(秩父高原牧場からスカイツリー)
ちょうど一年くらい前でしょうか。二本木峠から小林山へと縦走したのですが、その帰りに駅でもらったのが小林・風布のみかん園のパンフレット。今度この辺りを歩く機会があったら寄ってみようと思っていたのですが、一年経ったことだし、再び二本木峠を通る道を歩いてみることにしました。去年と同じルートではあまりにも芸が無いので、大霧山越えて釜伏山まで縦走し、風布(※1)へ下ってみかん園に寄ることにします。
スタートは定峰から。大霧山は四回目の訪問ですが、定峰から歩くのは初めて。ちなみに今回は定峰~旧定峰峠と日本水水源分岐~金尾十王堂分岐が未踏区間です。7時前に西武秩父駅に着き、定峰行きの始発バスに乗り込みます。バスには私と同じようなハイカーが二人。全員が定峰橋で降りました。皆旧定峰峠を目指しているのでしょう。バスの待合室で準備を整えていると二人は既に出発してしまったようです。バスが走り去ったほうへ向かうとちょっと先が終点の定峰でした。あれ?峠へはどう上がるんだ?定峰橋方面へ戻ると集落内を上がっていく細い舗装路の脇に石の道標が置かれています。
(定峰峠への分岐)
道標にしたがって舗装路を上がっていくとエアリアにある定峰神社が見えてきます。よくこんな所をクルマで上がれるなと思う程の曲がりくねった急坂を上がっていくとベンチの置かれたカーヴ辺りから周囲が開けてきます。傾斜の緩くなった車道脇には民家が立ち並び、ここもまた山上集落なのだなぁと実感します。大きな庭のある民家の前を通っているとかの有名な時計付きの道標が立っています。スタートからここまでほぼ30分。やがて集落から外れ、暗い林の中を進むようになると上から凄まじいエンジン音が聞こえてきます。見上げるとダンプが車道を走り抜けていくところでした。秩父から現在の定峰峠へと走り抜けていくのでしょう。
(時計付き道標)
水神の碑がある神社からヘアピンカーヴを上がり、暫く進むと擁壁の切れ目に小さな道標が立っています。道標にしたがって山道を上がっていくとすぐに緩やかな道となります。昔から使われていた峠道かどうかは定かではありませんが、牛馬を牽いても上がれそうなほどの緩やかな道です。登り始めて10分ほどでちょっとした分岐に出ます。ここを右に行くのが正解なのですが、間違えて左に入ってしまいました。明るい雑木林の中をどんどん上がっていくのですが、一向に東へと進路を変えません。雑木林から檜の植林へ入ると通行止の看板が落ちています。そして道も終了…。ここはどうも林業用の作業路らしい。間違えた分岐まで戻り、右の道に入ると金属製の立派な道標が立っていました。どうせなら分岐に欲しかったな…。
(旧定峰峠の道 登り始め)
(間違えたほうの道 クルマが通れるほどの広さで作業道らしい)
(金属製の道標)
緩やかに高度を上げる峠道は先ほどの作業道と異なり、暗い植林中を進んでいきます。かつて人が住んでいたのではないかと思わせる石積み跡やクルマが通れそうなほど広い峠道など生活の跡を感じさせるものもあります。最後のやや急な坂を登りきれば旧定峰峠に出ます。峠に着くと真冬の風が一気に吹きつけてきます。大霧山へ向かう縦走路に上がっても凄まじい風が吹いています。こんな所に立ち止まっていたら寒くて死んでしまう~。最初の急坂を登ってしまえば緩やかな尾根を足早に通り過ぎていきます。本当はこの辺りゆっくり歩くと気持ちが良いんですけれどね。縦走路の屈曲点となる平場は秩父市と皆野町の境であり、ここを西に下ると地形図に描かれた道に出るのではないかと睨んでいます。屈曲点を過ぎると東側に有刺鉄線が張り巡らされています。有刺鉄線の先は秩父高原牧場の敷地です。724の小ピークに上がると牧場側の展望が広がります。採草放牧地の向こうには筑波山が靄の上に山頂を覗かせています。暫く良い展望が続くのですが有刺鉄線には十分にご注意下さい。この辺りでバスで一緒になった二人組に追いついたのですが、写真を撮っている間に山頂へ向かったようです。
