(伊豆ヶ岳東尾根の紅葉)
注意:伊豆ヶ岳東尾根はバリエーションルートです。バリエーションルートを歩いた経験がない人の入山は控えてください。
奥武蔵で一二を争う人気の山である伊豆ヶ岳は登路の多い山だ。現在一般ルートとしては南北の縦走ルート(長岩峠・五輪山コース)と山伏峠からのルートがある。一方主なバリエーションルートとしては花桐川ルートと伊豆ヶ岳東尾根ルート、そして久通川ルートとがある。このうち、花桐川ルートは2017年に歩いている。今回はバラガ平尾根とも呼ばれる東尾根ルートを歩いてみることとした。行程は西吾野駅から森坂峠を越えて下久通へ下り、麓の琴平神社から東尾根に取り付く計画だ。伊豆ヶ岳に登った後は旧正丸峠まで足を延ばす予定だったが、正丸峠から車道を使い、峠ノ沢を下って正丸駅へと出ることになった。
森坂峠を越えて琴平神社
11月の最終日。かつてならそろそろ寒さが厳しくなる時期であるが、朝暗い内から家を出てもそれほど寒くはない。飯能で秩父行の電車に乗り込むと意外と登山客は多い。これだけ人出があるということは、まだ紅葉が楽しめるのかもしれない。西吾野駅に7時過ぎに着く。外は快晴だ。ボクと同じくここで降りる登山客が多い。皆どこへ向かうのだろう?国道へ出て、南に下る。最初に見えてくる橋が森坂峠の入口だ。
ゲートの横をすり抜け、広い林道を上がる。この辺りは伐採作業が入っており、重機が置かれ、雑然とした雰囲気だ。ただ登山道は以前に来た時と同じく明瞭で、朝一としてはそれなりにきつい急坂を登っていく。暗い林の中を登っていくと尾根に出る。森坂峠に到着だ。あまり峠という雰囲気を感じられないのはここが新たに作られた峠だからなのだが、その辺の詳細は2022年の記事を参照していただきたい。
(登山道は以前と同じく明瞭)
(小さな沢沿いに上がる)
(結構急な道)
(森坂峠)
峠から下久通へと下る道はかなり細く、かつ谷へ傾斜しているために歩きにくい。ただ今回は直接伊豆ヶ岳へと取り付く道を歩く予定なので、それほど急ぐ山旅ではない。ゆっくりと確実に下っていく。V字谷が見えてくれば傾斜も緩み、沢沿いに進んで下久通の集落に出る。一旦下って日用(ひゆう)橋を下り、上久通へと登り返す。途中に琴平神社への道があるはずだが、どの辺りだろうか?「奥武蔵登山詳細図」(吉備人出版)を見ると、琴平神社の入口付近には「久通73」と書いてある。電柱に似たような標示があるので、それを頼りに進んでみるとしよう。
(滑りやすい道を下る)
(V字谷が見えてきた ここから傾斜は緩くなる)
(下久通へ出る)
(日用橋)
(馬頭観音の碑)
電柱を一つ一つ確認していくと「久通73」の標示を見つける。その奥には神社のものらしき鳥居が見える。民家へと続く舗装された坂を上がると民家脇に鳥居へと続く山道が延びている。鳥居の手前には赤とオレンジに色付いた木々が美しい。鳥居を潜って石段を上がると岩壁の前に社がある。これが琴平神社かと思ったが、左の道を上がると更に石段があり、それを登り切った所が琴平神社であった。神社の左には明瞭な尾根が延びており、これが伊豆ヶ岳東尾根で間違いないだろう。
(久通73の標示がある電柱 奥に鳥居が見える)
(鳥居前の紅葉が美しい)
(途中にある社)
(石段の上に本殿がある)
(琴平神社)
(神社の左手には道が延びる)
伊豆ヶ岳東尾根を登って山頂へ
伊豆ヶ岳東尾根ルートは古い地形図に道形が載る道であり、かつてはメインルートとして使われてきたものと思われる。実際に足を踏み入れてみると確かに明瞭でしっかりとした尾根道だ。但し琴平神社のある尾根は派生尾根であり、主尾根に出るまではやや急な坂が続く。主尾根に出ると琴平神社を示すテープがある。これがなければ下るのは難しいだろう。
