山頂ルートから外れる 左手が伊豆ヶ岳へのルート)


(何となく登れそうな感じだが、踏み跡があるわけではないので、やはり歩き難い)

ハイキングコースと遜色ない踏み跡を進むとすぐにハイキングコースに合流する。距離にして10メートルくらいだろうか。ここから先は歩き慣れた道で、地図無しで歩くことができる。途中同年代の男性二人組が休んでいた。今日初めて山中で人に会った。おそらくこの先は多くのハイキング客で賑わっていることであろう。岩の露出したやや急な斜面からは二子山から川越山にかけての展望が得られる。新緑の雑木林と杉檜の林がパッチワークのようで悪くない景色だ。五輪山の手前で五輪山と伊豆ヶ岳との鞍部へと向かう巻き道が分かれている。どうせ伊豆ヶ岳へ向かうので巻き道を進む。

(ハイキングコースに合流 新緑が美しい)


(尾根の露岩から 左端が二子山 その右隣が甲仁田山 右に目立つ山が川越山と正丸山)

鞍部に着くと伊豆ヶ岳の岩場に取り付いているのか子供たちのものらしき歓声が聞こえてくる。岩場を使わない予定だったが、時計を見るとまだ9時だ。鎖場を登っている時間は十分にある。岩場の下に立つと以前にも思ったことだが傾斜はそれほど急ではない。鎖は重いので、できるだけ使わずに手掛かり足掛かりの多い所を探って登っていく。ちょうど他に登っている人がいなかったのでジグザグに傾斜の緩い所を狙って鎖を使わずに岩場の頂上直下まで登ることができた。頂上直下は傾斜が急すぎるので脇の草付きから回り込んで頂上に出る。武川岳から二子山にかけての尾根を見渡すことができるが、特に無骨な二子山・甲仁田山の連山とまだ冬枯れの雑木林に覆われた909メートルの展望台のピークがよく目立つ。あちらの尾根が新緑に覆われるにはあと1~2週間はかかりそうだ。

(五輪山と伊豆ヶ岳との鞍部)


(伊豆ヶ岳の鎖場)


(鎖場の頂上からの眺め 左端に見切れているのが武川岳 少し右へ行くと909メートル峰が聳える)

鎖場の岩場から下ると伊豆ヶ岳山頂の手前にもう一つの大岩が立ちはだかる。以前これを東から巻いていって滑落しそうになったので、今回は素直に岩場を乗り越えていくことにする。ハイキング客で渋滞する岩場を登ると西側に大きな展望が広がる。鎖場を通るのは子供の頃を含めて今回で4度目になるが、この展望の存在には気付かなかった。伊豆ヶ岳には他にも何度も登っていたのに随分と損をしてきたと痛感させられた。中央には前武川岳と武川岳が陣取り、背後には大持山から鳥首峠へかけての尾根が延び、その位置関係がよくわかる構図になっている。ここを訪れただけでも今日の山歩きは十分価値がある。正直なところ花桐川遡行でかなり疲労していたのでもう下山してもいいくらいに感じていた。岩場を越えると広く細長い山頂になっており、標識のある辺りはかなり混み合っている。そこで葉桜となった山桜が傍に立つ岩場で休憩を取ることにした。

(二つめの大岩)




(大岩からの眺め)


(伊豆ヶ岳の山頂部)

ロールケーキとお茶を摂ったところで出発。伊豆ヶ岳の山頂(850.9)は落葉樹に囲まれて見晴らしは無いが、新緑が美しい。これだけ落葉樹があるなら紅葉の時期も期待できるかもしれない。南へ下ると山伏峠との分岐で若いカップルに出会う。子ノ権現へ向かいたいというので天目指峠方面へ下るように教える。地図を持っていても初心者のうちは結構迷うものなのだ。古御岳との鞍部へは急斜面の下りで、前を行くカップルを見ながらゆっくりと下る。鞍部に下るとクマの目撃情報を示す標識が括り付けられている。4月28日といったらつい最近じゃないか。上久通へ下る分岐を見送り、古御岳の登りに取り掛かる。伊豆ヶ岳に負けず劣らず急な斜面で、前を行くカップルも難儀しているようだ。朽ちかけた土留めの木段を避けつつ登り、何とか古御岳の頂上(820)に出る。ここも見晴らしはないが、伊豆ヶ岳と同じく新緑が美しい。飯能アルプスは杉檜ばかりというイメージはあるが、正丸峠からこの古御岳にかけては割と新緑・紅葉が楽しめるのではないかと思う。

(山頂で茶屋を営んでいたお婆さんのレリーフ)


(伊豆ヶ岳の山頂標識)


(クマ注意の標識 落葉樹が多い所なので出没するのかもしれない)


(古御岳頂上)


(頂上で新緑を楽しむ)

古御岳から高畑山への下りもかなり急。但し鞍部まで下りてしまえば、あとは高畑山まで比較的緩やかなアップダウンしかない。なお最初の鞍部の南にある小ピークから名郷へ下る道もあるそうだ(「山と渓ときのこと酒と」様のコミ岳4の記事が詳しい)。ただ現地から見るととても上り下りできそうにない急斜面になっている。小ピークを越えてやや急な斜面を下ると細長い鞍部に送電鉄塔管理用の黄色いポストが立っている。これは「奥武蔵登山詳細図」にある柏木入右岸尾根ルートへの分岐だ。アセビの低木が生える広い道を進めば少しの登りで高畑山(たかばたけやま695)に到着する。杉檜に覆われた見晴らしの無い山頂だが、結構広くてベンチが数基置いてある。落葉樹林よりも虫が少ないので、ここでも少し休憩を取っていく。