(旧定峰峠への道 広い峠道です)
(旧定峰峠)
(屈曲点の平場)
(筑波山が見える)
(牧草地越しの眺め 左から笠山・堂平山)
724のピークから鞍部に下るといよいよ最後の急坂です。それでも短い坂なのですぐに肩へ出てしまいます。緩やかに上がっていくと大霧山(766.6)の山頂です。武甲山から寄居市街までの広い展望が広がります。ここへ来るのは4度目ですが、ここの展望に裏切られたことは一度もありません。納得のいく眺めが得られなかった人は是非冬場に来ていただけたらと思います。今日は浅間山と赤城山にはやや雲が掛かってしまって残念です。
(大霧山頂のパノラマ)
山頂直下から粥新田峠へ下る所は大霧山でも一番急な所。融け残った雪が凍り付いていたのでゆっくりと下ります。最初の急坂を下りきれば暫くは緩やかな道となりますが、峠手前は再び急な下りが続きます。ネットなどでの山行記録を見ると粥新田峠からの報告が多いのですが、楽に登りたいのなら東秩父村の経塚から登るのがベストなんじゃないでしょうか。車道歩きも短いし、秋や春なら牧場まで足を延ばして二本木峠から下るってのが良いコースだと思うんですけれどねぇ。広町山十(秩父高原牧場入口)方面の分岐を見送ると粥新田峠(かいにだとうげ)。お地蔵様の裏手の斜面を這い上がれば、牧草地にぶつかる辺りまでは縦走できますが今日はパス。牧場へ向かって車道を歩き出そうとすると峠で準備をしていたおじさんに「早い下山だねぇ」と声を掛けられました。うん、まぁまだ10時だし、確かに早い。
粥新田峠から二本木峠まではずっと車道歩き。ここがある意味一番シンドイ所でしょうか。地形図に描かれた破線路は殆ど辿ることができません。微妙に辛いアップダウンのある車道を歩いていると中高年の登山グループが前からやって来ました。牧場にクルマを置いて大霧山登山といったところでしょうか。車道が秩父側へ下る辺りで一気に視界が開けます。二年前にここを訪れたときは黒い牛が草を食んでいましたが今日は何もいません。寂しいなぁ。春や秋は賑わう売店まで来ると柵の向こうに牛がいます。放牧はしていないのでしょうか。なお売店は勤労感謝の日で営業を終了し、3月いっぱいは休業です。GW頃だとごった返すモーモーハウス脇の広場も今日は誰もいません。広場からは放牧地の向こうに東京スカイツリーが見えます。ホント、良いランドマーク作ってくれたよなぁ。
(手前の山は蓑山 左奥のギザギザは両神山)
(秩父高原牧場から笠山方面)
(牛)
(羊もいます)
(モーモーハウス脇から)
駐車場を過ぎると放牧地として削り残された小ピークを縫うように車道を進んでいきます。時折南側が大きく開けた所があり、東側に伸びやかな牧草地が広がる大霧山が優美な姿を見せています。青々とした放牧地を見送ると車道の乗り越す二本木峠に出ます。ここはもう7度目の訪問です。バスで一緒になった二人をここで見送り、一旦西へ車道を下ります。去年も紹介した農場からの眺めはやはり良いものです。峠に戻り、土留めの木段が設置されたやや急な斜面を登っていくと愛宕山(654.8)の山頂です。去年の画像だとわかりにくかったのですが、都心のビル群がよく見えます。
(笠山・堂平山が見える)
(大霧山 右端の三角は武甲山)
(二本木峠の牧草地 ここからも筑波山が見える)
(二本木峠から西に下った農場から)
(愛宕山天文ドーム)
(愛宕山から都心ビル群の眺め)
車道を横切って皇鈴山の登山道に入ると相変わらず良い雑木林が迎えてくれます。何故だか伸びきってしまっている熊笹の藪を抜けると山頂手前の鞍部に出てきます。ここからは外秩父七峰の縦走ルートである真ん中の緩やかな道の他、土留めの木段が付いた尾根ルートそして去年歩いた山頂下の切り開きへのルートが延びています。今日は先もまだ長いので真ん中の縦走ルートを進みます。緩やかに登って皇鈴山(679)の山頂に到着です。広い山頂は気分が良いのですが寒い。とにかく寒い。寒いけど湯を沸かしてカップラーメンを作ります。作っていると中高年グループがやってきましたがすぐに下りていきました。寒いからねぇ。何とか湯が沸いたかと注いでみたら生煮えでした…。まあ食っても死ぬことはないだろう。