(伊豆ヶ岳東尾根 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)
(主尾根に出た所)
主尾根は比較的緩やかな道が続く。尾根が南に派生する所には枝で通せんぼしてある。その先は小さな鞍部になっており、奥武蔵登山詳細図によると登ットという所らしい。登ットより先はやや急な登り坂となる。すると見上げるような急坂に差し掛かる。道はジグザグに切ってあるものの、薄くわかりにくい。ここを何とか登り切るとドラえもんの人形が乗っかった私製の道標がある。道標には狢入(むじないり)山と書かれている。尾根の一部のような雰囲気ではあるが、尾根が分かれる所はピークでもあるので、山と看做すのは間違いとはいえない。
(南に尾根が派生する所 枝で通せんぼしてある)
(登ット 小さな鞍部だ)
(かなりの急坂)
(急坂を登り切ると狢入山に着く)
狢入山から延びるフラットな尾根を進むと再度急坂が現れる。ただ狢入山ほどのきつさはなく、登り切った所が物見台跡だ。物見台という名が付けられているが、現在は檜に覆われた小平地だ。物見台から10分弱歩くと542m峰に着くが、物見台跡よりも小さな山頂である。542m峰を過ぎるとまたも急坂に差し掛かる。古くからある道にしては急坂ばかりで歩きやすいとは言い難い。現在は廃れてしまった理由はこの辺りにあるのだろう。急坂を登り切った先は奥武蔵登山詳細図だと展望と書かれているのだが、落葉樹に覆われているだけで特段展望が良いような感じはしない。
(物見台跡)
(542m峰 特に標識などはない)
(またも急坂 しんどい道だ)
(急坂を登り切った所 特に展望はない)
670m峰までは緩やかな尾根が続く。落葉樹が増えてきて紅葉も楽しめるようになってきた。670m峰に着くと標高670mを示す標識が付けられている。のび太君の人形が一緒に括り付けられていたので、狢入山の道標を整備したのと同じ人が設置したのだろう。山頂は落葉樹に覆われていて、紅葉が美しい。伊豆ヶ岳周辺は落葉樹が多い所と認識していたのだが、東尾根は歩く人が少ないので静かに紅葉を楽しみたい人にはうってつけかもしれない。
(670m峰)
(670m峰周辺の紅葉)
670m峰からフラットな尾根を歩いていくとバラガ平と思われる場所に着く。檜に覆われた広くフラットな尾根だ。バラガ平から下り、細い尾根を登り返す。奥武蔵登山詳細図には藪と書かれた部分があるが、実際に歩いてみると多少枝が張り出す程度だ。一応迂回路らしきものはあるが、敢えてそれを使う必要もない。
(バラガ平)
(バラガ平を過ぎると落葉樹が多くなる)
(細い尾根 藪は煩くない)
(巻き道があるが歩きやすいとは言い難い)
(とにかく落葉樹が多い)
左手に急な尾根が下っているのが見えてくると立っているのがやっとの急坂が現れる。歩きやすそうな所が他にないか周囲を見回すものの、直登する以外に道は無さそうだ。気を抜いたら転げ落ちそうな斜面を5分ほどじりじりと登ると少し傾斜の緩んだ尾根の上に出る。振り返ると今し方登ってきた斜面の紅葉が黄色く鮮やかだ。次の小ピークに上がるまで様々に色付いた紅葉の尾根が続く。
(わかりにくいがかなりの急坂)
(斜度はこのくらい 真っ直ぐ上がるのは不可能)
(尾根に出て振り返ったところ)
(山頂直下の巻き道が現れるまで色付いた落葉樹を楽しめる)
小ピークを越え、伊豆ヶ岳山頂直下の急坂に差し掛かる。ここもかなりの急傾斜で一応登ることはできるらしい。しかし今回は巻き道を使って伊豆ヶ岳山頂の南へと出ることにする。というのも、古い地形図を見ると山頂を巻いて尾根を越し、山伏峠へと下っているのだ。今歩いている道がかつての道と全く同じというわけではないが、できるだけ近い道を辿りたいという思いはある。巻き道はかなり薄い道でおまけに谷側へ傾いているので下りに使うのは結構難しそうだ。斜面を横切りながら登っていき、尾根を越える。この尾根のほうが巻き道との分岐よりも傾斜が緩いように見える。尾根を越えると道は更に薄くなる。歩きやすい所を適当に下っていくと広い道の上に出る。古御岳と伊豆ヶ岳を結ぶ縦走路に出たのだ。