(古御岳山頂から急斜面の下り この辺りも雑木林が美しい) 


(名郷の採掘所)


(アセビの回廊 どうしてもここは写真が撮りたくなる)


(高畑山頂上)

高畑山から傾斜の緩い尾根を下っていくと前方が明るく伐採されているのが見える。近寄ると送電鉄塔の周りが大きく伐採されていた。近年奥武蔵では古い送電線が撤去される方向にあり、ここも対象の一つとなったようだ。尾根の両側が大きく伐採されたので、北側は関八州見晴台からツツジ山までが、南側は藤棚山や棒ノ嶺などが見渡せる。鉄塔を過ぎると再び檜の林を進む。傾斜の緩い落ち着いた道で如何にも奥武蔵らしいなと感じる。前回は気付かずに巻いてしまった中ノ沢ノ頭へ寄ろうと気を付けていると分岐にしっかりと道標となる標識が木に括り付けられていた。中ノ沢ノ頭(イモグナノ頭 622.7)には小さな山頂なのに三角点と不釣合いなほどの立派な山頂標識が設置されている。

(送電鉄塔の立つ小ピーク)


(伐採地から北側の展望)


(伐採地から南側の展望)


(奥武蔵らしい落ち着いた檜林の道)


(中ノ沢ノ頭分岐には道標がある)


(中ノ沢ノ頭頂上)

中ノ沢ノ頭から天目指峠へは以前指摘したように危険な岩場を通過する必要があった。今回もそのつもりで身構えていたのだが、尾根の南側をトラバースするように道が付け替えられていた。好ましい変更ではあるが、トラバース道も急傾斜で決して歩きやすい道とは言い難い。このトラバース道を下りきってしまえば、あとは天目指峠まで緩やかに下るだけだ。天目指峠周辺も微妙に道が付け替わっているような感じがしたが、先ほどのトラバース道ほどではない。天目指峠(あまめざすとうげ)にある東屋で休憩を取り、子ノ権現への登りに備える。何せ大変なのはこれからなのだ。

(天目指峠)

天目指峠から子ノ権現へは三つの小ピークを越えていかなければならないのだが、どれもが結構急傾斜のアップダウンを強いられる。まずは東屋脇から木段登り。木段を登りきると木の根が縦横に生えた急坂だ。木が弱ってしまうのであまり根っこを踏みたくないのだが、ここはどうしても踏んでいかざるを得ない。先人も木の根を避けていくのか道が大分広がってしまっているのが気掛かりだ。ここを登りきるとベンチのある小ピークで吹上山への分岐にもなっている。ここで休憩していた女性に声を掛けられる。女性の話によるとトラバース道に付け替えられたのはここ1年あまりのことらしい。次のピークはかなり急傾斜でしんどいが他の登山者の迷惑にもなるので、のんびり歩く訳にもいかないのが辛い。最後は小さな社が立つ愛宕山。ここを下れば子ノ権現まではあと一息だが、竹寺方面への分岐辺りがかなり荒れている。土留めの木段を設置し直さないと危険なほどだ。

(小さな社の立つ愛宕山頂上)

落葉樹の多い子ノ権現の境内に入り、まずは北の展望台へ。ベンチのある展望台なのだが、意外にも観光客は少なく、登山者のカップルが昼食を取っているだけであった。お昼近くになり、あまり展望は冴えないが、それでも関八州見晴台から丸山にかけての眺めが良い。よく見ると三社辺りの集落が見えるようで、国道はかなり渋滞しているのがわかる。これは早めに帰らないと秩父観光を終えた人たちのラッシュに巻き込まれそうだな。

(北の展望台からの眺め)


(子ノ権現からは伊豆ヶ岳・古御岳の連山がよく見える)


(子ノ権現本堂 枝垂桜にはかろうじて花びらが残っていた)


(参道から棒ノ嶺を望む)

本堂でお参りを済ませ、あとは降魔橋経由で吾野駅へ真直ぐ帰るだけだ。杉檜の暗い林の中を九十九折に下ってゆき、降魔橋を渡るとそこからは俗界。ここを過ぎると青場戸地区の民家が点在するようになるので、聖と俗との区分けが随分とはっきりしている。芳延地区から線路沿いの遊歩道を行き、踏切を渡れば吾野駅は近い。しかし吾野湧水で顔を洗っていこう。墓地脇にある湧水に着くと飲料禁止の注意書きがある。供用し始めた頃にはなかったので、水質検査で大腸菌でも検出されたのだろうか?駅に着くと電車が来るまでまだ10分ほどある。いつも電車に乗るのがギリギリだったので、久しぶりにのんびりと待って帰ることができた。

(青場戸地区への入口 あいかわらず浅見茶屋の幟で賑やかだ)


(降魔橋までずっと檜林の中の道が続く)


(降魔橋)


(青場戸地区の民家)


(浅見茶屋)


(線路沿いの遊歩道から ここもどうしても写真が撮りたくなる)


(吾野鉱山脇の新緑)


(吾野湧水 以前は飲料可能だったんだけどなぁ…)

DATA:
西吾野駅7:06~7:26畑井地区~7:59花桐川林道終点(西ノ平)~8:59伊豆ヶ岳と五輪山の鞍部~9:18伊豆ヶ岳9:27~9:45古御岳~10:13高畑山~10:36中ノ沢ノ頭~10:53天目指峠~11:29愛宕山~11:33子ノ権現11:46~12:07降魔橋~12:11滝不動~12:34芳延地区~12:56吾野駅

地形図 正丸峠 原市場

花桐川ルートは踏み跡が消える所もあり、初心者の入山には向きません。また駅から登山口が遠いルートなので、人気の山にしては歩く人は多くありません。

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