(切り開きへの分岐 切り開きへはここを左に入る)
(皇鈴山頂)
(山頂パノラマ)
山頂から下りてくると先ほどのグループは鞍部で食事中。でもここも寒い。見晴らしの良い崖地から車道へ下り、登谷山へ。崩壊地が出来たせいで東側の見晴らしも良くなった尾根を進みます。西側斜面は相変わらず荒涼としています。山頂直下の急坂をこなすと登谷山(668)山頂に出ます。寒いこともあってか誰も居ません。写真を撮り始めるともう電池が切れてしまいました。オリンパスのカメラはどうも寒さに弱いようです。一応榛名山から大霧山にかけての展望が得られます。ただここはゴミが多いですね。それが何とも残念。
(崖地からの見晴らし)
(登谷山頂)
(山頂パノラマ)
簡易舗装された歩きにくい道を下ると登谷牧場に出ます。観光営業はすっかり辞めてしまったようですね。2年前に来たときはダチョウを飼っていましたが、今はどうなんでしょう?牧場から釜伏峠までは暫く車道歩き。南西方面に牧場の敷地が広がるため武甲山から浅間山にかけての展望が得られます。大霧山からは見られなかった浅間山もここからは雪化粧した姿を見せてくれます。車道が乗り越す釜伏峠は釜山神社付近だけが暗い植林で皆野側は明るい日差しが降り注ぎます。東秩父村から皆野町へ結ぶ道路は結構交通量が多いです。東秩父村方面へ少し下るとクルマが通れそうなくらいの広い道が出来ています。おそらく地形図に描かれた破線ルートへつながる道だと思いますが、クルマの進入は禁止されています。
(登谷牧場)
(釜伏峠へ向かう車道からの眺め)
(浅間山)
釜山神社の参道には八体の狛犬が置かれ、それぞれ造形が異なっています。入口に置かれているのが一番格好良いかな?拝殿左の道を上がると塞神峠との分岐に出ます。この辺は去年と変わりありません。一旦(天狗松休憩地と書かれている)東屋のある鞍部に下って釜伏山の急坂に取り付きます。濡れると滑る蛇紋岩(※2)の岩場が続きますが、お昼を過ぎて霜も乾いたのか全く滑りません。息が切れるより前に釜伏山(582)の暗い山頂に到着します。今日はここから更に北に延びる尾根を下ります。鎖が付けられた手摺の続く岩尾根は今日最大の難所。子供連れやバランス感覚の衰えた人だとちょっと危険かもしれません。我慢して下り続けるとちょっとした平場に出ます。見晴らしの良くない釜伏山で唯一展望が得られる所で、扇沢の集落の向こうに赤城山と榛名山が見られます。
(入口の狛犬)
(ちょっとユーモラス)
(釜伏山)
(山頂の狛犬)
(大神部山方面 右奥は赤城山)
(塞神峠方面 下は扇沢)
(手摺付きの岩尾根)
平場から更に急坂を下ると日本水水源の分岐に出ます。現在は立入禁止となっている水源ですが、以前歩いたときと同じように道形ははっきりしています。ネットで公開する以上お薦めはできませんが、水源を辿ることは可能です。水源への道はそのまま荻根山方面へ出ます。水源には立ち入らず、そのまま尾根を下っていきます。この辺はいくらか歩きやすい道です。時々ロープの付けられた急坂を下っていくとゴヨウツツジ自生地と書かれた碑の置かれた小さな平場に出ます。枝越しに風布のみかん園が見えてきました。ゴヨウツツジの自生地から更に下っていくと415のピークとの鞍部に出ます。急な土留めの木段を下っていくとようやく小石混じりの歩きやすい道となります。上を見上げれば巨大な岩壁が立ちはだかっています。うーん、この上を歩いていたのか。クルマが通れそうなほど広くなった道を九十九折に下っていくと風布川沿いの車道に出ます。これで登山は終了。
(日本水水源分岐)
(ゴヨウツツジ)