(山頂直下の急坂を見上げる 左手の踏み跡が巻き道)
(トラバースしながら尾根を越える)
(ここからも山頂方面に行けそうだが…)
(道はかなり薄い)
(縦走路に出た)
ここから先はもう歩き慣れた道である。伊豆ヶ岳の山頂直下はかなりの急坂だが、上りに使うのであれば危険な所は少ない。登り始めた途端、多くの登山者とすれ違う。流石は人気の山だ。種々に色付いた落葉樹を愛でながら10分ほど登り、山伏峠への道を見送ると岩場に出る。伊豆ヶ岳の山頂(850.9)に到着だ。山頂もやはり人が多い。それでも山頂の看板がある岩場から下りて広い尾根までやってくれば腰を下ろせるスペースは十分にある。当初は伊豆ヶ岳の山頂で昼食の予定だったが、ちょっと時間が早すぎる。もう少し人の少ない所まで下ることにしよう。
(山伏峠分岐辺りの落葉樹)
(伊豆ヶ岳の山頂)
(山頂の岩場を越えると広い尾根になっている)
小高山から峠ノ沢を経て正丸駅
山頂から北へ下るとロープで通せんぼされた岩場がある。鎖の掛けられた岩場であるが、その手前の眺めの良い所で写真を撮る。なかなか良い眺めだが、鎖場の直上に比べると枝が煩い感はある。ロープのある所まで戻り、西の斜面を下る。どんどん登山者が登ってくる。早めに山頂を離れて正解だった。山頂直下の急坂さえ下ってしまえばあとは広い道が下っていく。歯抜けの木段にも巻き道が付いているのでかつてよりは歩きやすくなった。鎖のある岩場から少し登り返せば五輪山に着く。広い山頂でベンチもあるが、まだ正丸駅から訪れる登山者が多い。もう少し先へ行こう。
(伊豆ヶ岳の山頂部北側からの眺め)
(五輪山)
五輪山を下ると正丸峠まで緩やかなアップダウンが続く。歩きやすくてお気に入りの道だ。正丸駅と名栗げんきプラザを結ぶ長岩峠から少し登ると小高山(720)に着く。ここも行き交う人は多いが、五輪山ほどではないはずだ。山頂の北にあるベンチに腰掛け、昼食のカップラーメンを作る。調子よく火は点いたのだが、沸騰する前にガスが切れてしまった。生煮えではあるが、今日は暖かかったので麺が硬いということはなかったのが幸いだった。
(五輪山を下ってしまえば緩やかな尾根が続く)
(長岩峠)
(小高山の山頂)
(山頂から二子山と甲仁田山を望む)
(小高山はベンチが多いので休憩に最適)
(小高山付近もそれなりに紅葉が楽しめる)
小高山より先も歩きやすい道は続く。正丸峠にある奥村茶屋までやってくると店の裏手の道が通行止めになっていた。裏の斜面が崩落する危険があるという。店の前の斜面を下るとモミジやツツジの木が赤く色付いていて、紅葉の見頃であった。金属製の階段で正丸峠に出る。さてこの後は川越(かんぜ)山と正丸山を越える予定であったが、気分的に下山モードに入ってしまった。そこでこのまま車道を下り、途中から峠ノ沢へと下ることにした。
(正丸峠へは良い道が続く)
(奥村茶屋の裏手は通行止め)
(奥村茶屋の前にある大蔵山集落へと下る谷に植えられたモミジやツツジ)
(奥村茶屋)
奥武蔵登山詳細図によると正丸峠から峠ノ沢までは35分ほどかかるようだ。だが比較的傾斜の緩い車道なので、下りで膝が痛むようなことはない。快調に下り、25分ほどで峠ノ沢への入口に着く。ここはかつての秩父往還道で、車道が越える現在の正丸峠が開削されるまではメインルートであった。九十九折を下り切ると沢の側に出る。傾斜が緩やかで歩きやすい。ただ沢沿いの道ということもあってか、橋が流されたりしてやや荒れた雰囲気もある。
(現在の正丸峠の峠道から見られる紅葉)