(右に風布のみかん園が見える)
(ロープの付けられた急坂)
(こんな岩場を下ってくる)
(急な土留めの木段)
(蛇紋岩の岩壁)
暗い谷間の車道を下るとみかん園のトイレが設置されています。ここを見送るといよいよ風布(ふっぷ又はふうぷ)の集落です。風布・小林はみかん栽培北限の地と呼ばれ、現在も二十軒ほどの農家がみかん園を営んでいます。明るい集落内を進むと廃校となった学校が見えてきます。道路の向かいには日本の里風布館がありますが、まずはみかん園へ。とりあえず遊歩道と書かれたほうへ細い車道を上がっていくと上のほうに幟が立っているのが見えます。民家脇を抜けて更に細くなった舗装路を上がるとつる園と呼ばれるみかん園に出ます。テラス状の小屋の中へ入っていくとつる園のご主人が常連客らしきオバチャン達と談笑中でした。話好きな人達で30分ばかしのんびりとしてしまいました。定峰から歩いてきたと話したら流石にびっくりされてしまいました。
(つる園)
(日本の里入口)
(風布館)
おまけに貰ったみかんでずっしりと重くなったザックを背負い波久礼駅を目指します。日本の里を抜け、姥宮神社を過ぎた辺りに風のみち歩道の入口があります。風のみち歩道はここから金尾の集落まで風布川沿いに続く長い遊歩道。特に見所があるという訳ではありませんが、1時間以上の長い車道歩きをするよりは遥かに快適な道です。白いかんぽの宿寄居の建物が見えてきたら風のみち歩道も終わり。やや広くなった車道を行けば、去年歩いた金尾十王堂からの道が合流してきます。寄居橋を渡り、波久礼駅に着いた頃にはもう日が暮れかけようとしていました。
(風のみち歩道入口)
(風のみち歩道の様子)
(天狗岩)
(かんぽの宿寄居が見えると風のみち歩道も終わる)
(車道奥の建物が金尾十王堂)
(寄居橋からの眺め)
(風布みかん)
DATA:
西武秩父駅(西武観光バス30分)7:36定峰橋~8:15定峰峠への取り付き~9:02旧定峰峠~9:31大霧山9:45~10:06粥新田峠~
10:38秩父高原牧場(ミルクハウス)~11:11二本木峠~11:23愛宕山~11:44皇鈴山~12:28登谷山~12:57釜伏峠~13:15釜伏山~
13:28日本水水源分岐~13:59車道出合~14:15つる園(みかん園)14:45~14:55風のみち歩道入口~15:26風のみち歩道終点~
15:38波久礼駅
西武観光バス 西武秩父駅~定峰橋 310円
つる園 みかんは10kgで1,800円(2011年度) なお5kg売りや網袋売りなどもあります
トイレ:秩父高原牧場(モーモーハウス前) 釜山神社
※1 風布の由来についてはここを参照のこと。
なお長瀞町にも風布という地名がある。これは昭和18年の白鳥村分村により生じたもので、寄居側は「ふっぷ」
長瀞側は「ふうぷ」と呼ばれることが多いらしい。
※2 蛇紋石という表面に蛇のような紋様のある石でできた岩石。谷川岳や至仏山が有名なほか、大霧山の西側斜面にも
採石場がある。濡れると滑りやすい、もろく崩れやすいといった特徴がある。また岩石中に含まれるマグネシウム
の作用により植物の生育が阻害されるため、低木帯が形成されることが多い。日本水水源への立ち入りが禁止され
ているのは水源上部のオーヴァーハングした岩が崩れやすいためであり、またゴヨウツツジなどが自生しているの
は植物の生育が阻害されているためと考えられている。
地形図 安戸 寄居
山と高原地図 奥武蔵・秩父 2010年度版
ちょうど一年くらい前でしょうか。二本木峠から小林山へと縦走したのですが、その帰りに駅でもらったのが小林・風布のみかん園のパンフレット。今度この辺りを歩く機会があったら寄ってみようと思っていたのですが、一年経ったことだし、再び二本木峠を通る道を歩いてみることにしました。去年と同じルートではあまりにも芸が無いので、大霧山越えて釜伏山まで縦走し、風布(※1)へ下ってみかん園に寄ることにします。
スタートは定峰から。大霧山は四回目の訪問ですが、定峰から歩くのは初めて。ちなみに今回は定峰~旧定峰峠と日本水水源分岐~金尾十王堂分岐が未踏区間です。7時前に西武秩父駅に着き、定峰行きの始発バスに乗り込みます。バスには私と同じようなハイカーが二人。全員が定峰橋で降りました。皆旧定峰峠を目指しているのでしょう。バスの待合室で準備を整えていると二人は既に出発してしまったようです。バスが走り去ったほうへ向かうとちょっと先が終点の定峰でした。あれ?峠へはどう上がるんだ?定峰橋方面へ戻ると集落内を上がっていく細い舗装路の脇に石の道標が置かれています。
(定峰峠への分岐)
道標にしたがって舗装路を上がっていくとエアリアにある定峰神社が見えてきます。よくこんな所をクルマで上がれるなと思う程の曲がりくねった急坂を上がっていくとベンチの置かれたカーヴ辺りから周囲が開けてきます。傾斜の緩くなった車道脇には民家が立ち並び、ここもまた山上集落なのだなぁと実感します。大きな庭のある民家の前を通っているとかの有名な時計付きの道標が立っています。スタートからここまでほぼ30分。やがて集落から外れ、暗い林の中を進むようになると上から凄まじいエンジン音が聞こえてきます。見上げるとダンプが車道を走り抜けていくところでした。秩父から現在の定峰峠へと走り抜けていくのでしょう。
(時計付き道標)
水神の碑がある神社からヘアピンカーヴを上がり、暫く進むと擁壁の切れ目に小さな道標が立っています。道標にしたがって山道を上がっていくとすぐに緩やかな道となります。昔から使われていた峠道かどうかは定かではありませんが、牛馬を牽いても上がれそうなほどの緩やかな道です。登り始めて10分ほどでちょっとした分岐に出ます。ここを右に行くのが正解なのですが、間違えて左に入ってしまいました。明るい雑木林の中をどんどん上がっていくのですが、一向に東へと進路を変えません。雑木林から檜の植林へ入ると通行止の看板が落ちています。そして道も終了…。ここはどうも林業用の作業路らしい。間違えた分岐まで戻り、右の道に入ると金属製の立派な道標が立っていました。どうせなら分岐に欲しかったな…。
(旧定峰峠の道 登り始め)
(間違えたほうの道 クルマが通れるほどの広さで作業道らしい)
(金属製の道標)
緩やかに高度を上げる峠道は先ほどの作業道と異なり、暗い植林中を進んでいきます。かつて人が住んでいたのではないかと思わせる石積み跡やクルマが通れそうなほど広い峠道など生活の跡を感じさせるものもあります。最後のやや急な坂を登りきれば旧定峰峠に出ます。峠に着くと真冬の風が一気に吹きつけてきます。大霧山へ向かう縦走路に上がっても凄まじい風が吹いています。こんな所に立ち止まっていたら寒くて死んでしまう~。最初の急坂を登ってしまえば緩やかな尾根を足早に通り過ぎていきます。本当はこの辺りゆっくり歩くと気持ちが良いんですけれどね。縦走路の屈曲点となる平場は秩父市と皆野町の境であり、ここを西に下ると地形図に描かれた道に出るのではないかと睨んでいます。屈曲点を過ぎると東側に有刺鉄線が張り巡らされています。有刺鉄線の先は秩父高原牧場の敷地です。724の小ピークに上がると牧場側の展望が広がります。採草放牧地の向こうには筑波山が靄の上に山頂を覗かせています。暫く良い展望が続くのですが有刺鉄線には十分にご注意下さい。この辺りでバスで一緒になった二人組に追いついたのですが、写真を撮っている間に山頂へ向かったようです。
(旧定峰峠への道 広い峠道です)
(旧定峰峠)
(屈曲点の平場)
(筑波山が見える)
(牧草地越しの眺め 左から笠山・堂平山)
724のピークから鞍部に下るといよいよ最後の急坂です。それでも短い坂なのですぐに肩へ出てしまいます。緩やかに上がっていくと大霧山(766.6)の山頂です。武甲山から寄居市街までの広い展望が広がります。ここへ来るのは4度目ですが、ここの展望に裏切られたことは一度もありません。納得のいく眺めが得られなかった人は是非冬場に来ていただけたらと思います。今日は浅間山と赤城山にはやや雲が掛かってしまって残念です。