(ここから秩父往還道に入る)
(沢沿いの道は結構緩やか)
(橋が流された所 以前よりは荒れ気味)
一旦南の支流に入り、再び本流へと戻ると北側に大きな岩が見えてくる。ここは峠ノ沢一番の見所であるが、太陽の日差しが低い時期はちょっと冴えない感じだ。それでも写真を撮ってみると紅葉の色は悪くない。この大岩を過ぎると道は格段に良くなり、石仏を過ぎれば正丸の集落に出る。峠ノ沢は終始薄暗かったが、正丸の集落内は暑いと感じるほどに太陽の光が降り注ぐ。八坂神社を過ぎ、国道へ出れば正丸駅はすぐそこだ。駅前の売店でお土産でも買おうかと思ったのだが、時刻表を見るとすぐに電車が来てしまうようだ。泣く泣く買い物を諦めて飯能行きの電車に乗り込んだのであった。
(峠ノ沢一番の見所である大岩)
(よく整備された道)
(石仏 ここまで来れば正丸の集落は近い)
(八坂神社)
(正丸駅前の売店)
DATA:
西吾野駅7:09→7:35森坂峠→7:47日用橋(下久通地区)→8:04琴平神社→8:25登ット→8:37狢入山→8:45物見台跡→9:20 670m峰→9:26バラガ平→10:02古御岳・伊豆ヶ岳縦走路→10:11伊豆ヶ岳10:23→10:33五輪山→10:43長岩峠→10:45小高山11:04→11:26正丸峠→11:49秩父往還峠ノ沢→12:16八坂神社→12:22正丸駅
地形図 正丸峠
トイレ 縦走ルート上にはない
交通機関
西武池袋・秩父線 小手指~西吾野 387円
西武秩父・池袋線 正丸~小手指 419円
関連記事:
平成29年5月3日 花桐から伊豆ヶ岳を経て子ノ権現
2022年11月13日 吹上山と紅葉の古御岳・伊豆ヶ岳
未踏だった区間:琴平神社~古御岳・伊豆ヶ岳縦走路
伊豆ヶ岳東尾根はバリエーションルートです。道標などは最小限しかないので地形図を読み解く能力が必要です。また急坂が連続するルートなので、安全に歩くのであれば登りに使ったほうがよいでしょう。
注意:伊豆ヶ岳東尾根はバリエーションルートです。バリエーションルートを歩いた経験がない人の入山は控えてください。
奥武蔵で一二を争う人気の山である伊豆ヶ岳は登路の多い山だ。現在一般ルートとしては南北の縦走ルート(長岩峠・五輪山コース)と山伏峠からのルートがある。一方主なバリエーションルートとしては花桐川ルートと伊豆ヶ岳東尾根ルート、そして久通川ルートとがある。このうち、花桐川ルートは2017年に歩いている。今回はバラガ平尾根とも呼ばれる東尾根ルートを歩いてみることとした。行程は西吾野駅から森坂峠を越えて下久通へ下り、麓の琴平神社から東尾根に取り付く計画だ。伊豆ヶ岳に登った後は旧正丸峠まで足を延ばす予定だったが、正丸峠から車道を使い、峠ノ沢を下って正丸駅へと出ることになった。
森坂峠を越えて琴平神社
11月の最終日。かつてならそろそろ寒さが厳しくなる時期であるが、朝暗い内から家を出てもそれほど寒くはない。飯能で秩父行の電車に乗り込むと意外と登山客は多い。これだけ人出があるということは、まだ紅葉が楽しめるのかもしれない。西吾野駅に7時過ぎに着く。外は快晴だ。ボクと同じくここで降りる登山客が多い。皆どこへ向かうのだろう?国道へ出て、南に下る。最初に見えてくる橋が森坂峠の入口だ。
ゲートの横をすり抜け、広い林道を上がる。この辺りは伐採作業が入っており、重機が置かれ、雑然とした雰囲気だ。ただ登山道は以前に来た時と同じく明瞭で、朝一としてはそれなりにきつい急坂を登っていく。暗い林の中を登っていくと尾根に出る。森坂峠に到着だ。あまり峠という雰囲気を感じられないのはここが新たに作られた峠だからなのだが、その辺の詳細は2022年の記事を参照していただきたい。
(登山道は以前と同じく明瞭)
(小さな沢沿いに上がる)
(結構急な道)
(森坂峠)