(大霧山頂のパノラマ)
山頂直下から粥新田峠へ下る所は大霧山でも一番急な所。融け残った雪が凍り付いていたのでゆっくりと下ります。最初の急坂を下りきれば暫くは緩やかな道となりますが、峠手前は再び急な下りが続きます。ネットなどでの山行記録を見ると粥新田峠からの報告が多いのですが、楽に登りたいのなら東秩父村の経塚から登るのがベストなんじゃないでしょうか。車道歩きも短いし、秋や春なら牧場まで足を延ばして二本木峠から下るってのが良いコースだと思うんですけれどねぇ。広町山十(秩父高原牧場入口)方面の分岐を見送ると粥新田峠(かいにだとうげ)。お地蔵様の裏手の斜面を這い上がれば、牧草地にぶつかる辺りまでは縦走できますが今日はパス。牧場へ向かって車道を歩き出そうとすると峠で準備をしていたおじさんに「早い下山だねぇ」と声を掛けられました。うん、まぁまだ10時だし、確かに早い。
粥新田峠から二本木峠まではずっと車道歩き。ここがある意味一番シンドイ所でしょうか。地形図に描かれた破線路は殆ど辿ることができません。微妙に辛いアップダウンのある車道を歩いていると中高年の登山グループが前からやって来ました。牧場にクルマを置いて大霧山登山といったところでしょうか。車道が秩父側へ下る辺りで一気に視界が開けます。二年前にここを訪れたときは黒い牛が草を食んでいましたが今日は何もいません。寂しいなぁ。春や秋は賑わう売店まで来ると柵の向こうに牛がいます。放牧はしていないのでしょうか。なお売店は勤労感謝の日で営業を終了し、3月いっぱいは休業です。GW頃だとごった返すモーモーハウス脇の広場も今日は誰もいません。広場からは放牧地の向こうに東京スカイツリーが見えます。ホント、良いランドマーク作ってくれたよなぁ。
(手前の山は蓑山 左奥のギザギザは両神山)
(秩父高原牧場から笠山方面)
(牛)
(羊もいます)
(モーモーハウス脇から)
駐車場を過ぎると放牧地として削り残された小ピークを縫うように車道を進んでいきます。時折南側が大きく開けた所があり、東側に伸びやかな牧草地が広がる大霧山が優美な姿を見せています。青々とした放牧地を見送ると車道の乗り越す二本木峠に出ます。ここはもう7度目の訪問です。バスで一緒になった二人をここで見送り、一旦西へ車道を下ります。去年も紹介した農場からの眺めはやはり良いものです。峠に戻り、土留めの木段が設置されたやや急な斜面を登っていくと愛宕山(654.8)の山頂です。去年の画像だとわかりにくかったのですが、都心のビル群がよく見えます。
(笠山・堂平山が見える)
(大霧山 右端の三角は武甲山)
(二本木峠の牧草地 ここからも筑波山が見える)
(二本木峠から西に下った農場から)
(愛宕山天文ドーム)
(愛宕山から都心ビル群の眺め)
車道を横切って皇鈴山の登山道に入ると相変わらず良い雑木林が迎えてくれます。何故だか伸びきってしまっている熊笹の藪を抜けると山頂手前の鞍部に出てきます。ここからは外秩父七峰の縦走ルートである真ん中の緩やかな道の他、土留めの木段が付いた尾根ルートそして去年歩いた山頂下の切り開きへのルートが延びています。今日は先もまだ長いので真ん中の縦走ルートを進みます。緩やかに登って皇鈴山(679)の山頂に到着です。広い山頂は気分が良いのですが寒い。とにかく寒い。寒いけど湯を沸かしてカップラーメンを作ります。作っていると中高年グループがやってきましたがすぐに下りていきました。寒いからねぇ。何とか湯が沸いたかと注いでみたら生煮えでした…。まあ食っても死ぬことはないだろう。
(切り開きへの分岐 切り開きへはここを左に入る)
(皇鈴山頂)
(山頂パノラマ)