峠から下久通へと下る道はかなり細く、かつ谷へ傾斜しているために歩きにくい。ただ今回は直接伊豆ヶ岳へと取り付く道を歩く予定なので、それほど急ぐ山旅ではない。ゆっくりと確実に下っていく。V字谷が見えてくれば傾斜も緩み、沢沿いに進んで下久通の集落に出る。一旦下って日用(ひゆう)橋を下り、上久通へと登り返す。途中に琴平神社への道があるはずだが、どの辺りだろうか?「奥武蔵登山詳細図」(吉備人出版)を見ると、琴平神社の入口付近には「久通73」と書いてある。電柱に似たような標示があるので、それを頼りに進んでみるとしよう。
(滑りやすい道を下る)
(V字谷が見えてきた ここから傾斜は緩くなる)
(下久通へ出る)
(日用橋)
(馬頭観音の碑)
電柱を一つ一つ確認していくと「久通73」の標示を見つける。その奥には神社のものらしき鳥居が見える。民家へと続く舗装された坂を上がると民家脇に鳥居へと続く山道が延びている。鳥居の手前には赤とオレンジに色付いた木々が美しい。鳥居を潜って石段を上がると岩壁の前に社がある。これが琴平神社かと思ったが、左の道を上がると更に石段があり、それを登り切った所が琴平神社であった。神社の左には明瞭な尾根が延びており、これが伊豆ヶ岳東尾根で間違いないだろう。
(久通73の標示がある電柱 奥に鳥居が見える)
(鳥居前の紅葉が美しい)
(途中にある社)
(石段の上に本殿がある)
(琴平神社)
(神社の左手には道が延びる)
伊豆ヶ岳東尾根を登って山頂へ
伊豆ヶ岳東尾根ルートは古い地形図に道形が載る道であり、かつてはメインルートとして使われてきたものと思われる。実際に足を踏み入れてみると確かに明瞭でしっかりとした尾根道だ。但し琴平神社のある尾根は派生尾根であり、主尾根に出るまではやや急な坂が続く。主尾根に出ると琴平神社を示すテープがある。これがなければ下るのは難しいだろう。
(伊豆ヶ岳東尾根 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)
(主尾根に出た所)
主尾根は比較的緩やかな道が続く。尾根が南に派生する所には枝で通せんぼしてある。その先は小さな鞍部になっており、奥武蔵登山詳細図によると登ットという所らしい。登ットより先はやや急な登り坂となる。すると見上げるような急坂に差し掛かる。道はジグザグに切ってあるものの、薄くわかりにくい。ここを何とか登り切るとドラえもんの人形が乗っかった私製の道標がある。道標には狢入(むじないり)山と書かれている。尾根の一部のような雰囲気ではあるが、尾根が分かれる所はピークでもあるので、山と看做すのは間違いとはいえない。
(南に尾根が派生する所 枝で通せんぼしてある)
(登ット 小さな鞍部だ)
(かなりの急坂)
(急坂を登り切ると狢入山に着く)
狢入山から延びるフラットな尾根を進むと再度急坂が現れる。ただ狢入山ほどのきつさはなく、登り切った所が物見台跡だ。物見台という名が付けられているが、現在は檜に覆われた小平地だ。物見台から10分弱歩くと542m峰に着くが、物見台跡よりも小さな山頂である。542m峰を過ぎるとまたも急坂に差し掛かる。古くからある道にしては急坂ばかりで歩きやすいとは言い難い。現在は廃れてしまった理由はこの辺りにあるのだろう。急坂を登り切った先は奥武蔵登山詳細図だと展望と書かれているのだが、落葉樹に覆われているだけで特段展望が良いような感じはしない。
(物見台跡)
(542m峰 特に標識などはない)
(またも急坂 しんどい道だ)
(急坂を登り切った所 特に展望はない)
670m峰までは緩やかな尾根が続く。落葉樹が増えてきて紅葉も楽しめるようになってきた。670m峰に着くと標高670mを示す標識が付けられている。のび太君の人形が一緒に括り付けられていたので、狢入山の道標を整備したのと同じ人が設置したのだろう。山頂は落葉樹に覆われていて、紅葉が美しい。伊豆ヶ岳周辺は落葉樹が多い所と認識していたのだが、東尾根は歩く人が少ないので静かに紅葉を楽しみたい人にはうってつけかもしれない。