山頂から下りてくると先ほどのグループは鞍部で食事中。でもここも寒い。見晴らしの良い崖地から車道へ下り、登谷山へ。崩壊地が出来たせいで東側の見晴らしも良くなった尾根を進みます。西側斜面は相変わらず荒涼としています。山頂直下の急坂をこなすと登谷山(668)山頂に出ます。寒いこともあってか誰も居ません。写真を撮り始めるともう電池が切れてしまいました。オリンパスのカメラはどうも寒さに弱いようです。一応榛名山から大霧山にかけての展望が得られます。ただここはゴミが多いですね。それが何とも残念。
(崖地からの見晴らし)
(登谷山頂)
(山頂パノラマ)
簡易舗装された歩きにくい道を下ると登谷牧場に出ます。観光営業はすっかり辞めてしまったようですね。2年前に来たときはダチョウを飼っていましたが、今はどうなんでしょう?牧場から釜伏峠までは暫く車道歩き。南西方面に牧場の敷地が広がるため武甲山から浅間山にかけての展望が得られます。大霧山からは見られなかった浅間山もここからは雪化粧した姿を見せてくれます。車道が乗り越す釜伏峠は釜山神社付近だけが暗い植林で皆野側は明るい日差しが降り注ぎます。東秩父村から皆野町へ結ぶ道路は結構交通量が多いです。東秩父村方面へ少し下るとクルマが通れそうなくらいの広い道が出来ています。おそらく地形図に描かれた破線ルートへつながる道だと思いますが、クルマの進入は禁止されています。
(登谷牧場)
(釜伏峠へ向かう車道からの眺め)
(浅間山)
釜山神社の参道には八体の狛犬が置かれ、それぞれ造形が異なっています。入口に置かれているのが一番格好良いかな?拝殿左の道を上がると塞神峠との分岐に出ます。この辺は去年と変わりありません。一旦(天狗松休憩地と書かれている)東屋のある鞍部に下って釜伏山の急坂に取り付きます。濡れると滑る蛇紋岩(※2)の岩場が続きますが、お昼を過ぎて霜も乾いたのか全く滑りません。息が切れるより前に釜伏山(582)の暗い山頂に到着します。今日はここから更に北に延びる尾根を下ります。鎖が付けられた手摺の続く岩尾根は今日最大の難所。子供連れやバランス感覚の衰えた人だとちょっと危険かもしれません。我慢して下り続けるとちょっとした平場に出ます。見晴らしの良くない釜伏山で唯一展望が得られる所で、扇沢の集落の向こうに赤城山と榛名山が見られます。
(入口の狛犬)
(ちょっとユーモラス)
(釜伏山)
(山頂の狛犬)
(大神部山方面 右奥は赤城山)
(塞神峠方面 下は扇沢)
(手摺付きの岩尾根)
平場から更に急坂を下ると日本水水源の分岐に出ます。現在は立入禁止となっている水源ですが、以前歩いたときと同じように道形ははっきりしています。ネットで公開する以上お薦めはできませんが、水源を辿ることは可能です。水源への道はそのまま荻根山方面へ出ます。水源には立ち入らず、そのまま尾根を下っていきます。この辺はいくらか歩きやすい道です。時々ロープの付けられた急坂を下っていくとゴヨウツツジ自生地と書かれた碑の置かれた小さな平場に出ます。枝越しに風布のみかん園が見えてきました。ゴヨウツツジの自生地から更に下っていくと415のピークとの鞍部に出ます。急な土留めの木段を下っていくとようやく小石混じりの歩きやすい道となります。上を見上げれば巨大な岩壁が立ちはだかっています。うーん、この上を歩いていたのか。クルマが通れそうなほど広くなった道を九十九折に下っていくと風布川沿いの車道に出ます。これで登山は終了。
(日本水水源分岐)
(ゴヨウツツジ)
(右に風布のみかん園が見える)
(ロープの付けられた急坂)
(こんな岩場を下ってくる)
(急な土留めの木段)
(蛇紋岩の岩壁)