(670m峰)
(670m峰周辺の紅葉)
670m峰からフラットな尾根を歩いていくとバラガ平と思われる場所に着く。檜に覆われた広くフラットな尾根だ。バラガ平から下り、細い尾根を登り返す。奥武蔵登山詳細図には藪と書かれた部分があるが、実際に歩いてみると多少枝が張り出す程度だ。一応迂回路らしきものはあるが、敢えてそれを使う必要もない。
(バラガ平)
(バラガ平を過ぎると落葉樹が多くなる)
(細い尾根 藪は煩くない)
(巻き道があるが歩きやすいとは言い難い)
(とにかく落葉樹が多い)
左手に急な尾根が下っているのが見えてくると立っているのがやっとの急坂が現れる。歩きやすそうな所が他にないか周囲を見回すものの、直登する以外に道は無さそうだ。気を抜いたら転げ落ちそうな斜面を5分ほどじりじりと登ると少し傾斜の緩んだ尾根の上に出る。振り返ると今し方登ってきた斜面の紅葉が黄色く鮮やかだ。次の小ピークに上がるまで様々に色付いた紅葉の尾根が続く。
(わかりにくいがかなりの急坂)
(斜度はこのくらい 真っ直ぐ上がるのは不可能)
(尾根に出て振り返ったところ)
(山頂直下の巻き道が現れるまで色付いた落葉樹を楽しめる)
小ピークを越え、伊豆ヶ岳山頂直下の急坂に差し掛かる。ここもかなりの急傾斜で一応登ることはできるらしい。しかし今回は巻き道を使って伊豆ヶ岳山頂の南へと出ることにする。というのも、古い地形図を見ると山頂を巻いて尾根を越し、山伏峠へと下っているのだ。今歩いている道がかつての道と全く同じというわけではないが、できるだけ近い道を辿りたいという思いはある。巻き道はかなり薄い道でおまけに谷側へ傾いているので下りに使うのは結構難しそうだ。斜面を横切りながら登っていき、尾根を越える。この尾根のほうが巻き道との分岐よりも傾斜が緩いように見える。尾根を越えると道は更に薄くなる。歩きやすい所を適当に下っていくと広い道の上に出る。古御岳と伊豆ヶ岳を結ぶ縦走路に出たのだ。
(山頂直下の急坂を見上げる 左手の踏み跡が巻き道)
(トラバースしながら尾根を越える)
(ここからも山頂方面に行けそうだが…)
(道はかなり薄い)
(縦走路に出た)
ここから先はもう歩き慣れた道である。伊豆ヶ岳の山頂直下はかなりの急坂だが、上りに使うのであれば危険な所は少ない。登り始めた途端、多くの登山者とすれ違う。流石は人気の山だ。種々に色付いた落葉樹を愛でながら10分ほど登り、山伏峠への道を見送ると岩場に出る。伊豆ヶ岳の山頂(850.9)に到着だ。山頂もやはり人が多い。それでも山頂の看板がある岩場から下りて広い尾根までやってくれば腰を下ろせるスペースは十分にある。当初は伊豆ヶ岳の山頂で昼食の予定だったが、ちょっと時間が早すぎる。もう少し人の少ない所まで下ることにしよう。
(山伏峠分岐辺りの落葉樹)
(伊豆ヶ岳の山頂)
(山頂の岩場を越えると広い尾根になっている)
小高山から峠ノ沢を経て正丸駅
山頂から北へ下るとロープで通せんぼされた岩場がある。鎖の掛けられた岩場であるが、その手前の眺めの良い所で写真を撮る。なかなか良い眺めだが、鎖場の直上に比べると枝が煩い感はある。ロープのある所まで戻り、西の斜面を下る。どんどん登山者が登ってくる。早めに山頂を離れて正解だった。山頂直下の急坂さえ下ってしまえばあとは広い道が下っていく。歯抜けの木段にも巻き道が付いているのでかつてよりは歩きやすくなった。鎖のある岩場から少し登り返せば五輪山に着く。広い山頂でベンチもあるが、まだ正丸駅から訪れる登山者が多い。もう少し先へ行こう。
(伊豆ヶ岳の山頂部北側からの眺め)