暗い谷間の車道を下るとみかん園のトイレが設置されています。ここを見送るといよいよ風布(ふっぷ又はふうぷ)の集落です。風布・小林はみかん栽培北限の地と呼ばれ、現在も二十軒ほどの農家がみかん園を営んでいます。明るい集落内を進むと廃校となった学校が見えてきます。道路の向かいには日本の里風布館がありますが、まずはみかん園へ。とりあえず遊歩道と書かれたほうへ細い車道を上がっていくと上のほうに幟が立っているのが見えます。民家脇を抜けて更に細くなった舗装路を上がるとつる園と呼ばれるみかん園に出ます。テラス状の小屋の中へ入っていくとつる園のご主人が常連客らしきオバチャン達と談笑中でした。話好きな人達で30分ばかしのんびりとしてしまいました。定峰から歩いてきたと話したら流石にびっくりされてしまいました。
(つる園)
(日本の里入口)
(風布館)
おまけに貰ったみかんでずっしりと重くなったザックを背負い波久礼駅を目指します。日本の里を抜け、姥宮神社を過ぎた辺りに風のみち歩道の入口があります。風のみち歩道はここから金尾の集落まで風布川沿いに続く長い遊歩道。特に見所があるという訳ではありませんが、1時間以上の長い車道歩きをするよりは遥かに快適な道です。白いかんぽの宿寄居の建物が見えてきたら風のみち歩道も終わり。やや広くなった車道を行けば、去年歩いた金尾十王堂からの道が合流してきます。寄居橋を渡り、波久礼駅に着いた頃にはもう日が暮れかけようとしていました。
(風のみち歩道入口)
(風のみち歩道の様子)
(天狗岩)
(かんぽの宿寄居が見えると風のみち歩道も終わる)
(車道奥の建物が金尾十王堂)
(寄居橋からの眺め)
(風布みかん)
DATA:
西武秩父駅(西武観光バス30分)7:36定峰橋~8:15定峰峠への取り付き~9:02旧定峰峠~9:31大霧山9:45~10:06粥新田峠~
10:38秩父高原牧場(ミルクハウス)~11:11二本木峠~11:23愛宕山~11:44皇鈴山~12:28登谷山~12:57釜伏峠~13:15釜伏山~
13:28日本水水源分岐~13:59車道出合~14:15つる園(みかん園)14:45~14:55風のみち歩道入口~15:26風のみち歩道終点~
15:38波久礼駅
西武観光バス 西武秩父駅~定峰橋 310円
つる園 みかんは10kgで1,800円(2011年度) なお5kg売りや網袋売りなどもあります
トイレ:秩父高原牧場(モーモーハウス前) 釜山神社
※1 風布の由来についてはここを参照のこと。
なお長瀞町にも風布という地名がある。これは昭和18年の白鳥村分村により生じたもので、寄居側は「ふっぷ」
長瀞側は「ふうぷ」と呼ばれることが多いらしい。
※2 蛇紋石という表面に蛇のような紋様のある石でできた岩石。谷川岳や至仏山が有名なほか、大霧山の西側斜面にも
採石場がある。濡れると滑りやすい、もろく崩れやすいといった特徴がある。また岩石中に含まれるマグネシウム
の作用により植物の生育が阻害されるため、低木帯が形成されることが多い。日本水水源への立ち入りが禁止され
ているのは水源上部のオーヴァーハングした岩が崩れやすいためであり、またゴヨウツツジなどが自生しているの
は植物の生育が阻害されているためと考えられている。
地形図 安戸 寄居
山と高原地図 奥武蔵・秩父 2010年度版
子ノ権現の鐘楼台からの眺めは武川岳だとずっと思っていたのですが、地形図を真面目に使いだした頃に試しに鐘楼台から使ってみたらどうも武川岳の方向ではないなと思ったのが伊豆ヶ岳での発見につながりました。
>10周年ですか、だいぶ続けられましたですね
飽きっぽい性格なのに山歩きと当ブログだけは何故だか続きました。ネット上での知り合いもだいぶ増えて続けてきてよかったと思っています。
>風布、みかん山、釜伏山~変化に富んで面白い道でしたね
雰囲気の良い峠が多くて道も易しいのでもっと歩きたい所なのですが、ちょっと遠いんですよね。
大持山、ご案内ありがとうございます。
10周年ですか、だいぶ続けられましたですね。
永く継続されているのは素晴らしいです。
風布、みかん山、釜伏山~変化に富んで面白い道でしたね。は当方もだいぶ前ですが歩いてみました。釜伏山から以降はtokoroさんと同じ道を通っていたようです。