(五輪山)
五輪山を下ると正丸峠まで緩やかなアップダウンが続く。歩きやすくてお気に入りの道だ。正丸駅と名栗げんきプラザを結ぶ長岩峠から少し登ると小高山(720)に着く。ここも行き交う人は多いが、五輪山ほどではないはずだ。山頂の北にあるベンチに腰掛け、昼食のカップラーメンを作る。調子よく火は点いたのだが、沸騰する前にガスが切れてしまった。生煮えではあるが、今日は暖かかったので麺が硬いということはなかったのが幸いだった。
(五輪山を下ってしまえば緩やかな尾根が続く)
(長岩峠)
(小高山の山頂)
(山頂から二子山と甲仁田山を望む)
(小高山はベンチが多いので休憩に最適)
(小高山付近もそれなりに紅葉が楽しめる)
小高山より先も歩きやすい道は続く。正丸峠にある奥村茶屋までやってくると店の裏手の道が通行止めになっていた。裏の斜面が崩落する危険があるという。店の前の斜面を下るとモミジやツツジの木が赤く色付いていて、紅葉の見頃であった。金属製の階段で正丸峠に出る。さてこの後は川越(かんぜ)山と正丸山を越える予定であったが、気分的に下山モードに入ってしまった。そこでこのまま車道を下り、途中から峠ノ沢へと下ることにした。
(正丸峠へは良い道が続く)
(奥村茶屋の裏手は通行止め)
(奥村茶屋の前にある大蔵山集落へと下る谷に植えられたモミジやツツジ)
(奥村茶屋)
奥武蔵登山詳細図によると正丸峠から峠ノ沢までは35分ほどかかるようだ。だが比較的傾斜の緩い車道なので、下りで膝が痛むようなことはない。快調に下り、25分ほどで峠ノ沢への入口に着く。ここはかつての秩父往還道で、車道が越える現在の正丸峠が開削されるまではメインルートであった。九十九折を下り切ると沢の側に出る。傾斜が緩やかで歩きやすい。ただ沢沿いの道ということもあってか、橋が流されたりしてやや荒れた雰囲気もある。
(現在の正丸峠の峠道から見られる紅葉)
(ここから秩父往還道に入る)
(沢沿いの道は結構緩やか)
(橋が流された所 以前よりは荒れ気味)
一旦南の支流に入り、再び本流へと戻ると北側に大きな岩が見えてくる。ここは峠ノ沢一番の見所であるが、太陽の日差しが低い時期はちょっと冴えない感じだ。それでも写真を撮ってみると紅葉の色は悪くない。この大岩を過ぎると道は格段に良くなり、石仏を過ぎれば正丸の集落に出る。峠ノ沢は終始薄暗かったが、正丸の集落内は暑いと感じるほどに太陽の光が降り注ぐ。八坂神社を過ぎ、国道へ出れば正丸駅はすぐそこだ。駅前の売店でお土産でも買おうかと思ったのだが、時刻表を見るとすぐに電車が来てしまうようだ。泣く泣く買い物を諦めて飯能行きの電車に乗り込んだのであった。
(峠ノ沢一番の見所である大岩)
(よく整備された道)
(石仏 ここまで来れば正丸の集落は近い)
(八坂神社)
(正丸駅前の売店)
DATA:
西吾野駅7:09→7:35森坂峠→7:47日用橋(下久通地区)→8:04琴平神社→8:25登ット→8:37狢入山→8:45物見台跡→9:20 670m峰→9:26バラガ平→10:02古御岳・伊豆ヶ岳縦走路→10:11伊豆ヶ岳10:23→10:33五輪山→10:43長岩峠→10:45小高山11:04→11:26正丸峠→11:49秩父往還峠ノ沢→12:16八坂神社→12:22正丸駅
地形図 正丸峠
トイレ 縦走ルート上にはない
交通機関
西武池袋・秩父線 小手指~西吾野 387円
西武秩父・池袋線 正丸~小手指 419円
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伊豆ヶ岳東尾根はバリエーションルートです。道標などは最小限しかないので地形図を読み解く能力が必要です。また急坂が連続するルートなので、安全に歩くのであれば登りに使ったほうがよいでしょう。